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【種牡馬四季報】アメリカ/カナダ 2024年スタートダッシュと新種牡馬解説

競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。

~リーディングサイアー(北米)~

5年連続で北米リーディングサイアーに輝くInto Mischiefが2024年も首位の座に君臨している。アメリカではサンタアニタH(ダ10F)のNewgate、アッシュランドS(ダ8.5F)のLeslie's Roseを出しており、UAEでもドバイワールドC(ダ2000m)の勝ち馬Laurel Riverを出すなど今年も世界のダート競馬を牽引する種牡馬となりそうだ。また後継種牡馬の活躍も目立ち、Goldencentsが3位に、Practical Jokeが7位にランクイン。Goldencentsはケンタッキーダービー馬Mystik Danも出しており、Into Mischief父系の発展にも大注目だ。

2位は昨年3位のGun Runner。ブルーグラスS(ダ9F)をSierra Leoneが、チャーチルダウンズS(ダ7F)をGun Pilotが制すなど若駒の活躍が目立ち、仕上がりの早さと非凡なスピードが大きな強みとなっている。ほかのFappiano系種牡馬では、同じCandy Ride直仔のTwirling Candyが16位、Unbridled系のArrogateが10位、American Pharoahが20位にランクインしている。

昨年5位のQuality Roadが現在4位。昨年のプリークネスS勝ち馬National TreasureがペガサスワールドC(ダ9F)とメトロポリタンH(ダ8F)を制し、今年も父の代表産駒として賞金を積み重ねている。ほかのGone West系種牡馬ではMunningsが11位にランクイン。

5位Constitutionは唯一のSeattle Slew→A.P. Indy→Tapit系種牡馬。代表産駒はGⅡルイジアナダービー(ダ9.5F)を制し、プリークネスSでも3着と好走したCatching Freedom。

2021~23年と3年連続リーディング2位につけるCurlinは現在6位。昨年の北米年度代表馬Cody's Wishが引退したことにより産駒全体のパワーダウンは否めないが、今年もIdiomaticがラトロワンヌS(ダ8.5F)を制すなどまだまだ一線級でも無視できない名種牡馬だ。また後継種牡馬Good Magicもアーカンソーダービー馬MuthやベルモンドS優勝馬Dornochなどを出して8位にランクイン。父を上回る日もそう遠くはなさそうだ。

父系別では上位20頭中9頭がMr.Prospector系、8頭がNorthern Dancer系、3頭がNasrullah系。Mr. Prospector系の内訳はFappiano系が4頭、Gone West系とSmart Strike系が2頭ずつ、Machiavellian系が1頭。Northern Dancer系の内訳はStorm Cat系が7頭、Danzig系が1頭。Nasrullah系の内訳はCaro系が2頭、A.P. Indy系が1頭。

~新種牡馬 北米~

Authentic
2020年にハスケルS(ダ9F)、ケンタッキーダービー(ダ10F)、BCクラシック(ダ10F)を制して北米年度代表に輝いたInto Mischief直仔。母Flawlessは父Mr. Greeley、母母父In Realityというスピード血統で、本馬はIcecapadeの5×4を持つ配合形。父としてはスピードが前面に出そうな種牡馬で、特に日本では短距離馬が多く出ると予想する。

画像元:TARGET frontier JV

Vekoma
2020年カーターH(ダ7F)、メトロポリタンH(ダ8F)を制したトップマイラー。母がBold Rulerの5・5・6×4を持つSpeightstown産駒で、本馬自身はコンスタントに使えずGⅠ勝ちは4歳時だったが、種牡馬としては早い時期から活躍する馬も多く出してくれそうだ。Candy Rideの後継種牡馬なら芝適性も低くはないだろう。

画像元:TARGET frontier JV

McKinzie
2歳時にキャッシュコールフュチュリティ(ダ8.5F)、3歳時にペンシルベニアダービー(ダ9F)とマリブS(ダ7F)、4歳時にホイットニーS(ダ9F)を制すなど幅広いカテゴリーで息の長い活躍を見せたストリートセンス産駒。母がアウトブリードの配合形だけに、本馬は父譲りの立ち肩のパワータイプ。本馬自身もMr. Prospectorの4×4程度しか濃いクロスを持たないため多様な産駒を出しそうだが、特に北米での生産馬はダート路線が主戦場となりそうだ。

画像元:TARGET frontier JV

Volatile
2020年アルフレッド・G・ヴァンダービルトH(ダ6F)を制したスプリンター。Violence産駒らしいスピード馬で、基本的には種牡馬としても短距離馬を多く出しそうだ。また、El PradoやGone West、Unbridled's Songなど日本の繁殖馬と相性の良い血を豊富に持つため、後継種牡馬や繁殖牝馬として注目の血筋だ。

画像元:TARGET frontier JV

Global Campaign
北米2歳GⅠ2勝馬Bolt d'Oro(2017年デルマーフューチュリティ、フロントランナーS)の半弟で、自身も2020年ウッドワードH(ダ10F)を制したCurlin直仔。Curlin×A.P. Indyらしいストライド走法で走り、大箱ダートのマイル~中距離戦がベストだろう。また、日本の繁殖牝馬との組み合わせなら芝適性も高くなりそうだ。

画像元:TARGET frontier JV

Improbable
2歳時に2018年キャッシュコールフューチュリティS(ダ8.5F)を制し、4歳時の2020年にはハリウッドゴールドC(ダ10F)、ホイットニーS(ダ9F)、オーサムアゲインS(ダ9F)という3つのGⅠタイトルを手にし、同年北米古牡馬チャンピオンを獲得。現役時代はダートでの出走しかなかったが、万能型City Zipの産駒で、母も軽い血を豊富に持つため、特に日本や欧州の繁殖牝馬との組み合わせでは芝適性も高くなりそうだ。

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Tiz the Law
デビュー2戦目で2歳GⅠシャンペンS(ダ8F)を制覇。3歳時には変則開催となったクラシック戦線においてフロリダダービー(ダ9F)→ベルモントS(ダ9F)→トラヴァーズS(ダ10F)と連勝。三冠が懸かったケンタッキーダービーではAuthenticの後塵を拝したが、GⅠ4勝という素晴らしい実績を残したConstitution産駒。Tapit父系でありながら母から受け継ぐIn Reality血脈などの影響からスピードにも優れ、繁殖牝馬によって幅広い距離カテゴリーの活躍馬を輩出してくれるだろう。

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Complexity
2018年シャンペンS(ダ8F)を制した米2歳GⅠ馬。母がNasrullahの5・6・7×7・7・5・7、本馬がNasrullahの7・7・9・8・8・8×6・7・8・8・8・6・8を持つスピード馬で、産駒にも早熟の短距離馬が多く出そうだ。

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Game Winner
2018年デルマーフューチュリティ(ダ7F)、アメリカンファラオS(ダ8.5F)、BCジュベナイル(ダ8.5F)を制して北米2歳牡馬チャンピオンに輝いたCandy Ride産駒。母がBold Rulerの5・4×7・5やTom Foolの5×6・6などのスピード血脈を豊富に掛け合わせており、アウトブリードで様々な産駒を出す父との組み合わせということからも母譲りの非凡なスピード能力が本馬も持ち味だ。ただ、本馬自身は濃いクロスを持たない配合形であり、繁殖牝馬によっては距離を延ばして良さが出る馬も現れるだろう。

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War of Will
2019年プリークネスS(ダ9.5F)と2020年メイカーズマークマイルS(芝8F)というダートと芝でそれぞれGⅠタイトルを手にした二刀流のWar Front直仔。母Visions of ClarityがSadler's Wells×Rivermanのアイルランド産馬で、半兄Pathforkは2010年愛ナショナルS勝ち馬だ。馬体のつくりも軽く、種牡馬としては芝馬も多く出すだろう。名門Best in Show牝系でもあり、北米に限らず世界中でマルチな活躍を期待できる良血馬だ。

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Maximum Security 
2019年ケンタッキーダービーで1位入線するも、進路妨害による降着により栄冠を逃した幻のダービー馬。2019年フロリダダービー(ダ9F)、ハスケル招待S(ダ9F)、シガーマイルH(ダ8F)、2020年パシフィッククラシック(ダ10F)という4つのGⅠタイトルを獲得。日本で繋養されているニューイヤーズデイの後継種牡馬で、父父Street Cryの増幅形なら芝馬が出ても全く驚けない。

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Spun to Run
2019年BCダートマイル(ダ8F)を逃げ切った快速マイラー。Danzig系Hard Spun×Gone West系Grand Slamというスピード血統で、種牡馬としても仕上がりの早さと非凡なスピード能力が持ち味となりそうだ。

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Tom's d'Etat
2019年クラークS(ダ9F)の勝ち馬。Smart Strike×Giant's Causewayという万能血統で、幅広いカテゴリーで活躍馬が出そうだ。母母Candy CaneはCandy Rideの全姉という良血で、Candy Rideとの姉弟クロスにも大注目だ。

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≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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