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「お客さまが気持ちよくご利用できない」~気になる敬語#33

以前海外旅行に行ったとき、トイレが見つからず、ホテルのトイレに戻れる範囲でしか出歩けなかったことがありました。日本に帰ると、大きな商業施設にはほぼトイレがあり、駅にもトイレがあり、公園にもトイレがあり、これは大変に便利なことなのだと再認識しました。
そのように便利な日本のトイレですが、いたずらされているのをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。そこには当然トイレを掃除する方もいらっしゃるわけで、通常の業務範囲を逸脱していれば、掃除もできないということがあるやもしれません。

そんなトイレで見つけた気になる敬語がこちらです。

皆さん、トイレはきれいに使いましょうね

気持ちは分かります。配慮も伝わります。
でも、残念な敬語が一つ混じっていました。

それが、「ご利用できない」です。
「ご利用できない」という敬語はあります。ただ、それは利用する人本人ではなく、行為の受け手を立てる敬語です。では、ここに登場している人物は誰でしょうか。トイレを乱雑に使うお客さまと、次のお客さまです。そして、気持ちよく利用できない(=行為の主体)は次のお客さまですから、行為の受け手は、もう一方のトイレを乱雑に使うお客さまという解釈が成り立ちます。

つまり、こうなります。

トイレを乱雑に使うお客さま > 次に使うお客さま

※ 不等号「 > 」は、どちらが目上かを表す記号としてご覧ください

文章で表すなら、こうなります。

もちろん、トイレのご利用が乱雑なお客さまのほうが大切ですよ!それは次に使用されるお客さまも分かっていらっしゃることです。

本当にこれは、この告知を書いた人が表したい人間関係でしょうか。
乱雑に使う人も大切なお客さまであることには変わりないと思いつつ、当然のことながら乱雑に使わないお客さまも同等かそれ以上に大切に思っているのではないでしょうか。

であれば、次に使うお客さまにも敬意を払う言葉を使わなければなりません。

それは、「ご利用になれない」です。

書き直すと、下記のようになります。

一部のお客さまによるトイレのご使用が乱雑になり、次のお客さまが気持ちよくご利用になれない状況が発生している状態でございます。

いかがでしょうか。
それでは、また。



世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。