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「JAMPの視線」No.70(2021年5月2日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】

目次
①JAMP 大原啓一の視点
②NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
③メディア掲載情報
④インフォメーション

JAMP 大原啓一の視点 2021年5月2日

石川県を本拠とする北國銀行が、先週4月28日に行われた2021年3月期の決算発表と同じタイミングで、今年10月に持株会社体制に移行することを発表しました。地域銀行の一行単独での持株会社化への移行については、昨年10月の広島銀行のひろぎんホールディングスへの移行を第1弾に、今回正式決定された北国銀行のほかに、十六銀行や沖縄銀行も今年秋の移行を予定しており、ちょうどつい先日の「金融財政事情」(4月27日号)でも特集が組まれていたように、足もと広がりつつあるように見受けられます。
地域銀行による持株会社の設立というと、これまでは主に地域銀行同士の再編(私が常々表現するところの「再編A」)の際の経営統合もしくは合併への移行スキームとして用いられるものでしたが、広島銀行や北國銀行等の持株会社への移行は、再編を前提としない純粋な経営体制の変更であり、このような新しい動きが複数行に広がっているところに、地域銀行の経営戦略が大きな転換点を迎えている兆しを感じます。
よく言われることではありますが、一般事業法人がマクロで資金余剰に転じ、借入れ需要が大きく減退するという構造変化に加え、足もとは超低金利環境が継続しており、これまで銀行経営を支えてきた預貸モデルは限界を迎えており、他に安定的な代替収益源を持たない地域銀行はその存続が危ぶまれるという厳しい状況にあります。とはいえ、それが即ちもはや地域銀行が地方の法人や家計に提供できる付加価値が無いということや地域銀行の存在意義が無いということを意味するものではないことは、改めて強く主張したいと思います。
例えば、借入れ需要が無い法人であっても、特にコロナ禍で制度融資で多額の負債を背負う企業にとっては、資本の需要は強く見込まれ、資本調達を直接・間接に支援する金融機関の存在価値は非常に大きいことは言うまでもありません。地域金融機関が提供し得る金融サービスを銀行の預貸に限定せず、顧客となる法人や生活者のニーズを基礎に考えた場合、幅広い金融サービスに対するニーズは、引き続き強くあることに変わりないように思います。限界を迎えているのは、特段の工夫もせずに組成・提供できる金融商品・サービスだけを軸にビジネスを組み立てるいわゆる「プロダクトアウト」の発想というだけであり、顧客向けビジネスとして当然のことではありますが、顧客のニーズに応じて組成・提供する金融商品・サービスを軸にする「マーケットイン」の発想はいかなる環境でも柔軟に機能し得るものと考えます。
また、地域金融のみならず、地方経済の活性化という観点においても、その基盤を構築・運営し得る主体として、地域銀行の存在は欠かせないと考えます。これも言うまでもないことですが、地方経済が直面する問題に対応し、その活性化を実現するためには、地方公共団体を中心とする「官」の取組みだけでは不十分であり、「民」の立場での取組みが中心となることが不可欠です。地方の経済主体というと、電力・ガスや電鉄等の企業も少なからずありますが、それらが幅広い経済主体の活動を支える基盤を構築できるかというとなかなか限界があり、そこで主役になるのはやはり地域銀行になるであろうことは異論が少ないのではないかと思います。
足もと、地域銀行やそのグループが担える事業領域を柔軟に拡大するための法制度の改革が進められていますが、そのような経営環境の変化も活用し、経営形態を持株会社へと移行し、その下に銀行以外の様々な金融・非金融機能を提供する主体をぶら下げることで、地域銀行が地域金融機関として、更にはより広い意味での地域産業支援基盤として、自らを変革していく動きがより一層に広がっていくことが期待されます。

News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一) 

2021年4月26日
【新興集う「日本橋バレー」 医療系71社、4年で3.7倍】
大原のコメント→
日本橋周辺にスタートアップ企業が集積しつつあるのは事実ですが、三井不動産による医療系・宇宙関連企業の取組みのみが取り上げられており、平和不動産による金融系企業に対する取り組みへの言及がないのは片手落ち感があります。
渋谷や六本木等との比較としての日本橋という「地域」別の特徴を取り上げるのであれば、その点は網羅性がなく、残念です。
東京都が主導する「国際金融都市・東京」構想の実現と平仄を合わせる形で、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5798106?ref=user_121187

2021年4月27日
【松井・岡三、SBIに追随 ネット証券「手数料ゼロ」第3の波】
大原のコメント→
これまでも繰り返し述べていますが、米国で進む手数料無料化の動きを模倣しても、規制や業界構造、事業慣行等が異なる日本では代替収益源を確保することは容易ではありません。
記事内にもある通り、戦略なき手数料引き下げ競争は「顧客層の拡大」という耳障りの良い表現で無思考を取り繕っているだけであり、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5801095?ref=user_121187

2021年4月27日
【SBI、米国でSPAC上場支援 日系企業向け】
大原のコメント→
2-3ヶ月前に日本企業を対象とした米国SPAC上場のニュースも報じられていましたが、国内証券取引所がSPAC導入に慎重な姿勢を見せる一方で、こうした形で海外SPACを通じて海外上場を選択するスタートアップ企業が出てきそうです。
個人的にはSPACには健全な印象を持っておらず、否定的なのですが、最近では創業者や現経営陣に好条件の設計も広がりつつあるとも聞いており、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5803407?ref=user_121187

2021年4月28日
【岡三証券、対面の手数料撤廃】
大原のコメント→
恐らくは25歳以下の顧客割合が小さく、業績への影響は軽微という判断ではないかと推察しますが、今後この流れが進むなか、対面証券会社がどこに代替収益源を求めるのかは生死を懸けた課題であると感じます。
岡三証券グループにおいては、足もとIFA事業プラットフォームである証券ジャパンを完全子会社化するなど、資産運用アドバイス付加価値の提供を強化しようとする姿勢がうかがわれますが、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5804606?ref=user_121187

2021年4月30日
【多角化進むSBI証券 ネット証券は2強時代に】
大原のコメント→
足もと預かり資金残高や営業収益等でSBI証券と楽天証券が存在感を大きくしているとのことですが、手数料無料化が事業環境として前提となる今後は、本記事にある通り、売買委託等手数料以外の収益源の分散が重要になり、そこでもこの2社は他社に比べて先行しているように感じます。
特に、従来型証券・資産運用サービス付加価値がコモディティ化するなか、対面と非対面を融合した資産運用アドバイスサービス付加価値の提供がカギとなりますが、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5811441?ref=user_121187

News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)

2021年4月26日
【“顧客第一に考えた業務を”金融機関に状況報告求める 金融庁】
長澤のコメント→
「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択している金融機関には、この「顧客を第一に考えた業務」をどのように進めていくかの取組方針を公表するよう求められておりますが、例えば、「お客様に重要な情報を分かりやすく提供します」など、抽象的な、「原則」の文言を若干変えた程度のものを自社の取組方針として掲げるに留まり、具体的に何をするのか、顧客に伝えようとする意識が十分とは言えない金融機関が少なからず見受けられるように感じております。今回の金融庁宛の報告は、誤解を恐れずに言えば、取組方針を「作文」するのではなく、・・・(続きを読む)
https://newspicks.com/news/5797815?ref=user_6551307

メディア掲載情報

■寄稿・掲載情報:「金融経済新聞」へのコラム寄稿
弊社代表の大原が「金融経済新聞」(4月26日号)にコラムを寄稿しました。
「喜怒哀楽」コーナー:「地域銀行の本領発揮はこれからだ」
https://www.jamplatform.com/news/2021/04/26/2070/

■寄稿・掲載情報:金融メディア「Finasee」へのコラム寄稿
弊社代表の大原が金融メディア「Finasee」の書籍紹介コーナーに自共著「IFAとは何者か – アドバイザーとプラットフォーマーのすべて-」の紹介コラムを寄稿しました。
「新時代の資産運用ビジネスを理解するための必読書『IFAとは何者か―アドバイザーとプラットフォーマーのすべて』」
https://www.jamplatform.com/news/2021/04/30/2076/

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