このアルバムはキュアー史上一番チャートで上位に入ったアルバム(一番売れた『Disintegration』はこの『Wish』の2倍売れてる)となる。
もちろん「売れてよかった」ではあるが、と同時に「売れるってのはなんなのだろうか?」とも思ってしまう。売れても自分たちを自分たちでコントロール出来なくなったら、逆に大変なストレスにはなるまいか。
前アルバムの『ディスインテグレーション :Disintegration』でキュアーは望んでいなかったスタジアムバンドに化けてしまった。その結果、あんまりキュアー知らない人が大勢ライブに聴きにきてしまうことになってしまう。
そんなキュアー初心者さんが野外の広い会場で遊園地のアトラクションのように楽しめるような、抜けのいい曲たちを収録したアルバムが『Wish』のように思う。一回聞けばおぼえてしまうようなわかりやすさがあるし、冒険娯楽映画を見ているような楽しい作品である。最初にキュアー聴くならこのアルバムだと思う。
●ハイ:High
▼この時期メンバーが次々と脱退
実はこの前のアルバムの録音後に、バンドメンバーがロバート・スミスと2人になった時期もあったのにがんばってやってきた、創設からのメンバーの(太ったおっさんこと)ロル・トルハーストがバンドから脱退している。
そして、ドラマーのボリス・ウィリアムスが(別のバンドに専念するため)このアルバムまででキュアーを脱退する。彼は『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head On The Door』からこのアルバムまでの4枚のアルバムで在籍した。
さらに、16年在籍したギタリストのポール・トンプソン(トンプソンはザ・キュアーの前身であるイージーキュアーのメンバーであった)もこのアルバムで脱退した。
振り返ってみるとドラマーのボリス・ウィリアムスの在籍の時期がキュアーのバンドとしての黄金期だったのかと思う。この人のドラムがキュアーの楽曲にとって、相性がよかったのかもしれない。
ロバート・スミスの作った曲をいい感じに広げて、作曲者が思いもしなかった形に仕上がっていったように感じる。ここでボリスが去ったことは、ひたすら残念である。
●フライデー・アイム・イン・ラヴ:Friday I’m In Love
▼2枚のライブアルバムをリリース
このアルバム『Wish』のライブツアーで、キュアーは2枚のライブアルバムを収録する。1枚目『ショウ:Show』はポップなヒット曲を集めて、2枚目の『パリス:Paris』は初期のダークな曲を集めた。
1993年9月13日にライブアルバム『ショウ:Show』発売
1993年10月25日にライブアルバム『パリス:Paris』発売
発売からかなり後になって『パリス:Paris』を聴いた。選曲も演奏も録音も素晴らしく何度も何度も聴き込んだし、今でもよく聴くライブアルバム(『ショウ:Show』も聴いてみたらよい録音でした)。
●ア・レター・トゥ・エリーズ:A Letter To Elise
MTVアンプラグドより。
3枚目のシングル曲で、メロディーがやさしい名曲かと思う。
私が思うに、すべてロバート・スミスひとりで作り込んでしまうと、一定のイメージに落ち着いてしまって(『ザ・トップ:The Top』とか)、結果的にはまとまり過ぎてしまう。
ロバート・スミスから発して、バンドのメンバーのアイデアやダメ出しなんかが入って、当初は思っていなかったような得体の知れない形になっていったりすると、なんだか面白いものなるんではないかと思う。
そんな、お互いが自由に意見を出し合えるようにバンド関係は、このアルバムまでで終わりを告げることとなった。
次の曲なんかをスタジアムで聴くと盛り上がりそう。
会場の群衆がまるで大きな海の波に見えるんではないかという、聴いててアガる曲。
●From the Edge of the Deep Green Sea(Live)