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【TV】コンステレーション

Apple TV+のSFスリラードラマ。
Apple TV+ではSF作品中心におさえるようにしているのですが、大学の後輩である野坂尚也が管制官の役を吹き替えているので、吹替で観ました。
以下、後半で多少ネタバレしますが、観る人も少なそうだし、完走する人はもっと少ないかもしれない作品なので、最後まで読んで興味を持ってくれる人がいた方が良いようにも思います。
また最初に述べておきますと、原語で視聴していなくて吹替の出来ははかれませんが、違和感はなく安定したクオリティかと思います。

ISS(国際宇宙ステーション)で悲惨な事故を経験して帰還したノオミ・ラパス演じる宇宙飛行士、またその家族や関係者が、混淆する複数の現実に翻弄されるというのが簡単な物語です。

まず最初の2話ですごいのが、宇宙ステーションの中で事故が起きるとどうなるか、が過去にない迫真性で映像化されている点。
アルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』で描かれていたような事故描写ですが、無重量状態で起きる火災(炎はどっちに向かって伸びる? とか)、ステーション内を自由自在に飛び回る飛行士たちの動き、無重量状態で心臓マッサージをどうやって行うか? など、スケールアップしつつディテールがすごいです。
Apple TV+では『フォー・オール・マンカインド』という宇宙開発もののドラマも配信されており、やはり宇宙での事故の描写はすごかったですね。

また全体を通じて興味深いこととして、主演のノオミ・ラパスがスウェーデン出身であるということで、彼女演じるジョーもスウェーデン人である設定があり、時々スウェーデン語が出てきたり、スウェーデンの極寒の土地でのスリリングなシーンがあったりします。
ジョーの娘、アリスもスウェーデン語が話せたり話せなかったり……? で視聴者を混乱させる描写がポイントだったりします。
Apple TV+の『迷宮のアリス』という、これもまさにアリスが主人公のエロティック・スリラーがあるのですが、主演がアイェレット・ゾラーという『天使と悪魔』(2009年の『ダ・ヴィンチ・コード』の続編、未見)で有名になった俳優です。
ドラマは彼女の出身地であるイスラエルで製作されており、「イスラエルの富裕層ってこんな感じで暮らしてるんだー(先進国はどこも同じだな)」ってわかるという作品でした。
ハリウッドなどから世界的に有名になった俳優の出身国にフォーカスすることで、色々な国に目を向けさせたり、「世界的俳優になることは故国からの離脱を意味しない」とメッセージしたりといった意図がありそうです。

以下はネタバレかも……

ジョーの娘がアリスであるように、「鏡の国」との接触、往還が描かれるわけですが、その原因となったらしいのがCALと呼ばれる実験装置で、これをISSで作動させたことで、量子論的な「多世界」が混乱してくるということが比較的早い段階でわかります。
ただこれが、「鏡の国」とこちら側のような二つの世界だけなのか、三つ以上あったのかはよくわからず、三つ以上あったようにも思いますが、ドラマの着地としては二つの現実が同時に存在することをどう受け入れていくかという話になっていきます。

スリラーテイストが強い作風で、しかもそんなに感じ良い人物が出てこない……
というか、どんな人間にも二面性・多面性があるということがテーマのひとつと思われるので、ほとんどのキャラクターが恐怖や不安におびやかされて感情的になり、共感しづらい行動をとります。
主人公もまたその例外ではないので、割とつらい作りです。
CALを作ったカルデラという科学者が結構良いので(共感しづらさや感じの悪さは他の人物以上ですが)、彼による説明がもっとあって、別の世界に突然行ってしまうことに何かのロジックがあるのか、などがわかりやすければ、スリラーとしてももっと盛り上がったんじゃないかと思いますが。

SFマガジンの2023年12月号に掲載されたグレッグ・イーガンの小説『堅実性』と共通するアイディアだと思われ、小説では観測者の存在が事象の存在を確定することが明らかになって主人公たちが必死で「観測」を持続しようとする話でした。
なのでこのドラマでも、「観測を持続しないと不安定化してしまう」とか説明された方が、観やすくなったんじゃないかなと思いました。

そんな感じで少々つらいなと思いながらEP7まで観て、EP8では一気に話がまとまって非常に面白くなりました。
観やすくする方法は上記の通りあると思うけれども、それをやってもEP8の面白さは出ないだろうとも思いました。
ミステリアスなラストは、次シーズンへのヒキだろうと思う一方、生と死が重なり合っている「シュレディンガーの猫」が表現されているともとれて、量子論SFらしい終わらせ方でもありました。
ノオミ・ラパス、今まで良さがあまりわからなかったのですが、全編必死の形相で奮闘するだけでなく知性や優しさも含めて様々な顔を見せることができる、良い俳優であることもよくわかりました。
短めのシリーズですので観て損はない作品だとは思います。

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