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プロ野球球団の経営の健全性

 2020年のプロ野球もついに、というかようやく開幕を迎え、やきうファンの皆さんの生活も忙しくなってきたかと存じます。試合日程に合わせて予定をコントロールし、贔屓球団の成績に一喜一憂する日々が戻ってきたことは、同慶の至りでございます。ですが、開幕当初は無観客からの観客数制限という事態。席数が限られるうえに、感染の不安もあって現地観戦もままならぬ。完全に常態に戻るのはいつのことでしょうか?それとももう戻らないのでしょうか?

 常態でないのはファンだけでなく、球団も同じです。球団の収入の半分近くを占めるといわれる入場料収入が無観客・観客数制限の影響により、どさっと剥落するわけで、球団経営者の皆さんはそろばんと大福帳を手に取って日々苦悶されているものと思います。何とか収入を確保しようと、試合で使用した公式球を売ったり、客席にボードを掲げる権利を売ったりと各球団が必死の努力をされているご様子、誠にお疲れ様でございます。

 プロ野球球団の財政状態は球団経営者の問題であり、一義的には私のような❝たかがファン❞は気にしてもしょうがないわけですが、やはり気になる。というのも、球団の経営が苦しくなれば、来年の選手への報酬にも影響が出る。年俸が折り合わず、あなたの好きな選手が贔屓球団を去るかもしれません。さらには、巨額な赤字に耐えられず親会社が球団を手放し、あなたの地元から球団がなくなるということもあり得るわけです(極端だけど)。

 球団経営が健全であれば、何とか生きながらえることができます。経営が健全であるとは何かについては議論があろうかと思いますが、「球団がいまのまま生き残る」という観点では、手元資金が潤沢であることと、借金が少ないことの2点ではないかと思います。自宅にあった経営分析の本を片手に、官報に掲載された各球団の最新の決算公告の数字でわかる範囲で、経営の健全性をみることができるであろう指標を算出し、各下記のチャートにマッピングしてみました。

(オリックスは2018年度決算、他は2019年度決算)

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 ざっくり言うと、右上に位置するほうがより健全。また参考指標ではありますが、円が大きいほど手元の現金化が容易な資産が大きいことを表します。

 縦軸に流動比率。これは短期借入金に対し、現金や有価証券などの換金性が高い資産がどれくらいあるかを示します。経営分析の本などでは120%以上が健全と書かれていますね。
 横軸には自己資本比率。これは総資産のうち自前の資産が大きさの比率です。つまり数字が大きいほど、借入金などの他人資産が少ないことになります。50%を超えると優良とされるようです。
 さらに円の大きさは流動資産の大きさを表しています。流動資産とは1年以内に現金化できる資産のことで、手元資金の豊富さを示します。ただし在庫商品や売掛金も含まれますので全部現金というわけではありませんので参考指標です。

 バランスシートだけを見ると、右上に位置する球団の方が、コロナ禍での売り上げ大幅減少という経営難に対処する余力が多い、という見方ができます。

 こうして見ると、広島・西武・阪神は健全な経営がなされており、対処能力が高いと一般的には言えるようです。

 広島は特定の親会社を持たないという、NPBでは独特の経営スタイルですが、いずれの指標も高水準です。やはり経営的なバックアップが弱いことで、健全なバランスシートを築いた結果でしょうか。

 日本ハムは自己資本比率が高い一方で、流動比率が少ないですね。2018年度に流動資産が約91億円・流動比率344%という高水準にあったのですが、2019年度には流動資産約19億円・流動比率69.7%に減少しています。これは北広島に建設中のボールパークの建設のために土地を購入したためと推測されます。固定資産が2019年度は約102億円と前年の24億円から大幅に増えています。

 ソフトバンクは金持ち球団と言われますが、健全性という意味では他球団に劣っています。流動負債が約166億円と他球団に比べ桁が違います。これは高額な選手年俸とPayPayドーム横に新設されたエンターテイメント棟の影響ではないかと推測されます。また、PayPayドームを取得したことによるものと思われる固定負債の大きさゆえに、自己資本比率も低くなっています。

 オリックス・楽天は自己資本比率・流動比率ともに低水準ですが、この2球団は親会社のバックアップが強力なイメージがあります(完全な推測です)。旧来のNPBスタイルの経営といえるかもしれません。

 DeNAは自己資本比率こそ、やや低めなものの高い流動比率です。DeNAは純利益も年々増加しており、公表している球団の中ではトップの純利益額です。同社グループの中核事業の1つとして健全な経営を追求した結果でしょうか。

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実際の影響は
 縷々書いてきましたが、実際にどの程度の影響が生じるかは、未知数です。冒頭に掲げたチャートで、右上に位置する球団ほど、経営の余力があり、コロナの影響に対する耐性が高いものと考えられますが、あくまで過年度決算に基づくものであり、確実に生じている減収の影響は、今年度が締まらないと分かりません。
 またこれらの数字はあくまで球団単体のバランスシート上のものです。仮に球団の経営が大きく傾いた場合、結局は親会社がどの程度援助を行うか?という点に行きつきますので、これらの数字がその球団の末路に直結するわけではありません。ただ、決算を公表している球団は広島を除いてすべて上場企業であり、無尽蔵に援助が得られるわけでもありません。親会社もコロナの影響に直面しています。今季が終了して選手との契約更改が一つのベンチマークになっていくものと考えます。

ちなみに。。。
 この記事の中では、巨人・中日のデータが一切ないことにお気づきかと思います。この2球団に関しては、決算公告を出していません。なぜでしょうか?知りません。会社法はすべての株式会社に決算公告の開示義務を課していますが、多くの企業が公告を開示していない実態がありますので、この2球団がとりわけ悪質とは言えません。しかし近年NPBはコンプライアンス・ガバナンスが問題とされてきたという点からいかがなものかと。そういえば両球団の親会社はいずれも新

おっと誰か来たようだ


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