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ご逝去致されました~気になる敬語#30

師走になって、クリスマスや年末に向けて忙しいときに暗い話題で申し訳ないのですが、今回の気になる敬語は、町内会の掲示板に貼られていた訃報から。

私の記事を毎回読んでくださっている方ならもうお分かりかと思いますが、「ご逝去致され」はいろいろ間違っています。

間違いの中身

①「逝去」は既に敬語

主体を立てない言い方(̞低める意味はありません)が「死去」であるのに対して、「逝去」は立てる敬語です。
したがって、これ以上敬語を加えなくても、敬意は表されます。

②動詞の前に「ご」、後に「する」があれば付加形になる

「致され」は「致す」の受身形です。「致す」は「する」の敬語です。
つまり、「ご逝去致され」には「ご逝去する」が内包されています。
そして「ご~する」は「~」する人を立てず、その行為の受け手を立てる敬語です。
もちろん「逝去」という行為に受け手などいません。

③「致(す)」は立てるべき対象には使えない

いたす」は聞き手や読み手を立てる言葉ですが、それはあくまでもその主体(この場合は亡くなった人)が聞き手や読み手よりも目下、少なくとも同等である場合に限られます。
例えば、「当方で致します」「彼が致しました」と書かれていたならば、書き手よりも読み手のほうが目上であるという意味を表すと同時に、読み手よりも「当方」や「彼」のほうが目下であることを表します。
したがって、「ご逝去され」と書いてしまっては、読み手よりも亡くなった人のほうが目下ですと言っていることになります。
おそらくは、書き手の意図とは異なっているのではないでしょうか。

④「いたされ」では立てたいのか下げたいのか分からない

「致す」はその主体を立てず、かえって下に置く敬語です。
一方、「来られる」「開けられる」などの受身形はその主体を立てる敬語です。「致され」はその受身形です。
ならば、「致され」は下に見たいのでしょうか。それとも立てたいのでしょうか。これでは何をしたいのか分かりません


たった一言の中にこれだけ問題が詰まっているので、少し説明が駆け足になりました。分かりづらかったかもしれないので、一言でまとめるとこうなります。

「ご逝去致され」は四重敬語

二重敬語は間違い、ということをご存じの方は多いと思います。
それが、今回は四重敬語になっています。
それも、立てる敬語と下げる敬語の双方が混じっており、書き手の意図がつかめない言葉遣いです。

間違って二重敬語を使うにしても、せめて立てる方向で「ご逝去になりました」であれば少なくとも故人を立てようとしている姿勢は間違いなく伝わるのですが……。

なお、正しくは「逝去されました」もしくは「逝去なさいました」と言います。

念のため申し添えると、葬儀会社のホームページに例文として「ご逝去されました」が紹介されているかもしれませんが、間違いです。

重ねてご案内申し上げます

さらに重ねてご案内申し上げると、「重ねて」は忌み言葉です。
この訃報の文末に「重ねてご報告申し上げます」とありますが、「併せて」「加えて」などと言葉を換えたほうがよいでしょう。
敬語とは関係ありませんが、補足まで。

それでは、また。


世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。