組織変革~根本的な対処法

組織変革や戦略などを提供してくれるコンサルティング会社はいくらでもあるが、結局のところ、そういった変革や戦略が成果を上げる確率はかなり低い。なぜなら結局のところ、変革や戦略などを実行するのはそこで働く人たちであり、コンサルティング会社ではないからだ。そしてそこで働く人たちが納得しないことには本質的に変革していくことは不可能である。納得していない場合は、内心は納得していないが、事を荒げるのは大変だから従う振りだけをしている人が大半というのが現状ではないだろうか。その場合、変革するうえで本当に重要な課題が誰からも提起されることなく、本質とは違う施策を無駄だと思いながら建前上推進するだけで終わる。このような状況で成果を上げることなど絶対にありえないだろう。

それでは本当に組織を変革していくためにはどうすべきなのか。
それは従業員に良質な問いを常に与え続けられるかどうかだと思う。
人は本質的に好奇心があり、問題解決することそのものに興味をいだき、問題解決する過程で成長を感じ、成長を感じると毎日が生き生きとしてくる。そういった環境を用意することが重要ではないだろうか。

人への投資という名目で研修を増やしたりするかもしれないが、それはほとんど効果はない。なぜなら多くの研修はあくまでもプロジェクトマネジメントの方法論、ファイナンス、戦略理論など技術的なトレーニングが大半だからだ。しかし、こういった技術的な方法論では、たとえ目の前の小さなタスクそのものを解決することはできても、組織全体を変革することや、組織として成果をあげることはできない。なぜなら、組織として成果をあげるためにはそういった技術的な問題では対処できないからである。上述した通り、いくら素晴らしい戦略をコンサルティング会社が書いたとしても、成果をあげるにはそこで働く人が面従腹背ではなく、真に自分事として取り組まなければならないためである。そしてそのためにはトップダウンで作った戦略を現場に落として、実行せよと指示しても誰も従わない。また技術的な研修をしても技術的なタスクには対処できるようになるが、組織変革など大きな影響を及ぼすような課題には何の役にも立たない。

そこで働く人たちに自分事として取り組んでもらうためには、そもそもトップダウンで考えることそのものが間違っているという前提に私自身は立っている。なぜなら物事は現場で起きているからである。現場でモノを売り、現場でモノを生産する。常に現場に問題や解決策がある。それにもかかわらず、現場と遠く離れたところで一方的に戦略を考えてもそもそもその精度は低く、現場の納得感もないだけである。

戦略は現場からのボトムアップで考え、マネジメントはそれを集約化、一般化することに留まるべきである。それこそがより現実的な戦略であり、現場が納得できる実行力のある戦略である。そう言うと、必ずボトムアップでは視座が低く保守的な数字になってしまうという意見が出てくる。実際そうかもしれない。ただしだからといってトップが非現実な数字に拡大したところで何の意味があるだろうか。それはトップの自己満足でしかなく、結局現場は納得しない。重要なのは現場で働く人たちが納得感をもって自分事として主体的に推進することである。トップが横やりを入れて現場のモチベーションを下げることに何の意味があるだろうか。またトップがストレッチした目標を課さなければ、各個人はストレッチしないというのも幻想である。むしろ、目標を各個人自身で考えたとしても十分ストレッチした数字になるはずである。なぜなら人は成長意欲を本質としてもっているからである。仮に個人で目標設定したときに保守的な数字になってしまうのは、それは個人が問題なのではなく、むしろその目標を管理する側に問題があるはずである。

それでは具体的に組織や個人を変革していくためにはどのようにしていけばいいだろうか。

ハーバード大学で教授を務めるロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー著作の「なぜ人と組織は変われないのか」が非常に参考になると感じている。

改善目標を立て、それを現状阻害している要因をリストする。さらにその阻害している要因を深堀し、その阻害要因が発生している心理的要因を探求する。誰しもが何かの目標達成が困難なときには、必ず背景には心理的な要因が根本としてある。

たとえば、目標として他人の意見を聞けるようになりたいと目指したとしても、それを阻害している心理的要因として実は自分のやり方でやりたい、自分が問題解決をしたいといった心理的背景があると、結局のところ他人の意見をないがしろにしがちになる。すなわちこれが目標を阻害している表面的な要因である。この場合、なぜ周りに認められたいのかといった心理をさらに深掘りすると、実は自分がスターとして認められたい、上司に評価されたいからとか、自分は努力家だと見られたいなどの固定観念があったりする。しかし、自分のやり方を押し通したとしてもそれは周りから認められることになるのか?自分が問題解決しなくても他の誰かのほうがより容易に解決できるかもしれない。それにもかかわず自分のやり方を押し通しても果たして問題解決され、成果があがるのか。自分を変えるにはこういったマインドセットをすることが必要である。

そして、組織を変えるには、各個人が組織の目標とリンクする個人目標を立てることで組織変革につなげることができる。結局のところ個人が変わらなければ本質的なレベルでは組織は変わらない。したがって組織目標とリンクする目標を個人に立ててもらうが、この目標の立て方も表面的に営業成績を達成するといった目標ではなく、営業成績を達成するためにもっとも重要な要因を改善目標にすることが望ましい。たとえば関係当事者の知見をより引き出すなど、単に営業を毎日10件するといったよりも定性的な目標にしたほうが長期的には効果があると考える。目標は必ず上司や部下、同僚にも公表し、可能であればフィードバックをもらうことで目標そのもの改善する。そして定期的に個人目標に対する状況を確認する。

私も経営企画などを経験してきたが、よくあるのは会社としての売上目標を決め、それを個人ベースに目標を落としこみ、個人毎の目標の進捗状況を確認するといったやり方だ。このやり方は目標管理制度として大半の企業で取り入れられてきたが、マイクロソフトなど一部の企業ではこの制度をやめる動きがでてきている。やはり弊害として従業員もモチベーションを阻害しているからであろう。また短期的には業績改善につながるかもしれないが、長期的な改善には決してつながらない。なぜならこういった営業目標を課せられた場合、往々にして短期的な達成に集中し、長期的な活動をないがしろにしてしまうからだ。その結果、長期的に重要な活動ができず、結果業績はさらに苦しくなり、短期目標達成へのプレッシャーだけが強まるが現場は疲弊し続けるといった悪循環につながるからである。

要約すると、
・戦略は常に現場のボトムアップであるべき。トップダウンでは面従腹背で本質的な推進につながらないため。
・組織変革するには、組織目標とリンクした個人目標をつける
・その個人目標は単なる営業成績などの表面的なものではなく、定性的な目標で、長期的に重要な活動そのものを目標にすべき
・個人目標は各個人自分でドラフトし、周囲にフィードバックをもらい目標そのものを改善する
・個人目標の進捗状況を定期的に共有する

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