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語りたいライブアルバム名盤 10選+1 前編

優れたロックバンドは優れたライブを演出できます。いくらスタジオ版でいい音を出していても、生でその音を出せなければウソです。そんな素晴らしいコンサートの音を再現できるライブアルバムは実に貴重なものです。最近はDVDの方が主流になりつつあるので、アルバムとしてのライブCDはあまりないような気がしますが、そこはやはり耳で楽しむのが音楽、本流はアルバムでしょう。
そんなライブアルバム、これまで私が聞き込んだ傑作を語っていきましょう。

ロックとの出会いは中学1年生でした。中学生になりたては、小学生から進化した、大人になったんだもうガキじゃないぜ、おれたちを子供あつかいすんじゃねえよ的な心理状況でありまして、そんな心理状況にまさしくうってつけなのがロックなわけでして、歌謡曲なんて子供の聞くもんだぜ、大人はロックだぜ、というわけで右も左もわからない、そもそも、そういう音楽をロックという事すら知らなかったアホでしたが、それは持つべきものは友でして、そんな彼が最初に私に聞かせたのがこのアルバムでした。

Rainbow / On Stage

あのブリティッシュハードロックの雄、ハードロックの開祖、ハードロックの王者、Deep Purpleを脱退したRitchie Blackmoreが結成した、Deep Purpleの正統後継者ともいえるロックバンンド Rainbow の、今となっては唯一のライブアルバムです。 この時代はハードロックの黄金期なんで、とにかく内容が濃いです。イントロの"Over the Rainbow"から、ギンギンなギターサウンドを唸らせる"Kill the king"への流れが、いかにもブリティッシュハードロックらしいナミダもの、世界3千万人のギター少年たちは Ritchie Blackmoreの目も止まらぬ速弾きメチャ弾きに、必死こいてついていこうとしてもだえ狂ったもんですよ。またこの時期の演奏はとにかく長いのがフツーでして、このアルバムには"Catch the Rainbow"が15分35秒"Mistreated"13分03秒と、当時のLPレコード片面1曲収録でしたが、このあたりの演奏が聞かせるわけでして、こういったライブでの演奏で大幅にアレンジされてくるところが、いかにも優れたロックバンドだったと言えるのでしょう。
さて、そんなRainbowでロックを初めて知った私が次に進むのはやはりと言うか当然と言うか、本家本元のロックです。ロックの王者Deep Purpleです。今ちまたにあふれるハードロック、そのすべてはこのDeep Purpleのコピーであると言っても差し支えないほどの偉大なるロックバンド、それがDeep Purpleなのです。今や、テレビCMの音楽にも使われるくらい一般ウケするようなロックに成り下がってしまいましたが、当時はロックを聴くならこれを聞かなきゃなあ、なんてわかったようなことを言って聞いていたのでした。

Deep Purple / Made in Europe

そんな私が気に入って買ったのがこのアルバムです。Deep Purpleといえば、圧倒的に第2期が人気です。かの名曲"Highway Star""Smoke on the Water"を生んだのが第2期ということで確かにいいのですが、私の個人的見解ではDeep Purpleの一番の名曲はやはり"Burn"だと思うので、そんなマニア向きな第3期のメンバーでのライブアルバムが"Made in Europe"です。セットリストは実に地味なんですが、"Burn"以外はあんまり知られてない曲だし、そもそも第3期ってのは、例のボーカルとギタリストの仲が問題化して、後半はギタリストの方が全然やる気なかったというような説もありまして、そういう意味では、この"Made in Europe"の演奏はどうなのという話になりますが、全然関係ないですね。オープニングの"Burn"からボリューム目一杯全速全開でかましてくれます。に"Burn"は、ギターソロやキーボードソロが大幅にアレンジされており、さらに、3期後半から4期にかけて腕の不調にいたるJon Lordが、まともにソロを演奏しているおそらく唯一の音源(Live in Londonではソロが途中省略されている)と思うので、その意味でも貴重です。それにしても、ライブ演奏時にはライブ用のアレンジをしっかり作ってくるところ、やはり本家本元は違います。ライブでもスタジオ盤と同じ演奏を聴かされたんでは、家でスタジオ盤を聞いてればいいことですからね。
さて、このように一通りロックの洗礼を受けたフツーなロック少年たちはこのままハードロックを一直線なわけですが、ネクラな少年はここからネクラな方向へ進むわけでして、プログレッシブロックと分類されるロックがそれです。少年は15歳にして、人類の存在意義に対して深い思念を持つようになって参りまして、リアルタイムでエヴァとか見てたら絶対にハマってたろうなあ、こうしてプログレの道を進むのです。(2010.5.28 記す)

優れたロックバンドは優れたライブを演出できる、それを証明する数々のライブアルバムを語るこのシリーズ、前回はハードロックの王者Deep Purpleとその直系Rainbowのライブアルバムを取り上げましたが、その後、ネクラな少年はプログレッシブロックへと進みまして、ええ、あの壮大で深淵でわけのわからないロックです、有名どころではYes、King Crimson、Genesis、そして大御所Pink Floydと言ったところでしょうか。そんな中でまず私が手に入れたのがこれ。

YES / Yesshows

Yesといえば、言わずと知れた大メジャープログレバンド、69年に結成されて以来、今だ解散と再結成を繰り返しつつ生き延びているんですが、個人的には78年発表の"Tormat"で終わってるこのバンド、レコード会社との契約の関係で、仕方なくリリースしたともっぱらのうわさなライブアルバムがこの"Yesshows"です。ホントは"Yessongs"を買いに行って、売ってなかったのでその代わりに出たばかりのこのアルバムを買ってきたんですが、鳴り物入りでリリースされ、リキの入ってた"Yessongs"は選曲も音源も評判よかったのに対して、バンド停滞期の穴埋めのように作られたこの"Yesshows"はあまり評判よろしくないようで(Ritual/Nous sommes du soleilのぶった切りはあまりにも有名)でも私は好きなんです。オープニングから緩急つけた選曲で、特に"The Gates of Delirium"のライブパフォーマンスは、スタジオ盤が物足りなくなるくらいに素晴らしいです。たしかに後半は、長時間演奏ゆえのぶった切り、最後に収録されている"Wonderous Stories"はほとんどおまけあつかいだし、許せんところもあります。しかし、2枚組だったので、1枚目ばかりを繰り返し聞いてた私にはあまり気にならなかったな。(2010.10.30 記す)

私が若かりし頃に聞きまくったライブアルバムを紹介するこの大好評シリーズ、前回、ハードロックからプログレに進んだ話をしましたが、そこまで進むにはやはり試行錯誤もありまして、洋楽に目覚めた世代ですから、やはり廻りも聞き始めたばかりの連中がいっぱいいて、やれ何が良いどれが良いと、自分のお気に入りのバンドを勧めて盛り上がるわけですが、そんなご紹介いただいたロックバンドの中で、わりと聞いたのがこのグループのアルバムです。

QEEN / LIVE KILLERS

クイーンと言えば、キムタクさんの某ドラマで使われ、日本では再び大ブームになったのでご存知の方も多いと思いますが、そのブームに当て込んで、とっくの昔に解散したのにわざわざ再結成して、日本だけでコンサートをするというなかなかビジネスライクな事をやってくれました。往年のファンが喜んで高いチケット代を払う事ができるグループということなんで、それはそれで立派だと思います。でもね、個人的にはクイーン=フレディマーキュリーな私としては、日本公演のボーカルがポールロジャースってのは納得できん。
話が横道にそれましたが、このクイーン、音楽的にはロックといってもかなり歌劇的、壮大な演目が多いのが特徴なんで、それがライブではいかんなく発揮されています。そして、その壮大な歌劇的ロックを支えているのはやはりフレディマーキュリーのボーカルでしょう。声だけでなくその容姿が、デビュー間もない頃は妖艶と言うか、気持ち悪いと言うか、北斗の拳に出てくる、南斗紅鶴拳のユダみたいで、毎日鏡に向かって「うーむ、私は美しい」とか言ってたんじゃないかと思えるくらい。でもメジャーになっていくにつれ、普通になりましたね。本アルバムでは、当時は音源しかなかったんですが、今では動画サイトで映像も見る事ができます。見てみると、普通になってるのがわかりますね。
さて、本作は2枚組で22曲、ヒット曲も含めてたっぷり聴かせてくれます。特に私は1枚目を繰り返し聞きまして、オープニングの"We Will Rock You"のアップテンポのアレンジがすごく気に入って何度も聞きました。ですから、この曲が、どんどんばん、どんどんばん、とスローテンポの曲だと知ったのがかなり後なんで、実に違和感ありました。他に、"Killer Queen""You're My Best Friend"も好きでした。また、"Now I'm Here"での観客とのやりとりや、"Love Of My Life"での全員合唱など、クイーンがいかに優れたバンドであったかを証明しています。そんなクイーンも91年にフレディが亡くなって、その栄光の歴史に幕を閉じる事になるのでした。(2010.12.14 記す)

洋楽の聞き始めはいろいろかじったのですが、標準的な洋楽ロック路線を進んでくると、誰でも必ず一度は聞くのがKISSだと思います。私も、友人にクレイジーなファンがおりまして、これは絶対に聞けなどと言われて貸してくれたのが、KISSの名盤"ALIVE II"でした。

KISS / ALIVE II

KISSは当時は大人気ロックバンドで、当時よく聞いていたFM番組のダイヤトーンポップスベスト10でも常連でしたが、一度聞くと耳に残るわかりやすいロックで、初心者にはうってつけだったと思います。私はA面の"Detroit Rock City"から"LOVE GUN"までが気に入って繰り返し繰り返し聞いておりました。しかし、私にプログレを勧めた別の友人が、お前にKISSは似合わんと言われて、まあ、確かにネクラ少年の聴くロックではないわなと私も同意、このALIVE2だけで終わりました。でも、フェアウェルコンサートには行きました。ステージはすごいね、さすがエンターテイメントの国アメリカのロックバンドです。(2011.11.13 記す)

このように紆余曲折を経て、ネクラ少年はプログレへの道を歩んだわけなんですが、超メジャープログレバンドYESにのめり込みつつ、他のプログレもいろいろと聞いた事もありまして、そんな中で名盤と思えるのが、まずはこのアルバムです。

GENESIS / SECONDS OUT

ピーター・ガブリエルが脱退して、もう終わりだと言われたジェネシスが、フィル・コリンズによってそんな事全然ないよとなった頃のライブアルバムですが、その後、ソロでヒット曲を連発した彼が主導権を持った事がよくわかる、実にポップでダンサブルで、とてもプログレとは思えないアルバムです。もちろん、その後のプログレがパンクによって駆逐される事を考えると、この方向転換は時代よ敏感に読んだフィル・コリンズの天才的なビジネス感覚ゆえなんでしょう。いち早く、ポップ路線に切り替わったジェネシスがよくわかります。2枚組ですが、1枚目の "I Know What I Like"あたりが好きで、1枚目ばかり聞きまくっていました。それにしても、これを聞くと、スティーブ・ハケットが「やってらんね」と言って脱退したのがよくわかるくらい、ギターの音が聞こえない。トニー・バンクスがでばり過ぎ。(2011.11.23 記す)

後編に続く

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