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自己肯定感

今日こんにちSNSを開けば、目にしない日はないほどに現代社会に強く横行している言葉「自己肯定感」。
自らの在り方を積極的に評価できる感情を意味するらしい。

自分は人から「自己肯定感高いね」と言われる。
私と話したことがある人や、私のInstagramやthreadをフォローしている人はご存知かと思う。ナルシズム全開の、自分ベタ褒めな発言をしている。
「自分に自信があって素晴らしいですね」という意味の時もあれば、「おめでたい人ですね」と皮肉で言われている時もあるだろう。

使われているシーンを見るに、世間一般で自己肯定感は「高ければ高いほど良い」とされているようだ(極力人からウザがられない範囲内で)。

現代社会でそんな立ち位置の「自己肯定感」。
高いと言われる私自身はというと、その言葉を基本的に使わない。
自分自身でどう思いますか?と問われれば、高いのだとは思う。

「自己肯定感」という言葉の存在自体には意義があるだろう。
だが私が疑問を抱くのは、主にインターネットメディアで、「自己肯定感を高く持つことが幸せに生きる道だ」というメッセージが強く放たれている現状。
そしてそのメッセージに従順に従い、自己肯定感が低い自分を自己否定して苦しんでいる人や、高めようと奮闘している人の姿だ。

先に結論を述べる。

現代人の自己肯定感が低いのは当たり前だ。

これからその理由を順を追って紐解いていく。

現代社会の特徴

インターネットの発達や"資本主義社会"の加速で、自覚している以上に日々我々は膨大な情報を受け取り、メッセージを刷り込まれている。
その代表格と言えるのがSNSだろう。

”資本主義社会のとても簡単で雑な説明”
国が「お前ら国民、好きなだけビジネス頑張っていいし、好きなだけ買ってね。そうやって経済でこの国を発展させてこうね」と言っている。
なので企業競争によって発展はするが貧富の差が生まれやすい。

そもそも何故、通信量を支払うだけでSNSなんて便利なツールを原則無料で利用できるのか。

そのカラクリは、広告だ。

スマートフォンを人口の大半が手にするようになった現代。
インターネットを介して、これまでよりも高速で、幅広く多くのユーザーに細分化して情報を届けることが可能になった。

自分が生まれ育つ過程で、スマートフォンが普及し始めた人達は思い返してほしい。
テレビ、新聞、雑誌、ラジオにメディアが限られていた時代と比べて、「無料」で受けられるサービスが格段に増えてはいないだろうか。

大小差はあれど現代では、インターネットを使う全ての人が広告源となり得る。
モノやサービスから直接利益を得るよりも、広告ビジネスを組み込んだり、広告効果を狙った無料のサービス提供が、結果的に遥かに高い利益を生むケースがある。
その仕組みを大きく支えているのがSNSだ。

では何故、そんな現代を生きる我々の自己肯定感が低いのが当たり前なのか。

資本主義が加速する我々の社会は、あるタイミングで購買欲と販売の立ち位置が逆転した。

「○○が欲しい」という欲求が生まれた所に情報が届き、それを購入する機会を得る。
だったはずが、情報によって「○○が欲しい」状態にさせる。そして購入へ導く。

ヒト1人に必要なモノや飲食物、サービスの量など限られている。
それにただ合わせて商売をしていれば、売上はいずれ必ず頭打ちする。
元は必要な人に必要なサービスを届けるための情報であり広告であったのだろうが、今となってはさらに欲しがらせるための装置だ。

オフラインの場になるが思い浮かべて欲しい。
電車に乗ると壁面には、あなたにあらゆる「足りない」を植え付けるメッセージで溢れている。

脱毛、ダイエット、英会話、筋トレ、二重手術、豊胸、歯列矯正、ホワイトニング、車、持ち家、旅行。

「あなたが幸福になるにはこれが足りませんよ」とありとあらゆる工夫を凝らして訴えてくる。

ここでSNSが抜群の働きをしてくれる。

誰もがアカウントさえ持てば自分の何かしらをコンテンツとして発信することができる。
加えてそこに「いいね数」と「フォロワー数」という、まるであなたの存在価値を数値化したと錯覚させるかのような機能が搭載されている。

人々は、自身を華やかに切り取ってそこに載せる。可能な限り、いや、時には無理をしてでも「いいね」な自分を演出する。

そうして、ネットがなければ存在すら知らなかったかもしれない人たちと数字や華やかさを競い合う。

大衆が勝手に、人生で激しく競争し始めた。
企業やメディア、資本主義は大喜びである。

悪者のようにばかり書いているが全否定したいわけではない。日本が世界一と言える生活インフラを実現しているのは紛れもなく資本主義の発展の恩恵である。
SNSができたおかげで様々なビジネスや情報発信の間口が広がったりして、人類に健全な恩恵をもたらした側面も大いにある。
利用されるのではなく、利用しろ。と言いたいのだ。

自己肯定感の話に戻る。

メディアで訴える「自己肯定感を高く」は、「常に自分に『いいね』を押せる自分になろう」と、私には聞こえる。
まあ、それはいいのかもしれない。

ただ、私は言いたい。
あなたが幸福でない理由を自己肯定感の低さだと自覚し、「それを高めるにはこれが必要だよ」というメッセージにのっとって努力しても、貴方が目指す「自己否定しなくていい自分」は手に入りませんよ。と。

なぜなら、そもそもそのメッセージはあなたを永久に「足りない」状態にしておくためのものだから。
満足すればあなたはもう、金を使って何かを克服しようとしない。企業は、メディアは、そんな失態を犯さない。
広告戦略の上でどれだけ走り続けても、その先には新たな「足りない自分」が待ち続けている。

じゃあどうすればいいの?

私は「自己肯定感」という言葉を基本的に使わないと言った。そんな私が使うのは「自己受容」である。

この言葉を私は二村ヒトシの著書「なぜあなたは『愛してくれない人』を好きになるのか」で学んだ。
あなたがなぜ、傷ついてるいると、傷つくと、分かっていながらも、そうさせる男に恋をしてしまうのか。
あらゆるパターンを細かく分けて紐解いてくれる。
愛されたいと悩む人には、女性に限らず必読の恋愛、そして人生の指南書と言える一冊だ。

自己「肯定」、自己「否定」、自分に対して下す「良し悪し」。
「肯定」を追う限り、すぐ後ろには常に「否定」が待ち構えている。

良し悪しを判断するということは、何かしらの物差しとなる基準がある。
まず必要なのは、あなたがあなたを肯定なり否定なりしているその物差しを、俯瞰ふかんして見ることだ。

まるで全ての物事や事象、あなたの状態には絶対的な「良し悪し」が存在しているかのように思わされるが、そんなことはない。

乱暴だが極端な話、殺人行為ですら戦争になれば英雄になる。

常にその物差しはどういった前提条件で、どの立場からみての良し悪しなのか。を理解することだ。評価には必ずそれらが存在している。

少し個人的な例を出そう。
私のまぶたは生粋の一重ひとえだ。一重すぎてもはや奥一重おくひとえだ。
学生時代は二重瞼の甘い顔立ちに強く憧れた。一時期寝る時だけアイプチを貼ってみたりもした。
だがアメリカ留学中、20歳でファッションモデルという仕事を始め、海外で活動したり、多様な人種と並んで立つと、私の甘みを一切持たない目つきは強力な武器となり魅力となった。
だからその武器を磨こうと、目だけでなく顔面全てからシャープな印象を強く与えるために、必要な所まで痩せて維持している。
ここで戦ってみたいと、自分の意思で決めたから。

学生時代に持った価値観を一旦横に置き、自分が評価される場所を、自分を評価する場所を自分で決めた。

あらゆる物差しを一度自分自身から取り外す。
そうするとそこには、良いでも悪いでもない、肯定も否定もない状態がただ存在する。
その状態をただただ受け入れることが「自己受容」だ。

自分で自分を受け入れるには、評価される側の自分の向上を目指すよりも前に、評価する側の自分が自分に押し付けている物差しに目を向けるべきだ。

そうしないと、無自覚に誰かに選ばされた物差しの上で「いいね」を稼ごうと奮闘してしまう。それでは自分で自分に「いいね」と言えない。

自分ではない誰かの、どこかの企業の、気付けば所属していた社会の、都合で植え付けられた物差しで、無意識に自分を測っていないか。

誰かの金儲けに、振り回されてはいないか。

それに気付くためには、あなたの周りに溢れている情報に、どれほど誰かの金儲けの都合が潜んでいるかを知り、考えることだ。

そしてどんな物差しの上で自分を肯定したいのか自分で決めるために必要なのは、世界を広く知ることだ。
これまで知らなかった価値観に触れて、衝撃を受けることだ。

そのためにも私は読書をしている。
知らないことを知ることは、無自覚に自身にこべりついていた価値観を自覚させてくれる。
自覚したらそれを一旦剥がして手に取って、中身を調べてみたりする。
そのまま中に戻したり、新しい何かを加えたり、一度捨て去ってみたり。
そうするためにまた本を読み、考える。
そうして、持つべき価値観や、持ちたい価値観を自分で決める。

そしてもう一つ、なぜ本なのか。
本を読むのは、めんどくさくてとても効率が悪い。
こんなに吸収するのに時間と労力がかかる情報伝達手段は他にない。
だからだ。
ビジネスとは、金儲けとは、効率と合理性の塊だ。
効率が悪くて、無駄が多い場所には、あまり誰かの金儲けの都合が入らない。

だから私は、本が大好きだ。
無駄が多くて、効率が悪いものを楽しむ時間が大好きで、そんな自分も大好きだ。

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