「お諮りをいたしたい」#気になる敬語13
本日は、某政治家の気になる発言を取り上げます。
文脈としては、コロナの対策について専門家の意見を聞きたいという主旨の発言です。
諮るとは
諮る(はかる)とは、他人に意見を求めたり、相談したりすること。(Weblio辞書より)
①不要な「を」
政治家からよく聞く言い回しのように思います。
「こちらにお示しをしているとおり」「ご説明をいたしたく」などと言葉の途中に「を」が入る言い方です。
言葉の途中に、と書いたのは、「お~する」でひとまとまりの敬語だからです。
「(注文を)お受けする」「(食事を)お作りする」などと使い、行為者ではなく行為の受け手を立てるときに使います。
(例の場合だと、受注者ではなく発注者を、作り手ではなく食べ手を立てるときに使う)
もし、この政治家が意見を聞きたい専門家を立てようとしてこのような言い方をしたのであれば、「お諮りしたい」「お諮りいたしたい」と言うのが正しい使い方です。
②「諮る」のは目上から目下
「他人に意見を求めたり、相談したりする」だけなら「聞く」「質問する」「相談する」でもいいはずですが、「諮る」が使われるのは相談する先が個人ではなく会議体の場合で、しかも自分側にその会議体を設置したり招集する権限がある場合に使われます。
矛盾した言い方をする意図は
つまり、この発言は「諮る」という自分が目上であることを示す言葉を使いながら、「お~する」と相手を立てる言葉を使うという、矛盾した発言です。
この言葉から受ける印象は責任回避的にその場をごまかす心理状態です。あくまで私の主観ですが、言葉にしてみると以下のようになります。
何を言うかは誰かが決めてくれるかもしれませんが、どう言うかにはその人の考え方や姿勢が表れます。
私には、こういう言い方をする人が国難に臨みきちんとした対策をしてくれるようには、残念ながら思えません。
もちろん不適切な敬語は、文法を知らないで使っていることが原因です。知らないことには正しい敬語を使いようがありません。そして、誰かに聞こうにも教えてくれる人が周りにいないのが、多くの人が置かれている現状です。
私も周りに聞ける人がいなくて敬語を身につけるのに苦労しました。そして、言葉はその人の印象を左右します。そこで、こんな記事を書いております。
ご自身の敬語が気になる方は、どうぞ参考になさってください。
それでは、また。
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。