コロナ禍の各国経済動向

前回コロナ禍の日本経済動向を考察したが、今回は欧米・中国・ASEANの経済動向を考察したい。
(各種データは三菱総合研究所のレポートより抜粋)

<米国経済>
▪️GDP
21年4-6月期のGDPは前期比年率+6.5%と、コロナ前を上回った。背景としては個人消費や設備投資が回復したことがあげられる。

▪️家計動向
給付金だけでなく雇用回復により経常所得はコロナ前を上回っている。過剰貯蓄も2.6兆ドル積み上がっていることから今後の消費を支えるだろう。

ただし世界的に原材料価格が上昇している結果、消費意欲が減退していることが水を指している。

▪️雇用動向
失業率が20年4月には20%近くまで上昇したが、21年7月には5%程度まで回復している。

コロナ前と比較して570万人雇用者数が少ないが、求人数が急増していることから、今後の段階的に解消されるだろう


▪️総論
個人消費が回復しているとはいえ、物価が上昇していることから消費抑制がかかるが、物価上昇の背景である原材料不足も今後段階的に解消されていくことが見込まれる。2022年以降は成長も正常化されGDP伸び率は3%程度推移していくことが見込まれる。

<欧州経済>
▪️GDP
21年4-6月期の主要5カ国の実質GDPは、前期比+2.5%と成長。2020年2月には、各国10%から20%までマイナス成長となったが、コロナ前から-4%のところまで回復してきた。

背景としては、経済活動が再開されはじめたことによるものである

▪️消費動向
経済活動再開により消費者マインドはコロナ前を上回る水準にまで回復。

需要の回復に伴い労働需要も回復し、人手不足を感じている企業が15%弱程度いる状況。

▪️企業活動
企業マインドは幅広い業種でコロナ前を上回る水準である。企業の売上も21年4月にはコロナ発生以降初めて増加超となった。輸出、受注状況も急激に回復

<中国経済>
▪️GDP
前年同期比+7.9%と高水準。好調な輸出を背景に製造業が成長を後押ししている。

最大のリスクは、企業の債務拡大による信用収縮である。企業の社債デフォルト件数は右肩上がりの状況であり、21年6月までで77件、金額は762億元となっている。

仮にデフォルトが連鎖的に波及する場合、信用収縮による金融危機を招くリスクがある。

▪️総論
経済動向については、消費持ち直しや輸出改善等まず無難なデータが揃うが、中国経済のポイントは社債デフォルトである。

上記の通りデフォルト件数は増加している。しかしながら、期待として、企業の社債デフォルトリスクはあるものの、2022年秋は5年に一度の共産党大会が開かれ、習近平国家主席は党首席に就任し長期政権を目指す意向である。

したがって、それまでは大きな混乱をもたらさないような安全運転が期待され、消費回復による内需拡大を進め、同時に半導体などを強化していくものと見られる

<ASEAN経済>
▪️GDP
21年4-6月のGDPは、コロナ前の水準を上回っているのはベトナムとインドネシアのみだが、マレーシア、フィリピン、タイ、インドネシアいずれも大幅に回復している。

やはり外出抑制が緩和されたためだ。しかし、変異株の拡大により、再度活動制限を強化されたこと、また東南アジアはワクチン接種率が総じて低い。

たとえばワクチン接種を完了した人口割合が10%を超えるのはマレーシアだけとなっている。以上により、今後の経済回復の足枷となるだろう。


▪️企業活動
製造業PMI、輸出動向についても、上記と同じ傾向で変異株拡大前までは欧米と同様に急回復してきたが、変異株の流行により21年4月以降再び急減している

▪️雇用動向
失業率は最悪期なら改善傾向にあったが、やはりこれも21年4月には失業率が少し悪化している。今後変異株による影響が長引けばさらに悪化することが想定される

▪️総論
総じて言うと、東南アジアはワクチン接種率はかなり低く、もっとも多いところマレーシアでも、接種完了割合が10%を上回る程度とかなり低調だ。

当然欧米でも変異株は拡大しているものの、ワクチン接種率が高いため、ロックダウンにまでは至っていないが、接種率が低い東南アジアではやはりロックダウンなどの行動制限を取らざるを得ない。

その結果、経済に影響するのは目に見えているため、東南アジアの今後の経済は少し見えないといった状況か。

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