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ZAZEN BOYS - 永遠少女

こんな素晴らしい作品に出会えると「ここまで生きててよかった」と本気で思ったりする。
ギターの「ジャンジャンジャカ、ジャンジャンジャカ」という、なんだか力強い2つの音(コード)ではじまり、それは変化せず最後まで続く。

近年ヒットしたりした日本の曲(JPOP)は、もっと複雑なコード進行で作られていることが普通になっているから、この曲なんかは逆にシンプルすぎて怖いくらいだ。


私のZAZEN BOYSのイメージは刀を持ったメンバー同士の居合斬りみたいなものである。静かな間があって、瞬間刀を振り下ろして、斜めの切り口の藁のかたまりがバサッと落ちる。これはまるで「音の真剣勝負」である。
そして、ZAZEN BOYSの歌詞というは、単語の記号のように「諸行無常(しょぎょうむじょう)」とか「冷凍都市(れいとうとし)」とかを音に合わせて繋いでいくようなものというイメージが私にはあった。歌詞で情景やドラマが頭に浮かぶような描写なんかを、あえて入れないようにしているように見えてた。
以下、2015年のZAZEN BOYSさんのライブ。


私はバンドの中心の向井秀徳(むかいしゅうとく)さんの描く情景が好きだ。
例えば、前のバンドであるNUMBER GIRLの「鉄風鋭くなって」の歌詞が以下。

発狂した飼い猫を 川に捨てに行って
念仏唱えてさようなら 中古の戦車を拾って帰る

NUMBER GIRL『鉄風鋭くなって』の歌詞


ZAZEN BOYSのなにかが変わったと言えば、2018年にベースがMIYAさんに変わった。そしてMIYAさんの出身地は沖縄である。MIYAさんは解散したBleachというバンドでベースを弾いていた。私はBleachというバンドが大好きで何度かライブを見に行ってた。


永遠少女では1945年の戦争のことを唄っている。

永遠少女

あなたのお母さんは鏡の向こうで笑っている
あなたのおばあちゃんは写真の中で笑っている

君のまなざし おばあちゃんと変わらない
おばあちゃんも少女 永久に少女
君のまばたき お母さんと変わらない
お母さんも少女 永遠に少女

1945年 焼け死んだあの娘は15才だった
膨れあがった腹から飛び出た内臓がとてつもなく臭い
それを犬が食う
その犬を叩き殺して大鍋にブチこんで食らう
泣きながら食らう
とてつもなく臭い
臭い 臭い 臭い とても臭い
臭い 臭い 臭い

ZAZEN BOYS『永遠少女』の歌詞

1945年の戦争というのは太平洋戦争のことであろう。この戦争で唯一地上戦で市民が巻き込まれたのが沖縄戦である。東京では空から燃える爆弾(しょうい弾)落とされて、街が火の海になったりした。
最近では「戦争のことを唄っている」曲なんてものを、ほとんど聞いたことがない(ザワワの歌詞の「さとうきび畑」とか)。でも現在この国でも、隣国のミサイルが頭の上を飛び越えていったりしているんだし、実際に海外では戦争し続けているので、全然人ごとでもなかったりする。

ベースのMIYAさんは以下のようにXにポストしていた。

私は寂しくて辛い曲が苦手です。
なんでかって大正時代の家族に色々聞いてるから。でもこの曲を演奏するために今までベース弾いていたんだなと思いました。

https://bassmagazine.jp/player/interview-zazenboys-miya202402/2/


生きたくても生きれなかった1945年の少女の描写の後には、生きていてることにウンザリして生きる意味を探しているような者への歌詞が続いて、コントラストの落差が凄まじい。
『永遠少女』は過去のことを唄っているのではなく、現在の少年少女に向かって伝えている唄なのであろう。

今回のアルバム『らんど』では情景やドラマが溢れていた。どの曲もそれぞれ感じが違ってていて、聞いていてずっと楽しかった。何度も聴いてしまう。
前のアルバムからなんと12年が経っているので、干支が一周して「あり得ないことが起きた」のかもしれない。


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