『モーリタニアン 黒塗りの記録(2021)』を観ました。
ジョディ・フォスターが出ている作品は見たい。たまに外す場合もあるが、そんなの問題なくとりあえず見る。
9.11テロは衝撃であった。映像で見てて現実とは思えなかった。
映画とかCGのような映像で、実際に人が亡くなっているという、なにかも間違いだったようなことが現実に起こった。
数人が集まってる時に、9.11テロの話になったときに、その中の一人が「こういうことを、ずっとアメリカという国はしてきたからね」と言った人がいて、そんなの思ってなかったので少し驚いた。
今作は9.11テロ後の犯人探しのお話である。
9.11テロから2ヶ月後に「首謀者と電話していたんだから、お前は犯人だろう」「お前に仲間になるように勧誘された人がいる。ネタはあがってるんだ(証拠はあるんだ)」というわけで、モーリタニア・イスラム共和国に住んでる(モーリタニアに住んでいるからモーリタニアン)男が捕る。
そこからは自白させるための拷問の日々。釈放される14年後まで、確実な証拠みたいなものはないままずっとキューバのグアンタナモ湾収容キャンプに拘束される。
”9.11テロを受けたのアメリカによる拘束拷問の映画”と言えば、キャスリン・ビグロー監督作品の『ゼロ・ダーク・サーティ(2013)』があって、目を背けたくなるような拷問シーンがあったのを覚えている。
『ゼロ・ダーク・サーティ(2013)』は最後にテロの首謀者の男を射殺するまでのお話であるが、『モーリタニアン 黒塗りの記録』は拘束されてた人が釈放されるまでのお話です。
「なんでわざわざそんな残酷な映画を見るの、もっと楽しい映画を見ればいいじゃないの」という人がいるが、私の場合は、なにを伝えたくてわざわざこの作品を作ったのか(ジョディ・フォスターが出演することにしたのか)というのがある。あと、どんな描き方をするのかも興味がある。
ある男が拘束されて、拷問うけて、やっと14年後に釈放されるまでの映画なら、最後まで観ることはできなかったかもしれない。
こういう作品は、現実を突きつけられるので真剣である。でも最初から最後までずっとそれだと、気持ちがかなり疲れてしまう。なので、作品の中にジョディ・フォスターが出てくるだけでなんだかホッとすることができる。
「ちょっと見たくないような現実が出てくるようなお話だけど、まあそんなに肩に力入れずに、リラックスして最後まで見たらいいわよ」とか言われてるような、ジョディ・フォスターの存在が作品に気持ちを引きつける力を持っているような感じがして、キツい作品ではあるけれど、最後までしっかり観ることができた。
もちろん拷問はかなり悲惨である。それにアメリカという国が絶対に正義で、それを守るためには何をしたって構わないってのはどうかと思う。
「こういうことを、ずっとアメリカという国はしてきたからね」と言った人を思い出した。
見る前は「なんで9.11テロみたいなことが起きるんだろう」などと思っていた人が、「こんな拷問みたいなことをずっとやってきた国であれば、そのうち自分の国に戻ってくることもあるのかもしれない」と思ってしまう作品かもしれない。
ジョディ・フォスターだけでなく、その部下で人の良さそうなシェイリーン・ウッドリーや、軍の側のベネディクト・カンバーバッチなど、出演者に恵まれた作品だし、映像(色や見せ方)も素晴らしい。
このような作品を(リスクがあるかもしれないのに)作る、作品に出演するという、なんだか気持ちいい心意気に触れられてよかった。