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『その「宗教」は本物か』~読書感想文#32

もしヒトラーが変えられたら六〇〇万人のユダヤ人が犠牲にならなくて済んだわけでしょ。プーチンが変えられたら、ウクライナの戦争もすぐに終わりますよ。人が変わるってことは、殺すよりも大事なことですよね。

p.161

この本の著者は、旧統一協会内部において「サタンだから絶対に会ってはいけない」とされているという和賀眞也牧師。

冒頭の言葉は、この本の共著者であり、元統一協会員である花田憲彦牧師との対談の一部である。

人を変えるというと、すわ洗脳かと思われるかもしれないが、この牧師の考えは全く違う。

統一協会に文句があるなら修練会に出て『原理講論』を学んでから言えと言われれば修練会に参加し、せっかく親が苦労して連れてきた統一協会員が逃げたいと言えば「逃げるんだったらこっちに行ったらいいよ」と教えてあげる。この牧師には洗脳なんて縁がない。

昔、統一協会の勧誘に、寝ている友人を布団ごとぐるぐる巻きにして修練所に連れていき、隔離された状態で強制的に講義を聞かせる「す巻き」という方法があったというのは有名な話だ。
一方の統一協会を辞めさせる反対牧師にも、親などに拉致監禁を勧めるものがあったらしい。

しかし和賀牧師は、どのような崇高な目的のためであれ、拉致監禁を認めない。統一協会員を責めることもしない。

誰一人取り残さない、たとえ加害者とされる人であっても

私はこの本を読んで、先日参加したオンラインイベントの主催者が言っていた言葉を思い出した。その団体とは、NPO法人アクセプト・インターナショナル。そして、その言葉とは「誰一人取り残さない、たとえ加害者とされる人であっても」。それは、「排除するのではなく、受け入れる」という考え方である。

この団体は「やられたらやりかえす(武力)」ではなく「受け入れる」ことで、テロを止め、紛争を解決するために活動している。

テロは怖い、テロリストは私たちとは違う人、と排除することはテロを助長する。

幸せな独裁者はいない

毛沢東、ヒットラー、ポルポト、スターリン……。
独裁者のせいで、何百万、何千万の命がゴミのように捨てられてきた。
自らの手で虐殺はしなくとも、多くの人を不幸にしてきた文鮮明や韓鶴子も同じだ。
しかし、彼らのうちの誰か一人でも心の底から幸せをかみしめて日々を過ごした人がいるだろうか。

もちろん、人の心の中は分からない。質問すれば「幸せだ」と答えるのかもしれない。けれど、人を殺し、あるいは人を不幸に突き落として心安らかにくつろげる人などいないことは、自分の心に照らしてみれば明らかだ。

ロシアに制裁を加えるのではなく、プーチンの幸せを願う。
そんなバカがいるなら、私もそっち側の人間になりたい。

そう、思った。

世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。