【ブラック企業に勤めていた話】


僕は28歳の頃に営業のスキルを身に着けたくて、東京の営業の会社に転職しました。あえてブラック企業に勤めたくて、その世界では有名なブラック企業を選びました。
面接では「その歳で転職とか遅くない?」とか否定的な事を言ってきます。ブラック企業っぽいですね。「年齢なんてただの数字なんで」と答えました。「この100円のボールペンを僕に10000円で売ってみて」と言われたので、タレントで誰が好きなのかを聞き出し「実は、その大島優子さんがトイレに入る時もお風呂に入る時もずっと握っていたボールペンなんですよ」と答えました。採用が決まりました。
入社日が決まり早速研修なのだが、2泊3日で熱海の施設で研修になり、研修会社がやっているツアーみたいなのに大型バスで行きます。これには他の会社の人たちも同時に参加するので、知らない人ばかり100人ぐらいいました。
バスの中では、根性や努力がどれだけ大事か謎の人が一生懸命語っているビデオを見ます。監視員みたいな人がバスにいて、寝ていると「やる気ないなら帰れ!」と怒鳴られます。マジックが回ってきて、手の甲に「努力ほど素晴らしいものはない」と書かされました。面白くなってきました。2時間弱で熱海に到着。非常に古い施設で、ここで寝泊まりするのかと思うとドキドキしてきました。そこの管理人のおじいさんの挨拶は非常に長く、趣味は「観光客に声を掛ける」事だそうです。
すぐに体育館で研修は始まり、まずはチームがランダムに分けられます。男3女2ぐらいの5人。そして講師が、リーダーを決めろと言うので僕は立候補しリーダーになりました。リーダーは前に立ちます。そこで研修の講師はリーダー以外の人たちに「お前らトップに立ちたくてここに来たんじゃねーのか!こんな簡単にリーダーの座を譲っていいのか!!」と机を叩いてブチ切れます。薬でもやっているのでしょうか、異常なほどに切れます。そしてもう一度チームで話し合ってリーダーを決めろと言います。すると皆やたらとリーダーに立候補します。僕らチームは結局ジャンケンで決め、無事に僕は再選を果たしました。僕は左手でジャンケンすると強いようだ。
次に始まったのは、その研修の心得を大きな声で叫ぶというものでした。「ひとつ!我々はロマンと美学を持って行動すべし!!」みたいなのが6つぐらいあります。それをチームごとに叫びます。監視員みたいな人がチェックしており、合格しないと休憩できません。どんなに大きな声で全力でやっても「お前らそれで限界か!!」と言われ不合格。他のチームは肩を組んで『頑張っている感』を出そうとしたりもしていました。僕らのチームは『気絶しよう』となり、メンバーの男が気絶する事に。彼の迫真の演技のおかげで一番最初に合格しました。それが夕方の6時過ぎです。夕飯まで休憩しようとしていたら監視員がやってきて「お前らこの時間も働いている人がいるんだぞ!!」と怒鳴ってきます。薬でもやっているのでしょうか、意味が分かりませんでした。「仕事ができない人が残業しているんですよ、できない方が悪い」と言ったら「屁理屈言ってんな!!」と言われました。分かりました、この人は完全に薬をやっています。
さて、夕飯の時間です。
もうすっかり怯え切った皆は、率先して講師や監視員の夕飯を机にニコニコしながら運びます。バカバカしく愛おしい光景でした。そして、ご飯は美味しく感じませんでした。味が悪いんじゃないんです。この環境で食べるのが美味しく感じませんでした。夕飯を作ってくれた施設のおばちゃんたちに申し訳なかったです。
夜は大部屋で、男50人でいやらしい話しだけをしました。僕は、主役でした。
2日目は、午前、午後ともにウォークラリーで、それなりに楽しかったです。でもゴールが遅いチームは、「問題解決能力がない!!」と死ぬ程怒鳴られます。小学校の頃にやったウォークラリーがいかに平和だったか分かりました。午後のウォークラリーはもう全力で走っていました。ウォークラリーじゃなかったです。
夜は大部屋で、男50人でいやらしい話しだけをしました。僕は、主役でした。
最終日は、みんなで輪になって、順番に中心に行き、そこでこれからの夢を語るというものでした。もうみんなスッカリ洗脳されているので可愛らしい女の子が「男なんかにはぜってー負けねぇ!!」とか叫び出します。『こっちは男だとか女だとか気にしてないけどな』なんて思って聞いていました。合格しないといつまでも中心で夢を語らせられます。「幸せな家庭を築く」みたいなのを言うと不合格。野心が足りないとのこと。どうやら講師が納得するような夢でないと合格できないようです。僕はゆっくりと落ち着いた口調で「北海道かどこかに広い牧場を買って、そこで裸の女性を放し飼いにして飼います。朝起きたらその中から一人を選んで手籠めにします。僕が仕事に行っている間はその女の子たちは僕の事をずっと褒めたたえるんです。最高だよね。この夢を叶えます」と言いました。薬でもやっていたのでしょうか、よく言ったと思います。僕の夜のいやらしい話を聞いていた男たちは笑いを堪え、女の子たちはザワザワしました。講師は「よし!!」以外は何も言いませんでした。
そして最後の研修項目は、チームで輪になって「相手に感謝の気持ちを伝える」というものでした。平井堅の『瞳を閉じて』がエンドレスで大音量で流れます。感情が高ぶっているのでしょうか、みんな涙を流しながら感謝の気持ちを伝えていました。正直、ドン引きでした。気持ち悪かったです。でもその中で「石神さんの事が男性として大好きです」と言ってきたチーム内の女の子がいました。ことある事に僕にすり寄って来ていたので、うっすら感じてはいました。可愛かったので後日ちょっかい出しましたけど、それはまた別の話なんでここでは話しません。
・・・とまぁザックリこんな感じの研修でした。
ってゆうか、研修でもなかったです。ただの洗脳するための研修でした。会社に言いなりになるような人格を作る感じでしたね。今でもこの研修は行われているとの事だったので、恐ろしいなと思います。
今日はここまでです。
次回は、営業マン時代の仕事の話をしたいと思います。
なかなかブラックでした。

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