見出し画像

歌舞伎の巡業を観る


妖怪の隈取、土蜘の精 

公文協松竹大歌舞伎東コース 千秋楽 @豊橋
6月末にスタートした歌舞伎巡業も、豊橋で最終日を迎えました。
松緑、梅枝、萬太郎、亀蔵、それに新悟、尾上左近を加えたフレッシュ
メンバー、しかも、横道に逸れず真っ当な古典歌舞伎を目指す集団です。
感想を少々、、。
①   まず「菊畑」。
 この場はいつも感じることですが、大道具や登場人物の衣裳の変化に富んだ
 色彩美が実に素晴らしい。
 舞台一面の菊の花壇、紅葉の釣り枝、泉水の道具、それに加えて黒の繻子奴
 の智恵内(萬太郎)、紫綸子地に雁木模様の色若衆の虎蔵(梅枝)、赤姫の皆鶴
 姫(新悟)、茶金蘭の鬼一(松緑)。
②   役者の口跡が良かった。心配していた松緑、相変わらず高音と低音のメリハリ
 が強過ぎるという難はあるものの、それを結構抑えていました。梅枝、萬太郎
 はいうまでもなく好調でした。

③   この二人の「三味線のノリ地」のやりとり、呼吸とその間(ま)の姿の美しさ、
 これは踊りの素養がものをいう場面でしょう。
④   その前、新悟の皆鶴姫が虎蔵を牛若丸であるとの素性を知りながら、智恵内に
 恋の取り持ちを頼む初々しさ。これも見ものです。

⑤   歌舞伎には「一調子ニ振り三男」という言葉がありますが、一調子とは「セリ
 フ回し」、二振りは風格、風姿、芸の基本となる「動く形の美しさ」「間の取
 り方」をいい、三男はいうまでもなく「男振り」を指しますが、今回のフレッ
 シュチームは見事にそれに応えていました。
 普段からの義太夫と踊りの稽古の賜物です。

⑥   「土蜘」。
 新悟の胡蝶「その名高尾の山紅葉、、」の振りが良い出来でした。それに亀蔵
 の平井保昌の幕開きでの名乗り、セリフが明快で耳に心地よく響きました。

⑦   松緑の智籌、後の蜘蛛の精、これはおじいさんの二代目松緑譲りの凄みも見ら
 れ、活き活き溌剌とした舞台で好演、殊に、二畳台に飛び乗って足拍子、数珠
 を横に持って左右から口に当てて口の裂けた心で見せる見得はよかったです。

⑧  「千筋の糸」からの件は観客も大喜びで、立ち回りは大喝采でした。
 左近が坂田金時で大活躍、その前、梅枝の頼光の太刀持ちをやってますが、さ
 すが、五代目を約束されているだけあって、長袴の処理もどうに行ったもの
 で、役を離れて父親の松緑は温かく見守っている姿は印象的でした。

ところでこのホール、 今更どうしようもないことだが、客席から見た舞台、花道には問題があるようです。
①   大劇場の大舞台は望むべきもないけど、ちょっと狭い。腰元や四天王の部下が
 大勢出てきますが、これが舞台にひしめき合って、どうにも窮屈なんです。
②   一応花道は整ってますが、客席の勾配がかなり急傾斜しており、花道から出る
 役者は横穴から登場するような感じで、客席から見て、初めは頭だけ、徐々に
 やっと全身が見える、、、まるで「スッポン」でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?