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【本の感想 vol.003】『アラビア太郎』杉森久英さん 2023/05/27

杉森久英さんの「アラビア太郎」という本を読んだので、感想を書いていきます。

はじめに

本に出合ったきっかけ

堀江貴文さんが非常に面白かったとおすすめされていたので気になって手に取りました。

著者のプロフィール

杉森久英さんは特に伝記小説を多く手掛けておられた作家です。1997年に逝去されています。
略歴をamazonより引用します。

杉森/久英
1912(明治45)年、石川県七尾市に生まれる。東京帝国大学国文学科卒業後、熊谷中学校(現・埼玉県立熊谷高等学校)教員、中央公論社、大政翼賛会文化部、日本図書館協会などを経て、戦後に河出書房に入社。『文藝』編集長などを務めながら、自らの作品を『中央公論』に発表、その後に退社し、作家専業となる。『天才と狂人の間』で第47回直木賞を受賞。とくに伝記小説を多く手がけ、『近衛文麿』(第41回毎日出版文化賞受賞)など多数の作品がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

出典:https://amzn.asia/d/74b1kPm

本の概要

山下太郎(アラビア太郎)という人物の生涯を描いた物語です。
大きな志をもって札幌農学校に入学し、そこから満州の事業で成功し、満州太郎と呼ばれます。
その後、太平洋戦争の敗戦で財産を失うも、そこから再起してアラビア石油事業を成功させ、アラビア太郎と呼ばれるまでの物語です。
amazonよりあらすじを引用します。

その男、山下太郎は、満州で莫大な財産を築くも、敗戦ですべてを喪った。しかし、戦後復興の核心となる石油を欧米制に依存している現実を危惧し、69歳でアラビア石油を創業。世間から“山師”と揶揄されながら、中東で「日の丸油田」を見事打ち立てた――。日本近代興亡の中で成功と没落、再興を成し遂げた、忘れられた破格の豪傑・山下太郎を、『天皇の料理番』著者が描ききる!

出典:https://amzn.asia/d/74b1kPm

感想

尊敬する先生の教えから学んだ信頼の大切さ

主人公が尊敬する先生から、房楊子(今の歯ブラシ)を売る際の商売の話を聞きます。
多くの人は、うまくできた房楊子を外側に集めて渡すのに対し、先生は品質ごとに上中下と束で分けて持っていき、店の人から信頼されることでよい値段で引き取ってもらっていました。
この話を聞き、主人公は、周りの人に豊かな愛情を注ぐことを忘れず、成功に燃える心を持ちながらも足元の大切さを忘れないことを心に留めます。

プラス思考の重要性

大学時代、主人公が禁酒の寄宿舎のおきてを破り、追い出されます。
その際、これから下宿代は高くつくが、厳しい規則もなくなり自由になれたと自分を肯定し、結果的に良かったのだと思い込むようにしました。
このようなプラス思考は、子供の頃にドジョウ掬いをする際、母親がこっそり手助けをして成功体験を植え付けられていたからのようです。
その後の事業を進める際も、このプラス思考が行動力を後押ししています。

自分の生き方を貫く

主人公はこっそり父親の通帳を拝借してまで資金を集め、自分でもバクチと認めるような商売でうまくいきます。
その結果を父親に報告した際、父親は商売はコツコツやるべきで、お前のやり方は反対だと言われます。
それに対して主人公は、父の言うことにも一部理解を示しながらも、自分はバクチの面白さを選ぶと言い放ち、自分の生き方を貫きます。

満州での商売での信頼とその先の成功

主人公は、満州での事業を進めていく中で、相手から契約が履行できなくなったと告げられます。
その際、相手の方から「損害賠償は請求しないのか」と問われるが、自分は損害を受けていないのでその必要はないと断ります。
このことが相手に大きな信頼を与え、1年後に満州の別の事業で声がかけられるきっかけになります。
1年後、その事業で大成功し、主人公は満州太郎と呼ばれるようになります。

再起のバネとなる豪壮な住宅

太平洋戦争の敗戦で満州にある資産をすべて失うも、主人公はかたくなに豪華な自宅を手放しませんでした。
その理由は、世間は立派な服を着て、立派な帽子をかぶっているものを尊敬し、豪壮な住宅に住む物に眩惑されるものだと知っていたからです。
その自宅が、その後の人脈をつなぐカギとなり、再起のバネとなっていきました。

人脈と交渉力の重要性

アラビアの石油事業において、これまでの人脈をフル活用し、精力的に事業を進めました。
アラビア人との交渉においては、アラビア語に熟達し、相手の気持ちを理解する通訳を採用しています。
その通訳が、会議で相手が譲らないことに違和感を感じ、誰かに影で動かされていると予想し、その人物を訪ねて説得したことで、交渉がうまくまとまりました。
この話で、相手の立場を想像して理解し、必要な人物に働きかける、交渉力の大事さを実感しました。
最終的に交渉はうまくいき、アラビアで油田の発見と採掘・輸出を進められるようになり、大きな功績をあげた主人公はアラビア太郎と呼ばれました。

おわりに

主人公の山下太郎の人間味あふれる物語にとても引き込まれました。
非常に豪快でリスクをいとわない行動力は、なかなか全てをマネできるものではありませんが、感想に書いたように、商売における大きな学びが多くありました。

本書は当時の描写もかなり詳細に書かれており、読み応えのある作品だと思います。
この記事で興味を持たれた方は、ぜひ全文をお読みいただければと思います。

少し話は変わりますが、西野亮廣さんが書かれた「夢と金」のご自身の解説で、【「遅咲きの偉人」に夢を見るな】というものがあります。
この本の主人公も、若い頃からの努力が少しずつ実を結んで、最終的に世界的な大成功を収めた例かなと思いました。
※私の記事で西野亮廣さん「夢と金」の感想を書いたものがありますので、良ければ併せてご覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。




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