見出し画像

アレクサを使いはじめた母

「以前確認した時はダイヤルアップ接続であったが、まさか今もそうではあるまいな」とか言いつつ親の家のネット環境を確認した。

もう父親の顔は『シン・ゴジラ』映画公開時以来見ていないし話していないので、親の家に入れるのは父親が不在の時だけである。
なにしろ、NTTの機器が置いてあるのが2階の父親の部屋なので、父親が在宅であれば絶対に近づけない場所だ。
母親は「ネットって何のこと?」という感じで、以前になにもわからないまま「電話代が安くなりますよ」と言われて、インターネットも込みで光電話の契約を進めてしまい、工事直前でストップさせたことがある。

さて、見てみると電話回線は既に光ケーブルになっていた。既に光電話になっていたのである。
NTTの機器にはLANケーブルを差し込むところがあり、試しに私のノートパソコンと繋いだら、すんなりインターネットが見れた。
早速「インターネットに繋いどるがな」と母に伝えたが、伝えたところで「それがどうかしましたか?」程度の反応である。

「誰のためのインターネットなのだ?」ということになる。だって父親はもう痴呆が出てきていて、インターネットどころかノートパソコンも開けない。平日は泊まりで介護施設に行っていて、この家に居るのは週末だけである。

せめてWi-Fiが使えたら、姉が来た時なんか使えるのではないかと思って、調べたがよくわからない。父親はわからないなりにも頑張ってパンフレットとかを読んで契約をしたようであるが、何故か「外でWi-Fiスポットに繋ぐオプション」とかも付けたり、「Wi-Fiカード:月200円」というのも書類に書かれていた。これらが今でも契約しているか、毎月支払っているのかは、わからない。今のところ機器には付属品みたいなものは付いていないし、箱に入ってるものもなかった。

とりあえず、勝手に中古で『Wi-Fiルーター』を買ってきて取り付けた。定価だと5000円くらいするが、1500円ですんだ。これで一階でもWi-Fiが使えることになったのであった。
これは父親には秘密であるので、外からは見えないように、NTTの機器の裏側に『Wi-Fiルーター』を隠した。こういうことを勝手にやると父親はブチギレて、見慣れない機器を叩きつけてぶっ壊したりすることがあるのであった。
母に言ったら「二階には上がらないから、大丈夫でしょ」とのことであった。

とはいえ、せっかくWi-Fi電波が飛んでるのに、使わないとはもったいない。これまた勝手に『Wi-Fiで音楽が聴ける小さなスピーカー(echow dot)』を試しに母親の部屋で設置してみた。

これは私が自分の家で使ってみたら、わざわざCDを再生しなくても好きな音楽を言えば再生してくれるので便利すぎて、それ以来、知り合いの家でおすすめデモンストレーションしているスピーカーなのであった。
「アレクサ、石原裕次郎の曲をかけて」と言えば、石原裕次郎の曲がかかる。「アレクサ、昭和の演歌をかけて」と言えば、懐かしの昭和の演歌がかかる。歌手の名前でもいいし、曲名でもいい。

これは、私が聴き放題に契約しているから聴けるのであるが、まあ「こんなこともできますよ」というのを見せたかっただけであった。
どうせ母親はこういうのは怖がるだけだから「こんな君の悪いものはさっさと取り外して、持って帰ってちょうだい」と言われるものだと思っていた。
そしたら母親が「これ使いたい」とか言い出した。意外であった。

こうなると、私ではなくて母親の契約にしておかないと、私が家で聞けなくなってしまう。ファミリー契約とかいっても、違う家に住んでいるのでなんだか面倒だ。
そこで母親のアカウントを作り、このスピーカーだけの契約で私のカードで申し込んだ。このスピーカーだけで使う契約なら月に480円(2022年4月現在)であるし、最初の1ヶ月はお試しで無料である。でもこれで9000万曲が聴き放題なのは夢のような話だと思う。
こうしておかないと、せっかく曲名言っても「その曲はお金払って申し込んでもらわないと聞けません」とか言われて、困ってしまうことになるのだ。

早速母は「アレクサ」とペンで書いた紙を、セロテープでスピーカーに貼り付けた。このスピーカーの名前がアレクサみたいなってしまっているが、まあこうしておけば、忘れないであろう。
というわけで、珍しく母親が自分から「これ使いたい」とか言ったので、せっかくのWi-Fiを使ってもらえるようでよかった。

母のアカウントは私が契約したので、私が自分のパソコンでログインしたら、使用状況が確認できることになる。
次の日にチェックしたら、全然使ってなかった。
なんとなく使う気もないのに「使いたい」とか言ったんではあるまいかと思って電話をしてみた。
「いくら使ってもお金はかからないから、テレビみたいなもんだから使って」と言ったら、やっと使い始めた。石原裕次郎の曲を聞き始めた。

そうしてしばらくしたら母親から電話がかかってきた。
「どうやったら音楽が止まるの」ということであった、「1時間後に音楽止めて」と最初に言ったようであるが、まだうまく反応していなかったようである。「アレクサとめて」だけではうまく反応しないかもしれないので、ちゃんと「アレクサ、音楽を止めて」と言うように伝えた。

それで以後は毎日のように、演歌とか歌謡曲とかを聴いているようである。
たまに新しめのAboとかKing Gnuとかの曲が再生リストに入っていると「何を聴いとんねん」とか思うが、使ってもらえてよかったと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?