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宝石好きなら一度は行きたい「ロサンゼルス自然史博物館」

こんにちは。
KARATZ(カラッツ)代表の小山(おやま)です。

前回は、出張中にロサンゼルスで空き時間ができて、急遽貴重な宝石の買い付けに成功したお話を記事にしました。

実は私、ロサンゼルスでもう一カ所、行きたかった場所があり、実はあの後に行くことができたんです!

この街で宝石商が行きたい場所といえば、そう、

ロサンゼルス自然史博物館ですね。

「博物館?」
「宝石とどう関係があるの?」

確かに日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんね。
勘が良い方は「自然史博物館」というところに注目されているかもしれません。

と言いつつ、そういう私も博物館と聞いて最初に思いつくのは「恐竜の化石」だったりするのですが・・(笑)(実は私、恐竜の化石が大好きなんです!!)

「自然史博物館」、つまり、大自然の中で作られた(人工的に作られたものではない)ものたちが展示されている博物館で、恐竜の化石や動物の剥製、そして鉱物なども多数飾られています。

映画「ナイトミュージアム」の舞台になったのがニューヨークにある「自然史博物館」ですので、映画を観たことがある方は想像がついたでしょうか。

そして、私の今回の目的は「ここでしか見られない宝石」を見に行くことでした。

世界最高峰の宝石を気軽に楽しむ

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以前、カリフォルニアにある、GIA(米国宝石学会)アメリカ校に遊びに行った時、先生から、「ロサンゼルス自然史博物館は、宝石商なら一度は行った方が良い  」と言われたことがありました。
世界最高峰の宝石を見られる機会は宝石商なら絶対に逃してはなりません!

以前一度訪れたことはあったのですが、今回も良い機会と、行ってみることにしました。

建物に入るとすぐに、定番の恐竜の化石が並んでいました。(やっぱりカッコイイ!)
そして、その他の様々な展示がロサンゼルスの歴史を教えてくれます。
さらに進むと、鉱物や宝石が展示されていました。

以前来たときは「特別展」をやっていたのですが、今回は時期がズレていたため「常設展」を中心に回りました。

自然史博物館は、個人では所有できないレベルの貴重な石の宝庫です。
今回たくさん写真を撮ってきましたので、特に気になったものや、皆様にぜひご覧いただきたいと思う素晴らしい宝石をご紹介していきたいと思います。

真紅の輝き・レッドベリル

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アメリカからしか採掘されないといわれているレアストーン「レッドベリル」

「ベリルの女王」とも呼ばれる赤いエメラルドです。こちらの展示品は、赤が際立ち、大きさも十分です。とても美しくて見惚れてしまいました。
しかし、原石は既に枯渇していて、宝石品質の新しい石が出回ることはまずないといわれています。
現在市場で見ることができるレッドベリルはここまで赤くなく、色もこんなに均一ではないのです。ちなみに下の写真が現在市場でよく目にするレッドベリルです。

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ご覧の通り、色は不均一で赤みも上に比べて弱いですよね。
仮にロサンゼルス自然史博物館で展示されているようなレッドベリルを見ることができたとしても、きっとバイヤーが売ってくれないでしょう。入手はほぼ不可能といわれるレベルです。

「蛍光反応」する鉱物の展示

左がブラックライトOFF、右がブラックライトONの状態の展示です。
中には、ややメジャーな石も混ざっています。
これらの鉱物の名前、わかるでしょうか?

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 左上から
 トパーズ   : カルサイト
 バライト     : ジプサム
 合成ルビー  : アラゴナイト
 アラゴナイト : フローライト 
   です。

ルビーがブラックライトに反応するのは有名ですよね。
ブラックライトでルビーが光るのは、クロムを含むから。同時に、鉄が含まれると蛍光は阻害されます。そのため、鉄分を多く含んでいるタイ産ルビーは、ブラックライトを当てたとき光が弱かったりします。

ブラックライト照射は、産地を見分ける際の補助検査として、宝石鑑定士が使っている鑑別手法です。今回の写真のルビーは、合成ルビー。そのため、蛍光性が強く最高に輝きます。このように、ブラックライトを当てたときギラギラ輝くルビーは合成の可能性もあります。どれだけギラギラに光るか、参考になりますね。

持てないほど巨大な「トルマリン」

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これは、カリフォルニア州サンディエゴの鉱山から採掘されたトルマリンの原石です。白い部分がクォーツ、ピンクの部分がトルマリンです。
写真だと分かりにくいかもしれませんが、実はこのトルマリン、大きさが成人男性の腕3本ほどもあります。これだけ大きいトルマリンを見る機会は、長年宝石商をやっていてもまずないでしょう。

様々な国から集められた「キャッツアイ」

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この写真の宝石は全てキャッツアイです。キャッツアイとは、猫の目のように石に一筋の光が現れる効果のことで、キャッツアイという名前の石があるわけではありません。ただ、一般的に猫目石と言われるものは、クリソベリルキャッツアイのことですね。

こちらの展示、採れた国も石の種類も違います。

・クリソベリルキャッツアイ(スリランカ産)
・パライバトルマリンキャッツアイ(ブラジル産)
・シリマナイトキャッツアイ(インド産)

など……それぞれ、インクルージョンと裏側を見ることで、ある程度は絞り込みができます。誤ってタグが入れ替わったとしても、宝石商ならルーペのみで見分けられるでしょう。

「モース硬度」順に並べられた宝石たち

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ある宝石の紹介する前に、まずは先に「モース硬度」についてご説明しますね。

モース硬度とは、ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが提唱したもので「2つの違う石をこすり合わせて、どちらに傷がつくかで石の硬さを判断する」方法です。最も硬い石を「10」とし、最も柔らかい石を「1」と定義しています。

写真は博物館で硬度順に並べられた宝石です(左側ほど柔らか)。

硬度1:タルク
硬度2:ジプサム
硬度3:カルサイト
硬度4:フローライト
硬度5:アパタイト
硬度6:オーソクレース
硬度7:クォーツ
硬度8:トパーズ
硬度9:コランダム(ルビー、サファイア)
硬度10:ダイヤモンド

ダイヤモンドは硬いとよく言われますが、その理由はモース硬度「10」という数字をもっているからです。
ちなみに、硬度が「1」の石には、人間の爪で傷をつけることができます。そのくらい柔らかいのです。人間の爪の硬さは「2.5」程度。2.5でも割れやすくてジュエリーにならない硬さです。一般的にジュエリーにできるのは、モース硬度「3.5」くらいからになりますね。

宝石の国で一躍有名になった「フォスフォフィライト」

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こちらは、9.55ctのフォスフォフィライト。
この宝石は『宝石の国』(月刊アフタヌーン連載・講談社・市川春子著)の主人公として登場します。このマンガが有名になる前は、恐らく知っている人はほとんどいなかったであろう超レアストーンでした。

作中でも言われている通り、モース硬度は3.5。硬貨でこするとわずかに傷がつくレベルです。非常にもろく欠けやすい宝石なので、写真のようにカットされることもほとんどありません。
加工時に石が割れてしまう可能性があるため、ジュエリーとして使われることも稀で、持っていらっしゃるのはコレクターの方ばかりです。

市場に出回っていても1ct以下が多く、ここに展示されているような10ct近い巨大サイズでこの透明度、さらに綺麗なカットのフォスフォフィライトを見られる機会は滅多にありません。

生涯に一度見られるかどうか…稀少な「カシミールサファイア」

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カシミールサファイアは、世界で最も希少な宝石ともいわれています。

1881年に発見され、その後数年でほぼ採掘は終了。つまり、100年以上前に枯渇しているんですね。そのため「生涯に一度見るか見ないか」と言われるほど出回っているものは少ない宝石です。

日本国内の市場で見られるのは1ct未満か、もしくは宝石品質でないものがほとんどです。ところがこの博物館では、さらっと他の宝石と同じケースで展示されていて驚きです。

・6ct(まずお目にかかれないようなサイズ)
・ベルベットのようなブルー(カシミールサファイアにおける最高峰の色)

ぱっと見ただけでも、推定1億円以上の価値がある宝石といえます。この貴重な深い青色は、正直写真ではお伝えしきれません。ぜひ、現地にて目に焼き付けていただきたい美しさです。(本当に美しかったです)

「特別展」の時期なら、さらに貴重な宝石が見られる

博物館は「常設展示」の他に、期間限定で「特別展示」を行っていることがあります。
下の写真は2017年の特別展で出逢ったピンクダイヤモンド。30ctという大粒で、35億円以上の価値と言われています。眼福ですね。

このように特別展の企画として、企業などから貴重な宝石が博物館に貸し出されることがあります。ロサンゼルス自然史博物館に行くなら、特別展の期間中がおすすめですよ(詳しくはこちら)。

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今回は、博物館で特別な宝石を見て回りました。誰でもこれだけのクオリティの宝石を見ることができるのは、本当にありがたいことです。

宝石商は、騙されないために偽物の宝石を多く見ることが大切といわれます。その一方で、市場に流通している宝石だけでなく、最高峰の宝石を見ることも重要です。自分の目で最高クオリティを確認することで、「本物の宝石」という価値基準を身につけることができるからです。

今後も買い付けで世界を巡りつつ、博物館級の宝石を皆さんにご紹介していきたいと思います。


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