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成長期にケガや体格の差でスポーツがうまくいかない子どもたちへ

私はアスレティックトレーナーとして、成長期に子どもたちの力になりたいと思って活動しています。

恐らくこの記事を対象のお子さんが目にする機会は多くないと思うので、そういったお子さんを持つお父さんお母さんや、指導者の方に届くと良いなと思いながら書いてみます。

小学校から中学・高校までの教育期間は、子どもの身体が大きく成長する時期であり、成長の個人差が大きい時期でもあります。

暦年齢と発育年齢

スポーツ科学の世界では、一般的な年齢を「暦年齢」と呼ぶのに対して、身体的な発育を考慮した年齢を「発育年齢」または「骨年齢」として評価されています。

「発育年齢」は個々のそれまでの身長の記録から現時点での“カラダの年齢”を示したものです。

多くの研究から、最も身長の伸びる時期(最大身長発育速度年齢)、即ち成長のピークは、平均で“13歳”前後と報告されています。

しかし、その個人差はなんと“±2歳”。(標準偏差±1歳)

例えば、暦年齢が14歳=中学2年生の学年での発育年齢を見てみると2歳下である12歳=小学6年生から、2歳上の16歳=高校1年生までの子どもたちが一緒にプレーをしている状況になっています。

つまり、1つの学年には身体の年齢が4歳違う子どもたちが詰め込まれていることになります。

こう考えると、中学・高校の3学年ずつに分けてスポーツを指導することに無理があることが分かります。

特に体格の小さい子の場合

さらには、一般的な基準を外れる子もいますので、2歳の幅よりも明らかに体格が小さい、逆に大きい子もいます。私が研究でご協力いただいた野球チームでは、発育年齢が4歳小さいまたは大きいお子さんはどのチームにもいました。

当然、成長の遅いお子さんは周りと比べて身体も小さく、能力が劣ることが多いです。

暦年齢は中学3年生だけど、発育年齢は小学校6年生に当たるお子さんと実際にお会いした時のことです。

暦年齢としては進路を決めなければいけない時期でしたので(肘の怪我についての相談の兼ね合いで)高校で野球を続けるか聞くと「身体も小さくてパワーがないし、野球も上手くないので辞めようと思う」との答えでした。

「諦めるな!」と言うつもりは全くありません。しかし、今スポーツがうまくいかないのは身体の成長がもう少し先なだけ。「野球が好きなのに上手くいかないから…」と言うことであれば、野球でも、違うスポーツでもチャレンジをして欲しいと願います。

さらには、そんな成長の差を多くの方が知って、子どもにとってより良い選択肢を示してあげられる文化になって欲しいと思っています。

また、この問題は、勝つことが求められるプロ野球や、強豪チームに関わる人こそ考えなくてはいけない問題です。勝利を求めるために選手の選抜をしなければいけない場面があるからこそ、それに漏れる選手の受け皿を考えていかないと、競技人口が減り、長い目で見て自身の仕事が厳しくなる結果になります。

成長期のケガに対しても発育の理解が大切

成長期のケガについても同様に発育への理解が不可欠です。身体の発育が十分でない段階で、過度な運動負荷を与えてしまうと骨や軟骨に対して一生治らない障害が残ってしまう場合があります。

成長期には骨の一部に骨端軟骨(または骨端線)と呼ばれる部位があります。骨端軟骨が増殖することで骨が長く伸びていくことになります。

代表的な成長期のケガとして、膝の骨端軟骨が剥がれてしまうオスグッド病、肘の内側で骨端軟骨が剥がれてしまうリトルリーグエルボーなどがあります。

プロ野球チームでトレーナーをしていると、入団した時点のチェックで肘が変形している、軟骨が剥がれているといった場合が多く、これは成長期の投げすぎが原因です。そのような状態から、症状が出てしまうと選択肢に手術が入ってきますので、選手のキャリアに大きな影響を与えることになります。

子どもが、肩・肘や膝・踵に痛みを訴えた時には病院でしっかりと検査することが大切です。

「成長期のケガや体格の差によってスポーツがうまくいかない子ども」が一人でも減るように。挫折を味わうことなく、チャレンジを続けてくれるように。

身体の発育発達についても情報を発信していきたいと思います。

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