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19-20ラ・リーガ レアル・マドリード対バレンシア レビュー(2020/06/18)

前回は初めて記事を出しましたが、多くの方に読んで頂きました。ありがとうございました。

あくまで大学のサッカー部の一員として自分の分析力を上げるために始めたもので、完全に初心者なので、もちろん発信していきたいですが「いやそれは違うだろ」と思うようなこともあるかと思います。ご理解下さい。では、分析していきたいと思います。


戦前の予想

第29節、アルフレッド・ディ・ステファノスタジアムにバレンシアを迎えた一戦。今季はリーガの前半戦だけでなくスーペルコパでも対戦しており、それぞれラストプレーでのクルトワのヘディングからベンゼマの劇的同点弾、クロースのCK直接弾が決まっており記憶に残っている人も多いだろう。

バレンシアは4-4-2あるいは4-1-4-1で低いラインを敷いて深く守り、スペイン屈指の司令塔パレホを起点として今季ブレイク中のフェラン・トーレスやエースのロドリゴ中心の縦に速い攻撃が特徴的なチームである。リーガ前半戦ではアザールやマルセロが不在でサイドからの攻め手を欠き、ベンゼマ、ロドリゴ、イスコの前線にナチョがひたすら放り込むという地獄のような試合展開に。攻めあぐね、オープンな試合展開になってきた試合終盤に失点した(カゼミーロはこの試合温存されていた)。一方、スーペルコパではMF5人を採用する4-3-2-1の布陣で挑み、こちらはクロースのゴラッソで先制できたおかげで、その後はのらりくらりとMF陣がパスを回して試合をペースダウンさせオープンにさせない試合展開に持ち込み、相手が得点を奪いに前に出てきたところをうまくカウンターで突くことができた。

今季のレアル・マドリードはリーガにおいてHT(ハーフタイム)時点でリードしている試合が10試合あり、その全てで勝利している。バレンシアは深く引いて守ってくることが予想され、それに対しマドリーとしてはどう(特にサイドを)攻略しいかに早い時間帯に得点を奪えるのかがポイントと言えそうだ。


配置の確認

VSバレンシア画像①

両チームのスタメンとフォーメーション。バレンシアは予想通り4-4-2、CBには怪我のガライ、ガブリエウの代わりに20歳の新鋭ギジャモンとマンガラが入った。マドリーは試合前にイスコが怪我によりベンチ外に。カゼミーロの温存やカルバハルの怪我も報じられたが、両者ともスタメンに入った。マドリーは4-3-3あるいは4-2-3-1にも見える形で、バルベルデが右に入ったものの前線4枚は非常に流動的にポジションを入れ替える。

VSバレンシア画像②

バレンシアはやはり低いラインで4-4-2のブロックを敷いてきたので、ハーフラインまでの前進は容易く、おおよその噛み合わせは上の通りである。

個人的にキーとなりそうな選手だと思ったのはモドリッチだ。引いて守る相手に対して2ライン間、そしてHS(ハーフスペース)にポジションをとり、良いタイミングでボールを引き出して前を向き、創造性を発揮するという点においてマドリーはこの選手に大きく依存している。このバロンドーラーがどう攻撃のタクトを振るうのか注目したい。


前半/攻撃〜ギジャモン狙い撃ち〜

まず、バレンシアの守備は基本的にゾーンで、マドリーの中央でのパス回しにはそれぞれ中盤の選手が自分のゾーンでパスを受ける選手に対して縦のコースを消しながら前に出る。前線の選手のポジションチェンジはマークを受け渡しながら対応する。大きな特徴としては、縦方向に圧縮し4-4の2ライン間の距離を狭く設定しているため、仮に2ライン間にボールを通されてもCBとVo(ボランチ)ですぐに挟みに行くことができるという点である。よって中央への縦パスには対応可能であるから、中盤の横幅はある程度の距離が保たれており、マドリーのサイドチェンジでボールが高い位置のメンディやカルバハルに渡ったとしてもSHがすぐに寄せることができる。SHは時に最終ラインにまで入ってチャンネルを埋める。

マドリーは前節のエイバル戦同様左サイドを中心に攻撃を組み立てる。アタッキングサイドは左:42%、中央28%、左30%であった。しかし左サイドを崩し切るといったシーンは少なく、相手がサイドに寄ったらそこからの右サイドへ素早く大きなサイドチェンジをし、SHがスライドしてくる前にシンプルに、あるいは後ろに下げたボールをHSからワンタッチで、ファーへのアーリークロスを送ってチャンスを狙う。相手のRCBギジャモンは身長180cmとLCBのマンガラと比べてそこまで高くないため、そこに185cmのベンゼマをぶつけようということだろう。実際前半に確認できたものでも5、9、14、30、31、38、40、44分にそのどちらかの形からクロスが上がるなど、ジダンの意図が見て取れた。

例えば14分のシーン。

しかし、この日多くのクロスをあげたカルバハルや他の選手もその精度を欠き、またギジャモンも落ち着いたクリアを見せるなど、なかなかこの形からシュートを打つことはできず。右サイドからコンビネーションで崩すことを試みるも、この日右に入ったのはバルベルデで彼はドリブル突破を得意とする選手ではないため、また前述のように相手SHがすぐに寄せにきてセットされてしまうこともあって、結局前半は後述するハイプレスからのショートカウンターでしか大きなチャンスは作れなかった。痺れを切らしたラモスが前線に上がってくることも。


前半/守備〜オールコートマンツーマン〜

バレンシアの攻撃の狙いは非常にシンプルで、奪ったらスピードのあるトーレスやロドリゴがマドリーの最終ラインの裏に走り、そこにロングボールを送る特にロドリゴは落ちてきて攻撃の起点となるのも斜めに走り出す動きも上手い。カルバハルが高い位置をとることにより開けていたスペースに飛び出して13分に決定的なシュートを放ち(クルトワがわずかに触れて事無きを得た)、20分には彼がリンクマンとして中盤からサイドに展開した後ゴール前に走り込んでネットにシュートを突き刺している(VARで取り消し)。前半の彼は危険な存在だった。

バレンシアのビルドアップ時はマドリーはオールコートマンツーマンによるハイプレスをかける。前線が流動的であるから、それぞれの選手が近くの選手を捕まえる。CLマンチェスター・シティ戦1st.legと同じやり方だ。コングドビアがボールを受けに落ちてくるが、モドリッチやクロースが激しく前に出て前を向かせない。これはマドリーのCB、Ac(アンカー)がヴァラン、ラモス、カゼミーロという対人無敵トリオだからこそ為せる戦術である。彼らが「質的優位」を保証し、相手にロングボールを蹴らせて回収するのだ。11分には高い位置で奪ってからのショートカウンターでアザールが決定機を迎えるも決めきれず。

VSバレンシア画像③


後半〜復活〜

前回同様、前半との変化に着目することにしよう。後半開始からマドリーはより一層ハイプレスの強度を高める。前線の選手は相手がGKまで下げたらCBをカバーシャドウで消しながらGKまでプレスをかけに行く。

前半は右からの単純なクロス一辺倒で手詰まりとなっていたマドリーの攻撃だが、明らかに変わったところが見られた。チャンネルへの動きである。51分には立て続けに右サイドでアザール、モドリッチがチャンネルランからサイドを攻略し波状攻撃を仕掛け、54分には左サイドでメンディがインナーラップからチャンネルに飛び出す形が見られた。その後もメンディは内と外を使い分けながら効果的に攻撃に絡んで行く。前半にこのようなシーンは25分の一つだけ(アザール)だった。この変化がジダンの指示なのかどうかはわからないが、そもそもスーペルコパの得点はバルベルデのチャンネルランから生まれており、ここが狙い目なのはわかっていたはずであるから、前半からやれという話である。

54分のシーン。

マドリーはチャンネルランとシンプルなクロスを織り混ぜた攻撃を行うようになり相手に的を絞らせないチャンネルを意識してバレンシアはDFラインをさらに深い位置まで下げざるを得なくなり、そうなってくると2ライン間にスペースができる。すかさずそこを使うのがモドリッチである。バルベルデ、カルバハルと右サイドで三角形を作りながらテンポ良くボールを引き出し、中央、バイタルへの侵入を試みる。ミドルシュートからもゴールを狙う。

2ライン間を締めようと相手の中盤ラインもずるずると下がり、マドリーは完全に相手をエリア付近に押し込んでハーフコートゲームを展開。こうなってくるとバレンシアは奪ってもゴールまでの距離が遠く、無理にクリアしたボールをカゼミーロやラモスがしっかりと前で弾いてマイボールに。得点は時間の問題といった感じである。

結果的に得点は相手のパスミスからの速攻で生まれたが、それもマドリーが押し込みボールを動かして相手を疲弊させたことが一つの要因であろう。演出したのはモドリッチの必殺アウトサイドスルーパスである。存在感なしと酷評した某バルサ贔屓スポーツ誌は本当に試合を見ていたのだろうか

VSバレンシア画像④

バレンシアにとっては、少しでも勢いを取り返そうと疲弊した前線の選手を交代(ゴメス→ガメイロ、トーレス→ゲデス)させた直後の失点となってしまった。

そしてついに72分。マルコ・アセンシオがおよそ1年ぶりに公式戦のピッチへ。全マドリディスタが待ちわびた瞬間であり、久しぶりのプレーがどんなものか・・・え?点を決めていた。CKのこぼれ球から瞬時にスペースにポジションをとり、難しい球を左足ボレー。実はこれはアセンシオの得意な形であり、2016-17シーズンのCL決勝ユベントス戦のダメ押し弾もこの形から生まれたものだった。彼はスペースを見つける目を持っている。全マドリディスタ号泣である

と、アセンシオの復活弾が注目を浴びているが、アシストしたメンディは一瞬の加速で左サイドをちぎった。彼には1対1の状況で必ず剥がしてクロスを上げきるスピードとパワーを持っており、普通にバケモン。CKがこぼれたとき「あ、仕掛けるぞこれ」と思ったし、彼がこの形で阻止されたシーンを見た記憶がない。

バレンシアは前に出ざるを得なくなり、アセンシオ登場の数分前(70分頃)からよりオープンな展開になっていく。ここで立ちはだかるのはカゼミーロ。相手を危険なエリアに入れさせず、むしろ間延びした相手にカウンターからさらにレアルのペースに。強い時のマドリーである。

最後はカゼミーロの超絶タックルからのカウンター、クロースのパスを受けたアセンシオの優しいパスをベンゼマがおしゃれなトラップからボレーで3得点目。後半は相手を寄せ付けず、まさに完勝であった。


試合結果

レアル・マドリード 3-0 バレンシア
カリム・ベンゼマ(61、87分)、マルコ・アセンシオ(74分)


出場選手

クルトワ:13分の大ピンチやコングドビアのミドルをスーパーセーブで凌ぐ。
カルバハル:クロスの精度がイマイチ。献身的な戻りは良かった。28分には単独突破。
ヴァラン:出るのか出ないのか中途半端な対応もあったが無失点に貢献。
ラモス:彼に3発も蹴りを入れる度胸を見せたイ・ガンインは只者ではない。
メンディ:前節と違い左で起用され改めて価値を証明。トーレスにもラモスと良い距離感を保ちながら落ち着いて対応。
カゼミーロ:カードをもらわなかったのでソシエダ戦で起用可能。彼なしのマドリーは考えられない。
モドリッチ:中断明けから好調を維持。運動量もボールタッチも見事。
クロース:チーム最多のパス数113本を記録。
バルベルデ:引いて守る相手に対し存在感を出せず。前線への飛び出しは鳴りを潜める。
ベンゼマ:アセンシオにあげたいところだが彼がMOMだろう。3点目は圧巻。
アザール:2試合続けてアシストを記録。もっと仕掛けても良いと思う。
アセンシオ:復帰戦わずか20分で1ゴール1アシスト。持ってる。
ヴィニシウス:カウンターからのチャンスでアセンシオへのパスを選択。優しさを見せる。
ジダン:後半の内容を前半からやってほしかった。交代枠を3つも残したのは謎ムーブすぎる。


データ提供元:https://www.whoscored.com


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