見出し画像

お持ちになり~気になる敬語#32

友人から、蕎麦屋に分かりづらい文章があったと教えてもらったのがこちらの画像です。

食券は自動券売機で購入します。
その券売機にこの掲示が貼ってあったら、皆さんならどうしますか?

友人はどうしたかというと、食券(の半券)を店員さんに渡そうとしました。そうしたら店員さんから、渡す必要はないから持ったまま席で待っているように言われたというのです。

「だったらこんな説明を書くな、分かりづらい!」というのが友人の主張です。

なるほど、良い事例です。
敬語はたしかに間違ってはいません。

「持つ」という動詞を”持つ行為をする人を立てる敬語”にするなら「お持ちになる」です。

しかし、憤る友人にも理はあります。

たとえば「記入済みの申込書をお持ちください」と言われたら、「持ってきて渡す」ところまでを指します。

別の例として、”持つ行為をする人を立てず、受け手を立てる敬語”で言えば、「コーヒーをお持ちします」と言うとき、頂戴って言われるまでコーヒーを手に持ち続けているんだろうなぁと解釈する人はいません。こちらも「持ってきて渡す」ところまでを指します。

そう考えると、友人は敬語が分からないから掲示の意味を取り違えたのではなく、敬語が分かるからこそ、その指示に素直に従おうとしたにもかかわらず拒否され不要と言われたのです。憤る気持ちも分かります。

一回経験すれば分かるとも言えますが、一回分かればもうこんな掲示は要りません。初めての人にこそ必要な掲示に解釈が分かれる書き方をされては、せっかく敬語を使ったのに配慮になりません。

では、どのように書けばよかったのでしょうか。

正しい書き方は一つとは限りませんが、私なりに、例を挙げてみます。
いかがでしょうか。

お客さまへ
食券をお持ちのままお席でしばらくお待ちください。

それでは、また。

世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。