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語りたいライブアルバム名盤 10選+1 後編

ネタに困って定期的に登場するこのシリーズも6回目、そろそろこっちもネタ切れな感じなんですが、細かいことは抜きにして話を進めて参りましょう。前回、私がのめり込んだYESを含めて、その時代をブイブイ言わせてた4大プログレバンドのひとつ、GENESISを紹介しましたが、そうなると他のバンドも語らなければならんでしょう。

EL&P / Emerson, Lake and Palmer in Concert

EL&Pと言えば、日本では大人気の3ピースプログレバンド、マジでギタリストなんでみんな死んでしまえばいいのに、とシンジ君みたいな事を考えていたらしいキース・エマーソンが、The Nice解散後に、King Crimsomのグレッグ・レイクとなんかよくわかんないバンドにいたカール・パーマーとともに結成、「展覧会の絵」「くるみ割り人形」などの有名どころのクラシックをプログレにアレンジしてヒットしました。これもまた友人に熱狂的とまでは言わないですがファンがいまして、最初に貸してくれたのがなぜかこの"in Concert"でした。このライブアルバム、栄光のEL&Pもひっそり解散する直前の、バンドの状態が最悪なときに発表されたにもかかわらず、内容的には実に素晴らしいパフォーマンスが収録されており、特に後半の「ピアノ協奏曲1番」そして「展覧会の絵」は何度も聞き返したものです。後で知ったのですが、この音源はバンドの状態が最高潮だった頃のものだそうで、そういわれれば納得ですね。個人的に鍵盤楽器好きだったんで、もっとこのバンドにのめり込んでもよかったと思うんですが、あんまり縁がなかったです。"TARKUS"のB面にがっかりだったからかもしれません。(2011.12.3記す)

さて、いよいよ、マイナーなバンドが登場してくる訳ですが、このfocusはオランダのプログレバンド、ラジオで聞いて、有名な「レイレレレイレレーホッホッハー」ヨーデルみたいな歌が印象に残ってしまいまして、結局、アルバムを購入してしまいました。で、聞いてみたら、ヨーデルの曲もそうでしたが、全編凄まじい演奏で、ギターもキーボードもしのぎを削る緊迫のライブでした。当時、大メジャープログレバンドよりマニアックな方向に傾倒していた私は、PFMやAphrodite's Childに続いて、なんかこういうのを知ってるオレって通じゃん、みたいな自己満足でひとりいい気になってましたね。最近、スタジオアルバムをブックオフで500円で売ってるのを見かけて買おうか買うまいか迷って結局買わなかったです。あいかわらず決断力ないな。(2012.2.10記す)

focus / at the rainbow

そろそろ佳境に入ってきましたこのシリーズ、ここら辺りで大物にご登場していただきましょう。全国3000万人ネクラプログレ少年の希望の星、King Crimsonです。68年にイギリスで結成されたこのバンド、いわゆる4大プログレの一角をなす人気バンドで、特に日本でもコアなファンが多いことで有名です。windows vistaのわずか数秒の起動音を作成してがっぽり儲ける商売上手で、ロックギタリストのくせに演奏は座って行う変わり者で、そしてそのテクニックはシーケンサー並みの精確さを誇る腕前のロバート・フィリップが唯一のオリジナルメンバーとして、実に複雑怪奇な人脈と歴史とを持つバンド。なにしろ、過去に関わったミュージシャンを挙げたら、有名どころのオンパレード、そんなKing Crimsonですが、活動時期で大きく分ける事が出来ます。まず「宮殿」から「アイランド」の前期、「戦慄」から「レッド」の後期、そして「ディシプリン」以降の復活期、このうち、私個人がKIng Crimsonと呼べるのは、後期のみと思っております。前期はKing Crimsonのβバージョンみたいなもので、ようやく製品版になったのが後期、そして、74年に一旦解散して、81年に復活したKing Crimsonは、復活という事になっておりますが、実際はロバート・フィリップが新たに結成したDISCIPLINEと言うバンドが、レコード会社からこの名前では売れないからKing Crimsonの名前を使えと言われて変更したらしいので、そういう大人の事情がからむ以上、やはりKing Crimsonとは呼べないでしょう。「宮殿」を聞いてから「ディシプリン」を聞くと「なんじゃこれ?」となる事はみなさんご存知の通り、全く同じバンドの音とは思えないです。
さて、そんなKing Crimsonですが、ライブ盤としてはアルバム" King Crimson USA"があります。

KING CRIMSON / USA

私はこれで後期Crimsonこそが真のKing Crimsonであると確信した次第で、冒頭の一曲目"Larks' Tongues In Aspic Part II"の凄まじいライブパフォーマンス、これは素晴らしい、この一曲だけのために"USA"はあると言っても過言ではないくらいの素晴らしさです。その後も激しい演奏のやり取りを繰り広げられます。私はこれで"Larks' Tongues In Aspic Part II"がKing Crimsonの曲で1番好きになりました。ゆえに、一番好きなアルバムも"Larks' Tongues In Aspic"です。(2012.5.9記す)

では、これまで数々のプログレバンドを取り上げてきましたが、いよいよ登場してもらいましょう。Pink Floydです。プログレ界の皇帝、あるいは仙人的存在、あるいは孤高のプログレバンドなどと揶揄されるこの音楽集団は、1967年にイギリスで結成されました。以後、数々の名曲、歴史に残るアルバムを発表し続けて、今なお、世界の音楽シーンに大きな影響力をもっています。私がこのバンドと出会ったのは、Yes、King Crimsonと聞いてきてプログレマニアを自称していたところに、Pink Floydを聞いた事もないのにプログレを語るなど笑止千万と言われまして、早速、いつものレコード屋へこずかい握って買いに行ったわけですよ。当時は今みたいに情報過多な時代でなかったんで、何の予備知識もなく、売り場でアルバムジャケットを見て買うのを決めたんですが、今思えばよくやったよなあ、月2000円の小遣いで2500円のアルバム、1枚買ったらもうお金ないじゃん、そんな思い切りのいい事ができたのも若さ故でしょうか、とにかく、そんな勢いで買ってきたのが、あの名盤”The Dark Side of The Moon”でした。その時は、このアルバムがランキングでギネスを保有するほどのアルバムとは知らず、ジャケットがかっこ良かったんで買ったんですが、聞いてみて、そりゃあもう天地がひっくり返ったような感動の雨霰でした。おお、これが真のプログレなのか、YesもKing Crimsonも、これに比べたら歌謡曲じゃないか。のめり込んだ私は、その後、”Wish You were Here””Animals””The Wall”とむさぼるようにアルバムを買い求めていくのです。こうして、立派なネクラプログレ少年になりましたとさ。めでたしめでたし。

Pink Floyd / Is There Anybody Out There? The Wall Live 1980-1981

さて、そんなPink Floydですが、ライブアルバムは69年発表の”Ummagumma”のほか、ウォーターズ脱退後の88年発表”Delicate Sound Of Thunder”があります。が、私が今回取り上げるのは、やはりPink Floydとして大成功をおさめた”The Wall”のライブアルバム、2000年発表の”Is There Anybody Out There? : The Wall Live 1980 - 1981”です。ネクラプログレ少年時代に部屋に籠って聞きまくってたアルバムの、見たくても見れなかったライブ、その音源が、ようやくCD化されたと知って、タワレコで見つけた時即買いでしたね。速攻で聞きましたね。Pink Floydのライブショーはすさまじいと言う話だけは聞いていたので、想像はしていましたが、期待以上にぶっ飛ばされました。音源だけでこの迫力、これを会場で体感できたらどんなに良かったかと思ったもんです。残念ながら無様に空中分解し、泥沼の訴訟問題を絡めて、皇帝とまで称された孤高のバンドの栄光の歴史は晩節を濁しまくりましたが、この黄金期に生で見ておきたかったなあ。

ところで、それ相応の大人になった今でも、当然ながら、たまに思い出したように聞いているんですが、最近ちょっと思った事があります。それは、実はPink Floydはプログレじゃないんじゃね? ってことです。何をもってしてプログレッシブ・ロックと称するのかは、いろいろな分析がありますが、私が思うに、プログレとは中二病だと思うんですよ。中二病ってあれね、「思春期の少年少女にありがちな自意識過剰やコンプレックスから発する一部の言動傾向を揶揄した俗語(wikiより)」この言葉を知った時に、まさしく、プログレの世界観じゃんと思いましたもんね。だってそうでしょ、「魔女が平面を取り除き、あなたの夢をも食らう」だの「私はここにいる、そしてそこにいる、どこにでもいる」だの歌詞を見ても、あるいは海から来たやんちゃなタンクが悪さをして神様に怒られてまた海に帰っただの、サンスクリットだかなんだかの教典に基づく人間の儀式だの、今思い返したら赤面しそうな内容の歌ばっかりです。しかし、その点から考えると、Pink Floydはちょっと違うんですよ。”The Dark Side of The Moon”が人間の一生を描いたアルバムだというのは有名な話ですが、ここですでに「金」「時間」に振り回される人を皮肉る、あるいは批判する姿勢が見て取れます。そして”Wish You were Here”では、ヒットしたアーチストがいい気になってる姿を、自分たちに重ねて批判し、それを精神破綻したシドへのメッセージとしてします。”Animals”は完全に資本主義への批判で、”The Wall”もわかりあえない人と人とへの批判でした。何の事はない、初めから最後まで、強い社会批判がテーマになっているではありませんか。これはどういう事でしょう。さて、ここでもうひとつ、定義を考えましょう。ではロックとは何か? いろいろな説がありますが、私はロックとは体制批判であると思うのです。何もかも社会が悪い、などとのたまうガキの話ではなく、 五木寛之も言ってましたが、 巨大とはそれ故に悪である、その巨大なものへの反骨精神、それがロックだと思うのです。となると、Pink Floydは偉大なプログレロックバンドではなく、純粋なロック、そのロックバンドとして実に偉大であった、ということになるのです。反骨精神、歳をくっても忘れたくないですね。(2012.12.16記す)

さて、これまで10枚のライブアルバムを紹介してきましたが、ここまで読んでいただいた奇特な読者さんからは、おいこれで終わりか? 最も偉大なバンドが無いぞ、と言われそうなので、ハイ、もちろんわかっております。かのバンドは別格な存在なので、別枠+1として紹介したいと思います。


LED ZEPPELIN / THE SONG REMAINS THE SAME

LED ZEPPELINの"THE SONG REMAINS THE SAME"です。73年のマディソン・スクエア・ガーデンでのライブパフォーマンスを76年に2枚組アルバムとして編集し発売した、唯一のライブアルバムです。

68年にYARDBIRDSの延長線上に生まれたLED ZEPPELINは、
完成度の高いアルバムを次々に発表して一気にスターダムにのしあがると、各地でライブを決行、それはもう大盛況で色々な伝説を作ったわけなのでありますが、当然、その人気にあやかって海賊版が出てきます。このアルバムは、それに対するバンド側からの回答のようなもので、元々は映画を作って、そのサントラ版というポジションで発表されました。ですから、あくまでサントラである、ということで、ライブアルバムとしての出来に関しては、ファンの間でも賛否両論だったらしいのですが(例えばかなり音を加工しているんじゃないか等、根も歯もない噂は絶えなかったようです)しかし、当時の王道ロックであるDEEP PURPLEに陶酔していた私には、大人のロックだったんでしょうね、全然いいと思わなかったですよ。幸か不幸か、初めて聞いたLED ZEPPELINはこのアルバムに収録された"Dazed And Confused"でしたから、ライブパフォーマンスで極限まで自由度の高い演奏を繰り広げる世界についていけないものは退屈な音と言い訳するしかなく、私もその口なのでした。

そんな私がLED ZEPPELINの良さにようやく気がつくことになるのが75年に発表された"Physical Graffiti"でした。DEEP PURPLEと違った力強く重くそして静かなロックに、おお、これが大人のロックだなとど、背伸びしてる時期なんで、こういうのがわかるおれってすごくない? と思ってたんだろうなあ。それでもいいものはいいのであります。 

その流れで、再び"THE SONG REMAINS THE SAME"に戻ってきて、改めて聞いてみたら、退屈などと評価していた"Dazed And Confused"が奏でるギターの音、そして表題曲の"The Song Remains the Same"から"Rain Song"での美しいメロトロンの音、そして何よりも、名曲中の名曲"Stairway to Heaven"の静かな前半から、凄まじい迫力へと変遷する音、これが生で聴けていたら、どんなに幸せであったろうか。とにかく毎朝1枚目毎晩2枚目を擦り切れるくらい聴きまくってたな。

元々映画のサントラなので、元の映画があることは知ってたのですが、当時は公式に販売されていませんでした。なんとか見れないものかと思っていたら、友人のロックマニアくんが通販で手に入れたというので、見せてもらいましたよ。それはもうすごかったですよ。

そんなLED ZEPPELINも78年のジョン・ボーナムの死により、終焉を迎えるわけですが、事実上のラストアルバムとなった"In Through the Out Door"を聴くと、まだまだ発展途上のバンドだったことがよくわかり、ここで終わりを向けたことが本当に残念でなりません。

ロックの神、と評されることが多いLED ZEPPELIN、それはその音を引き継ぐものがいないこに象徴されると言えるでしょう。孤高といわれたPINK FLOYDでさえRADIOHEADという後継者がいるのに、LED ZEPPELINの特徴あるブルースの延長線上にある民族音楽と融合されたロックを後継するものは誰もいない、それどころか、似た音を出せば非難されそうなくらい、神聖化された不可侵の領域にあるLED ZEPPELINのロック、今では高画質なDVDも出ておりますので、大画面テレビでその迫力のライブパフォーマンスを再現できます。いい時代になったものです。(2024.5.31記す)

この記事は2010年5月から2012年12月にかけてブログに掲載した記事をまとめて訂正加筆したものに、最後の+1として、当時書くことができなかったLED ZEPPLINの記事を加えたものです。

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