見出し画像

採用面接は採らない勇気を持つこと

 私は企業の経営者や人事担当者に向けて、採用面接での応募者の心理やウソの見抜き方について研修やコンサルティングをしていることはこれまでお話してきたとおりです。
 企業が新たな採用を考える場合、広告費を使って募集広告を出します。しかし、会社の規模や勤務地によっては「ほとんど応募がない」という話をよく聞きます。年々、生産人口は減少していますし、世の中が人手不足ですから応募が少ないのはある意味仕方ありません。ところがそんな中で一人でも応募があると「採用したい」という意識が前面に出てしまいます。
 

 以前、新潟県のある会社(製造業)の役員の方が私の採用面接官セミナーを受講されました。この会社では工場勤務の人員として地元の高校生を中心に採用しています。そして採用の基準は「真面目に休まず働いてくれる人」だそうです。採用したのはいいものの、数か月で会社に出て来なくなったり、心を病んで休職してしまう子もいるらしく「元気で真面目に働いてくれればいい、贅沢は言っていられない」というわけです。採用基準のハードルを低くしないとそもそも採用が儘ならないというわけです。
 名の知れた大企業なら別ですが、どこの中小零細企業でも採用に関しては同じような悩みを抱えていると思います。
 

 普段応募がない会社で久しぶりに応募者があり、面接した結果「ちょっとどうかな・・。」と迷っても無理して採用してしまいます。先ほど話した採用のハードルを地面に着くくらい下げてしまうからです。そうするとどんなことが起こるかというと当然ながら採用後に問題が生じます。職場に馴染めない、ずる休みをする、噓をつく、不正を働くなどのケースもあるでしょう。
 つまり採用する企業は「迷ったら採らない勇気」を持つことが重要なのです。喉から手が出て採りたくて仕方ないわけですがあえて採らない。ご承知のとおり、一度採用してしまうとそう簡単に辞めさせることができません。誤った採用は生涯賃金約2億円を無駄に払うことになります。そしてできない人間を採ると周りの職員の時間が盗られます。尻拭いに走ることになり、会社全体の生産時間も落ちます。できない社員に無用なエネルギーを盗られてしまうからです。
 そう考えていくと採用面接の目的が明確になってきます。採用面接は優秀な人間を見抜くのではなく「採ってはならない人を見抜く面接」をしないといけないのです。
 

採ってはならない人のヒントはどこにあるか?私は応募者の「過去」にあると思っています。私も皆さんも今があるのは過去の積み重ねです。過去にしかその人の「人となり」はありません。ですから過去の行動やそれに伴う感情を中心に聞いていくのです。
能力が普通であれば入社後の教育で伸ばすことができます。しかし生まれ持った性格やメンタルの弱さはそうそう改善することができません。ですから採ってはならない人を見極めて、あえて採らない勇気を持つことが採用のリスク管理といえるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?