コールセンターにおけるおもてなしの心、よそおい
以前、おそらくもう10年ぐらい前の話で恐縮ですが、日産(日産自動車株式会社)のCMで、「“よそおい” “しつらい” “ふるまい” 3つすべてがそろって、おもてなしとなる」というものがありました。
※残念ながら動画は見つかりませんでした。
あぁこれは良い表現だなぁと思ったので、少し強引ですが、独自の解釈でこの3要素に電話対応を当てはめてみたいと思います。
電話対応業務におけるよそおいとは
広辞苑無料検索サイトでは、「よそおい」を以下のように説明しています。
対面の接客であれば当然、身だしなみに気をつけますよね。男性であれば髭を剃り、女性であれば清潔感のある化粧をする。髪を整え、折り目のついた服を着てお客様に向かう。では向かい合うことのない電話におけるよそおいとは、何か。私は言葉遣いだと考えています。
通じればいいじゃないか、という言葉をもってお客様に接するのは、ネクタイなんか歪んでたって窓口業務になんの問題があるんだ、という姿勢と同じでしょう。
ネクタイがだらんと歪んだ銀行員が窓口に現れたら、さぁあなたはその銀行に大切なお金を預けることができますか。客が来店してから慌てて化粧をする販売員を見て、あなたは楽しく買い物できるでしょうか。
どのような支度をしておけばよいのか
では電話で支度をするのは何か。業務知識だけを身につけておけば良いと思っている人も多いかもしれませんが、正しい日本語、適切な日本語を使えるようになることこそ、更なる前提条件であると考えます。
・ビジネスシーンに相応しくない言葉遣いを避け、自分の言葉遣いとブランドイメージを一致させておくこと
・人や状況によって解釈の異なる曖昧な言葉を避けてご案内できるよう正確な言葉を用いる訓練をすること
・状況や感情を適切に表現できるよう言葉のセンスを磨くこと。正しい敬語を身につけお客様に敬意を伝えられるようになること
これらのことは、電話に出てから考えるのでは間に合いません。お客様が来店してから化粧を始める接客員がいないように、普段から正しい言葉遣いを身につけておきましょう。
電話における言葉遣いと対面接客における服装が結びつくようには思えないかもしれません。しかし電話という視覚を遮られたツールでは言葉と声で全てが表現されます。
言葉からイメージしてみましょう
例えばあなたが住宅展示場のコールセンターに電話したとして、返ってくる言葉を読み比べ、どんな人が電話の向こうに座っているかイメージしてみてください。
担当者A. 「えっと、ご拝見のご希望っすね!じゃ、ご予約っすよね!」
担当者B. 「物件をご覧になりますか?ありがとうございます。では予約をお取りします。」
ジーンズにTシャツ姿の若者と、アイロンの効いたワイシャツを着た人の二人がいるとして、AとBの応対はどちらの人かと聞かれたら、よほどのひねくれ者でない限り、Aがジーンズ姿でBがワイシャツ姿と答えるのではないでしょうか。
電話では何を着ているかは見えませんから、実際にはどんな格好であっても構わないのです。Bの人がダメージジーンズを履いていても構いません。Aの人が、高級な背広を着ていても意味がありません。ただ、言葉に制服を着せなければなりません。
さて、Aは極端かもしれませんが、実際に多いのは下記のような言い回しです。
馬子にも衣装とは言うものの、着こなしがぎこちないというか、制服かもしれないが表と裏が逆になっていても気づかないような話し方だとは思いませんか。
にわかコールセンター弁はボロが出る
語尾に「どすえ」とつければ京都の舞妓になったような気になるかもしれませんが、所詮は“気”になっただけのこと。身についているかどうかはすぐ分かるものです。着物を着慣れない人がすぐに着崩れしてしまうように、馴染んでいない言葉遣いはすぐに“ボロ”が出ます。
普段から着物を着ているんだろうな、サマになっているな、板についているな、と感じさせるような言葉遣いを目指していただきたいと思います。
ちなみに住宅展示場では着物を着ているんだろうなと思わせるような言葉遣いは不要です。ビジネススーツっぽい話し方でお願いします。
では、また。
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世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。