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19-20ラ・リーガ レアル・マドリード対エイバル レビュー(2020/06/14)

自己紹介

軽く自己紹介をします。東京大学ア式蹴球部のきのけいです。5月に主に試合分析、データ分析を担当するテクニカルスタッフに転向しました(今年2年で、1年の頃はプレイヤーをしていました)。

個人的なア式での活動としてはスカウティングというより試合データの可視化から分析、そしてフィードバック、あるいはカタパルト等から得られるデータの加工処理に力を入れていこうと考えていますが、無論戦術に精通するに越したことはないので、完全に趣味の領域ですが試合分析の練習としてこれから定期的にレアル・マドリードの試合の分析記事を書いてみようかなと思っております。マンCとかの方が良いかなとは思いましたが、やはり好きなクラブの方がモチベ上がります。

ロナウドとカカが移籍したシーズン(小6くらい?)からマドリディスタです。本格的に試合を見始めたのはデシマを達成した2013-2014シーズンで、毎シーズンほぼ全試合見ています。セルヒオ・ラモスが好きです。

最初の記事では再開を果たしたリーガエスパニョーラ第28節エイバル戦○3-1を分析していきます。


配置の確認

まずはスタメン。中断明けのこの試合では両WGに誰が起用されるか注目が集まっていたが、怪我明けのアザールとロドリゴが起用された。あとは大体いつも通りの布陣。バルベルデとメンディではなくベテラン二人が起用された。

VSエイバル画像①


前半/攻撃(ビルドアップ〜崩し)

エイバルは守備時4-1-2-3のような形のミドルプレスをかけてきて、こちらのCBがボールを持った時は前線の3枚が背後のIHへのパスコースを消すようにプレスラインを作り、サイドにボールが出たらしっかりとスライドして縦のコースを消す。この時アンカーのカゼミーロには比較的楽にボールが通ったが、相手IHが一応寄せにくるのと彼自身の配給能力もあってシンプルなプレーにとどまった。

マドリーはこれに対しクロースがラモスの左脇(あるいはCB間)のスペースに落ちてくることで3バックのような形となり、サイドバックを高い位置に押し上げる。クロースに対してオレジャーナが食いついて中を締めつつ寄せに来るので外のマルセロが空き、そこにパスが出たところでマドリーの攻撃がスタートする。前線中央寄りに張っていたアザールがすっとハーフスペースに落ちてきてボールを受け、彼のキープとドリブル、それに呼応するように左サイドに寄ってくるベンゼマやハーフスペースに果敢に侵入するマルセロとのコンビネーションにより前進し崩しまで持っていく。詰まったらクロースやラモスが大きくサイドチェンジし、逆サイドで幅をとるカルバハルがフリーでボールを受け、クロースに比べて比較的高い位置をとるモドリッチやロドリゴのチャンネルランから打開をはかる。

マドリーのアタッキングサイドは実際、左:45%、中央:18%、右38%であった。外回りで前進、特にマルセロ、アザールのいる左サイドからの攻撃が多かったことがわかる。

各選手の平均ポジション。マドリーもエイバルもSBに幅と深みをとらせる。また、相手は綺麗な4-1-2-3であった。(※アザールとベンゼマはイチャイチャしすぎである)

VSエイバル画像②
VSエイバル画像③

7分53秒のシーン。クロースのカルバハルへのパスは引っ掛かったが、マドリーの試合でビルドアップ時にSBがここまで高い位置をとるのは良く見る光景である。

VSエイバル画像④

BBC全盛時代はこのサイドの揺さぶりからのクロスゲーでロナウドやベイルが仕留めて、ブロックを敷く下位チーム相手に何とかなっていたが、ロナウド移籍後は中央でクロスに合わせられる選手がベンゼマしかおらず彼への依存度が高まり、チームとして得点力不足に陥っている。そもそも彼はボールを受けに落ちてくるためエリア内に誰もいないこともしばしば。

この試合では開始早々にクロースのゴラッソ(まぐれ)で楽になったが、ジダンにロジカルな攻撃戦術は期待できないので、選手のインスピレーション、コンビネーションの熟成で何とかするしかなさそうである。サイドから中央に流れてベンゼマと近い位置でプレー可能なアザール(背負ってのプレーもバカうまい)とアセンシオの復帰はやはり朗報と言えそうだ。

一応先制点を説明すると上記のようにアザールがハーフスペースでボールを受けキープし起点となり中央を向いてドリブル、ハーフスペースに侵入したマルセロをマークし意識が中央に向いていた相手RSBの大外でフリーとなっていたベンゼマにパスが通り、ベンゼマが仕掛けて相手のラインが下がったところでマイナス(相手のクリアではあったが)にいたクロース、という形であった。


前半/守備(プレス、ブロック)

エイバルは簡単にボールを蹴らず、ボール保持時には4-1-4-1の形でACのアルバレスを経由しながら前進する。IHの二人が流動的にポジションを変え、またRWGのオレジャーナが内側に入るなどしてカゼミーロの両脇のスペースでボールを受けてからサイドに展開し(相手SBもかなり高い位置をとる)、右サイドならコレアからのアーリークロス、左サイドならデブラシスが中に運んでチャンネルへのロブパス、斜めのファーへのクロスなどからゴールを狙う。

マドリーはハイプレスとブロック守備を使い分け、攻→守のトランジションとして高い位置で失った際にはゲーゲンからのショートカウンターを狙いに行くが、剥がされたり中盤で失った際は帰陣しコンパクトな4-1-4-1のブロックを敷く。

相手がミドルゾーンまで来たらベンゼマが片方のCBを切りながら近づき、IHの二人はカバーシャドウで相手IHを消しながらボールを保持するCB(あるいはAC)にプレスをかける。サイドに出されたらWGとSBの2人で対応する。執拗に狙ってきたカルバハルのサイドのチャンネルランに対してはモドリッチが鬼の運動量でついていく。CBが外に釣り出された時のカゼミーロのカバーリングも光っていた。また、相手がボールを下げた際には一気にプレスの強度を高め奪いかかるシーンも見られた。

2点目はそのように相手のパスコースを限定し、それを予測していたラモスのいつもの迎撃インターセプトからカウンター、という流れで生まれている。奪って左サイドに開いたベンゼマに預けてからスプリントしアルビージャを引きつけ、逆サイドのアザールをフリーにして自らが点を決めるという、彼の状態の良さを感じさせる一連のプレーであった。

また、試合を通して守→攻のトランジションは素晴らしく、誰かが手前を作ったら必ず他の誰かがスプリントし裏を狙う、という意識がプレーに表れていた(特にベンゼマを追い越すアザール)。

3点目のシーンはベンゼマとアザールの個の力が全てで、2人で組織を破壊してしまった。こぼれに反応するのがPAまで上がっていたLSBマルセロというところがマドリーらしい。


後半

前半という括りでほとんどお互いの狙いについては話しているので、なぜマドリーは急に勢いを落としたのかに焦点を当てる(簡単に)。前半からの変更点としてはRSBカルバハル(怪我?)→メンディ。そのままRSBに入った。

結論から言うと、メンディのRSBは無理そう。マドリーの守備の穴である左サイドの2人(クロース、マルセロ)の運動量が落ちてきてハーフスペースでパスを回されるようになるといった点は気になったが(マルセロに関しては足痛めてからまじでザル)、それよりメンディが不慣れなポジションでボールタッチがおぼつかず、左利きのためプレスラインから逃げるように右足で縦に持ち出すことができないため、ボールを左足で内向きにトラップしてしまい、ハマったりバックパスしたりというようなシーンが多く見られた。失点はCKからディフレクションと不運な形であったが、その直後に太腿を軽く痛めた様子のラモスに代わってミリトンがRCBに配置され、彼はラモスほどのプレス回避能力がまだないため相手はどんどんラインを上げて特にこちらの右サイドにプレスをかけてくるようになり、勢いに乗せてしまった(クルトワも全部蹴るし)。急にRSBやらされたメンディをそこまで責めることはできない。カルバハル酷使問題はずっと続いているので(CLシティ戦1stlegでは酷使されたカルバハルに途中からピンピンのスターリングをぶつけられてPK献上)、ジダンが解決策を見つけるかナチョの怪我からの復帰が待たれる。

55分28秒のシーン。メンディは相手に正対できていないためパスコースを制限されやすく、カゼミーロのとこでハメられた。


まとめ

ジダンが試合後にキレたらしいが、少なくとも前半はかなりいい内容だったし、むしろ後半の最終ラインの構成もう少し他の手はなかったのか・・・?とも思う。CLシティ戦2ndlegはまだまだ先だが、ラモス不在で臨む一戦に向けてナチョやミリトンの覚醒に期待したい。


試合結果

レアル・マドリード 3-1 エイバル
トニ・クロース(4分)、セルヒオ・ラモス(30分)、マルセロ(37分)
ペドロ・ビガス(60分)

出場選手

クルトワ:1対1を止めるシーンもあったが、自らのパスミスでピンチを招く。
カルバハル:幅をとるだけでなく、モドリッチと入れ替わって中でもボールを受けようとするなど、気が利くプレーが見られた。
ヴァラン:LCBに入った後半はやはりビルドアップに苦しむ。絶対に走り負けないのはさすが。
ラモス:広い守備範囲とストライカー魂を存分に発揮。
マルセロ:狭いハーフスペースでも苦にせずプレー。3点目のミドルをぶち込む。
カゼミーロ:パスミスは多かったがさすがのカバーリングで安定感をもたらす。
モドリッチ:攻守に走り回る。守→攻のトランディションで良い位置でボールを受ける。コンディションは良さそう。
クロース:49分の一連のプレーなど的確な判断が冴え渡る。ゴラッソを沈め個人的にMOM。
ロドリゴ:時折キレのある動きや飛び出しを見せたが、もう少し存在感が欲しい。
ベンゼマ:全得点に絡む。最高のベンゼマ。中央で仕事したい。
アザール:ベンゼマやマルセロとの連携がかなり良くなってきている。もう少しコンディションは上がりそう。
ミリトン:後半のハイプレスに苦しむ。
メンディ:そういえばバスケスRSB説も出てる。
バルベルデ:試合を締めに出場。
ベイル:ヴィニがアウトサイドで輝く選手なので彼にはゴールに向かうプレーが求められている。Marcaに亡霊と揶揄される。
ヴィニシウス:よく走り守備も頑張っていた。
ジダン:だいぶ前だが中断前最後の前節ベティス戦でのミリトンRSBが相当ひどかったため苦肉の策としてメンディを起用したと思われる。


データ提供元:https://www.whoscored.com


最後に

拙い文章になってしまいましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。初めてということもありめちゃくちゃ時間がかかってしまい、今後毎回このボリュームを書く時間と気合があるかはわかりませんが、続けていきたいです。分析を始めてまだ1ヶ月程で、まだ全然サッカーのことをわかっていないので、共感やアドバイス等ありましたら伝えて頂けると嬉しいです。

(ア式の皆さんへ)

勿論皆さんにも、レアルを応援しているより多くの方達にも読んで頂きたいので、リツイートといいねをぜひお願いします。

※追記

著作権等への認識がガバガバだったため、一部編集しました。申し訳ないです。ご指摘頂きありがとうございました。

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