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『GONIN サーガ ディレクターズ・ロングバージョン(2016)』を観ました。

●『GONIN サーガ(2015)』のこと

『GONIN』から20年ほど経ってから『GONIN サーガ』は作られた。
なにしろ平成7年公開にも関わらず、バリバリのザ・昭和歌謡曲の雰囲気な『GONIN』であったのに、『GONIN サーガ』は平成の27年に公開であった。今では世の中は平成から令和になってしまって、感覚的には前作の『GONIN』から2つぐらい年号が離れているように感じてしまう。

『GONIN サーガ』のあらすじはこんな感じ。

大越組襲撃事件から19年後。大越組若頭だった久松茂(鶴見辰吾)の息子、久松勇人(東出昌大)は母と共に真っ当な人生を歩んでいた。一方、大越組組長の息子、大越大輔(桐谷健太)は五誠会会長の孫である式根誠司(安藤政信)に振り回されていた。式根誠司の愛人である菊池麻美(土屋アンナ)は、五誠会の隠し金を奪うことを大輔に提案する。19年前の事件を追うルポライター・富田慶一(柄本佑)は、情報を集める為に、勇人の母である安恵(井上晴美)に情報を与える。

https://ja.wikipedia.org/wiki/GONIN_サーガ

『GONIN』で5人組が起こした暴力団からの現金強奪事件から19年後が経ち、その事件に深い因縁を持つ5人の子供たちの人生の歯車がきしみはじめる。過去の事件に決着をつけようとする者たちの物語である。


●『GONIN(1995)』のこと

『GONIN』の魅力は追い込まれた者たちのバイオレンスな復讐話というわかりやすさと、独特のジメっとした歌謡曲みたいな哀愁の組み合わせだったのではないかと思う。そんな作品に男を感じる俳優が次々に出てくるものだから、どのシーンを見てもグッと惹きつけられる。
この作品はシネコンではなく古い映画館なんかで見ると余計に物語の世界にが入り込むだろう。

『GONIN』のあらすじはこんな感じ。

借金まみれのディスコ・バーズのオーナー・万代(佐藤浩市)、男性相手のコールボーイ・三屋(本木雅弘)、元刑事・氷頭(根津甚八)、リストラされたサラリーマン・荻原(竹中直人)、パンチドランカーの元ボクサー・ジミー(椎名桔平)。社会から弾き出された5人は大胆にも暴力団・大越組の事務所から大金を強奪する計画を企て、辛くも成功する。しかし、ジミーを拷問し万代たち5人の仕業と突き止めた大越組は、二人組のヒットマン・京谷(ビートたけし)と柴田(木村一八)を雇って報復に出る。

https://ja.wikipedia.org/wiki/GONIN

頭をカラッポにして「いつまでもやられっぱなしじゃあ終わんねえよ!」みたいに見て、見終わった後は日本酒でも飲んで少し悔しそうに「それでも俺らはまだ終わっちゃいねえんだよ」とつぶやく。そんな見かたの合う映画と思う。


私は公開当時に『GONIN サーガ』を見ましたが、どうも自分には合わないと感じたのでした。
まずお話が少しややこしく感じて、「誰がどうなっているかと、どうして組に恨みをもっているのか」を追いかけるのが精一杯で、哀愁とかを感じてる間がなかったです。
あと、出ている演者さんが洗練されすぎていてハイブリッド車みたいな感じがして作品にのれなかった(『GONIN』の回想シーンで感じるのはガソリン車みたいな強烈な臭い)。


●『GONIN サーガ ディレクターズ・ロングバージョン』のこと

そんな私が令和の時代になって「GONIN サーガにはディレクターズ・ロングバージョンというのがある」というのを知りました。なんとこれは「公開版より40分も長い」のです。
しかも、オーディオコメンタリーという別音声で演者さん竹中(竹中直人)さんと石井監督がかなりな裏話をしているそうで、こんなものが世にあるということを全然知りませんでした。
早速メルカリで買って見ました。これがなんとも素晴らしかったのです。

公開時の『GONIN サーガ』は2時間9分、『GONIN サーガ ディレクターズ・ロングバージョン』は2時間49分です。とうてい2時間に入りきらない作品を、映画館での上映の問題で2時間に切ったのが公開時の『GONIN サーガ』だったのでした。

私が石井隆作品に求めるのは間とか余韻であり(雨が降っている怪しいネオンの光が反射している屋上での、ゆっくりした移動撮影とか)、独特の「こんな時になにに注目してるんだ?」と思うような視点みたいなものです(向けた銃を別の方に向けたらステージで踊ってた女性の足にあたるとか、緊迫したシーンで出てくるトコトコ歩くだけのワイセツな形のゼンマイおもちゃとか)。それは作品には直接関係なかったりする余白のようなもので、漫画における周りの余白だったり、音楽における間奏だったり、高知における帽子パンの周りのカリっとした部分だったのかもしれない。でもその余白部分が作品の雰囲気や緊迫感を確実にあげていたので、その余白部分なしでは作品は成立しないくらい重要な部分であったのでした。

今だったら配信という公開方法もありますが、『GONIN サーガ』公開時はまだ定着していなかったのが残念。今更配信で 『ディレクターズ・ロングバージョン』を公開することもないので、見たい人はおそらく買って見るしかないです。でも石井隆好きには買って見る価値は確実にあるでしょう(中古でやたら高値のには注意して下さい)。

(公開は平成でしたが)昭和な『GONIN』と、(公開は平成でしたが)令和な『GONIN サーガ』の融合は簡単なものではなかったのです。それは生きている時代の異なる俳優さんを一つの作品内で出すと言う挑戦で、それにはそれだけの時間がどうしても必要なのだったとわかりました。


『GONIN』は公開当時はヒットせず、レンタルとかジワジワ人気が出た作品です。そして『GONIN サーガ』も残念ながらヒットせず、その後石井監督の作品を見ることはありませんでした。おそらく私みたいな石井監督ファンも「なんだか『GONIN サーガ』は自分には合わないなあ」とか思ったのかもしれません。本当は以前からの石井監督好きで映画がヒットして、それにつられて新しい石井監督好きが増えていく、世代を超えた作品になるのが理想だったのではないでしょうか。
当時私は全然『GONIN サーガ』のことがわかっていなかった、わからないまま判断してしまったことが今作の『GONIN サーガ ディレクターズ・ロングバージョン』を見てはじめてわかりました。今更ながら石井隆監督に申し訳なかったのと、今になってこの事実を知ったのが悔しいとかあったりして、見終わって少し泣けてしまいました。

私みたいに公開版の『GONIN サーガ』しか知らなかった人には『GONIN サーガ ディレクターズ・ロングバージョン』を何が何でも見て欲しいです。また『GONIN サーガ』見たけど「なんかよくわからなかったなあ」と言う人も『GONIN サーガ ディレクターズ・ロングバージョン』をできたら見て欲しいです。
(なんと『GONIN』とか『甘い鞭』などにもディレクターズ・ロングバージョンというものがあるようです。中古で探し中です)


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