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採用面接の目的は情報収集

 私は、企業の経営者や人事担当者に向けて、採用面接での応募者の心理やウソの見抜き方について研修やコンサルティングをしています。しかし、「なぜ採用面接の経験も少ない元刑事のあなたがそんなことを教えられるのか?」「そもそも刑事の取調べと採用面接は違うのではないか?」と疑問に思われる方もいます。しかし「取調べ」と「採用面接」には共通点が多いのです。それは「取調べ」も「採用面接」も情報収集の場であるということです。つまり、犯罪者が持っている情報を収集して白黒つけるのが「取調べ」、また、応募者が持っている情報を収集して採用していいかどうかの判断をするのが「採用面接」というわけです。そう言われると「確かにそうだな」と思われることでしょう。

そして、採用面接で引き出す情報は応募者の「過去の情報」です。私も皆さんも今があるのは「過去の積み重ね」ですよね。過去を振り返ってみるといろんな失敗もし、もちろん成功もし、いろんな方と出会い、いろんな知識を得て、自分の考えや生き方も形成してきたと思います。つまり、その人間の「人となり」は未来にはなく、過去にあるのです。ですから採用面接で「弊社に入ったらどんな風に働いてくれますか?」などと未来の質問をする面接官がいます。未来のことを聞いても口のうまい人や面接慣れしている人ほど上手く答えます。そこに真実の姿はないのです。だから未来についていくら聞いても何もわからないのです。

ですから採用面接では応募者の過去について徹底的に情報収集をします。聞くべきことは過去の「行動」と「感情」です。自分の考えでとった「行動」は確かな事実ですし、その時の「感情」はセットで記憶されるのでなかなか偽りにくいものです。
つまり「その時あなたはどうしたのですか?」【行動を聞く】「その時、あなたはどう感じましたか?」【感情を聞く】という質問を積み重ねていきます。そこに人間本来の考え方や本質があるのです。

それから情報収集作業で考えないといけないことは環境作りです。相手が心を閉じてしまったら得られるべき情報も入ってきません。面接官が怖そうだったり、態度が横柄だったりすると話にくいですよね。誰も積極的に話そうとは思いません。ですから面接官の態度や人柄も大事になってきます。また応募者が話しやすい会場を使ったり、最初は雑談をして話しやすい雰囲気を作る事も必要です。
それから情報収集作業で特に重要なこと。それは「質問」です。質問の仕方ひとつで相手から出て来る情報は変わります。例えば、「弊社は残業が多いですが、残業はできますか?」「はい。」「趣味は音楽鑑賞なんですね。」「はい。」いわゆるクローズド質問ではイエスかノーしかわかりません。質問の仕方の基本はオープン質問です。「残業が多いのですがどの程度まで残業は可能ですか?」「そうですね、子供が小さいので週3回くらい、午後8時くらいまでなら大丈夫です。」先ほどと得られる情報はかなり違いますよね。
採用面接の目的は情報収集である。それを念頭に置いて現在の面接方法を改善していくと良い結果が得られると思います。

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