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【種牡馬辞典】Halo系

Halo

<プロフィール>
1969年生、米国産、31戦9勝
<主な勝ち鞍>
1974年ユナイテッドネーションズH(T9.5F)
<代表産駒>
Sunny's Halo(1983年ケンタッキーダービー)
グッバイヘイロー(1988年ケンタッキーオークス、CCAオークス)
サンデーサイレンス(1989年ケンタッキーダービー)
<特徴>
母Cosmahは名繁殖牝馬Natalma(Northern Dancerの母)の半姉で、その後もデインヒルやMachiavellian、バゴなど多くの活躍馬が出ている名門Almahmoud牝系でもある。The Tetrarchの5×5・6が特徴で、Hail to Reasonを父に持つ本馬はSun Princess≒Mahmoudの4×3を中心に父祖Royal Chargerを増幅した配合といえるだろう。短距離から長距離、芝でもダートでも勝利を挙げたが、重賞2勝がともに芝9.5F戦だったあたりが本馬の本質ではないだろうか。柔らかく、かつ俊敏であり、トップスピードも申し分なし。終盤勝負になりやすい現代日本競馬においては決して欠かせない名種牡馬である。サトノダイヤモンド、ヴィクトワールピサ、ロゴタイプ、ヴィルシーナ=ヴィブロス≒シュヴァルグランらが大箱でも小回りでも高いパフォーマンスを見せたことは本血脈の優秀さを物語るものであった。Turn-to、Sir Gallahad=Bull Dog、Pharamond、Mahmoudなどが共通するSir IvorやDrone、Nasrullah≒Royal Charger、Sir Gallahad=Bull Dog、Pharamondなどが共通するRed Godらとは相似な血の関係にあり、日本競馬史を代表する名馬ディープインパクトの瞬発力はHalo≒Sir Ivorの2×4に起因するといえるだろう。

-Devil's Bag

<プロフィール>
1981年生、米国産、9戦8勝
<主な勝ち鞍>
1983年米シャンペンS(D8F)
1983年ローレルフューチュリティS(D8.5F)
<代表産駒>
Devil His Due(1992年ウッドメモリアルS、1993年ガルフストリームパークH、ピムリコスペシャルH、1993、94年サバーバンH)
タイキシャトル(1997年スプリンターズS、1997、98年マイルCS、1998年安田記念、ジャックルマロワ賞)
<特徴>
名繁殖牝馬Balladeの2番仔であり、全姉に1980年米古馬牝馬チャンピオンGlorious Song(1980年ラカナダS、サンタマルガリータH、トップフライトH、1981年スピンスターS)、全弟に種牡馬Saint Balladoがいる良血馬。2歳時から圧勝に次ぐ圧勝で9戦8勝を挙げたが、クラシック前に骨折、そのまま引退となった。母母Miss SwapscoがMahmoud≒Mirzaの2×3という強い相似クロスを持ち、本馬は母父Herbagerを緩衝材に、Sun Princess≒Mahmoudの4×3を持つHaloを父に配した形。Lady Josephine→Mumtaz Mahal血脈のスピードが持ち味であり、父Haloの良さを継続した正統後継種牡馬といえるだろう。

---ロージズインメイ

<プロフィール>
2000年生、米国産、13戦8勝
<主な勝ち鞍>
2004年ホイットニーH(D9F)
2005年ドバイワールドC(D2000m)
<代表産駒>
ドリームバレンチノ(2014年JBCスプリント)
<特徴>
2005年ドバイワールドCを快勝したDevil's Bag系種牡馬。代々強い近親交配を避けてきた牝系にあり、本馬自身もDouble Jayの5×4以外にはインブリードを持たない配合形。父Devil His Dueもアウトブリードのため、本馬の血統内で強い影響力を持つのはSun Princess≒Mahmoud≒Mirzaの5・4×4・5を持つ父父Devil's Bagぐらいといえるだろう。種牡馬としてもDevil's Bag由来のスピードをベースに、馬場や距離を問わず活躍馬を輩出。芝とダートのGⅠ戦線で活躍したドリームバレンチノ(2014年JBCスプリント)がまさに父の特徴を表現した代表産駒であった。また、本馬自身のデビューが3歳5月だったこともあり、産駒の成長曲線も緩やか。2歳時に1勝クラス以上で勝利を挙げた産駒が僅か1頭しかいないことが、この傾向を強く表している。

--タイキシャトル

 <プロフィール>
1994年生、米国産、13戦11勝
<主な勝ち鞍>
1997年スプリンターズS(T1200m)
1997年マイルCS(T1600m)
1998年安田記念(T1600m)
1998年ジャックルマロワ賞(T1600m)
1998年マイルCS(T1600m)
<代表産駒>
ウインクリューガー(2003年NHKマイルC)
メイショウボーラー(2005年フェブラリーS)
サマーウインド(2010年JBCスプリント)
<特徴>
日仏の芝マイルGⅠを制した日本競馬史を代表する最強マイラー。3歳時には脚元の弱さからダートに使われ、1997年ユニコーンSではワシントンカラーやオースミジェットなど後のGⅠ上位勢を抑え込んで重賞初勝利を挙げた。次走のスワンSから芝マイル路線に本格参戦するとGⅠ5勝を含む8連勝を挙げ、1998年には年度代表馬のタイトルも獲得。芝とダートを問わず超一流の走りを披露し、外国産馬の出走制限がなければ2000mでもチャンピオンに輝けたであろう最強馬だ。Hail to Reasonの3×5やMahmoudの5・5×7・7などMumtaz Mahal系の血を豊富に持ち、父Devil's Bagの長所を継続した正統後継馬。種牡馬としては自身の実績と同じ芝短距離~マイルの活躍馬を多数輩出したが、Nijinskyをインブリードした産駒からはウイングレット(2005年中山牝馬S)やディアチャンス(2007年マーメイドS)といった中距離馬も複数誕生している。反対に、Storm Catとの組み合わせはニックス配合としても有名で、メイショウボーラー(2005年フェブラリーS)やレッドスパーダ(2014年京王杯SC)を筆頭にマイル以下に強いスピード馬を量産した。

-サザンヘイロー

<プロフィール>
1983年生、米国産、24戦5勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Hangar(1993年亜ダービー)
El Compinche(1995、97年パレルモ大賞)
More Than Ready(2000年キングズビショップS)
<特徴>
1986年スワップスS、スーパーダービーでともに2着と健闘したが、競走馬としては大成できず。ただ、引退後はアルゼンチンで10度のリーディングサイアーに輝き、種牡馬として大成功を収めた。Almahmoudの3×4を中心としたThe Tetrarch→Mumtaz Mahal的スピードが最大の特徴。2016年最優秀3歳牡馬サトノダイヤモンドはその母マルペンサがHaloの4×3を中心にAlmahmoudを5本持ち、自身はHaloの3×4・5で母母父サザンヘイローの持ち味を継続した形。主役になることは少ないだろうが、サンデーサイレンスが祖父、曾祖父と代を経ていく流れの中ではサンデーサイレンスらしさを再燃させる起爆剤になり得る存在だ

--More Than Ready

<プロフィール>
1997年生、米国産、17戦7勝
<主な勝ち鞍>
2000年キングズビショップS(D7F)
<代表産駒>
Roy H(2017、18年サンタアニタスプリントチャンピオンシップS、BCスプリント)
Uni(2018年メイトリアークS、2019年BCマイル、2019、20年ファーストレディS)
Rushing Fall(2017年BCジュベナイルフィリーズターフ)
<特徴>
北米とオセアニアを中心に数多くのGⅠ馬を輩出したサザンヘイロー系の名種牡馬。6代母La Troienneに遡る名牝系で、4代母Best SideはBimelech≒Belle of Troyの2×1という野心的な配合。さらに、母Woodman's GirlはBusanda≒Strikingの2×3を持つプレイメイトの仔Woodmanを父に配しており、代々牝祖La Troienneにこだわってきた牝系といえるだろう。また、母はNasrullah≒Royal Chargerの5・5×4・5も併せ持ち、本馬の父サザンヘイローのThe Tetrarch→Mumtaz Mahal血脈を強く刺激。非凡なスピードとパワーを武器に2000年キングズビショップSを制し、種牡馬としても自身の長所を余すことなく子孫に伝えている。

-サンデーサイレンス

<プロフィール>
1986年生、米国産、14戦9勝
<主な勝ち鞍>
1989年サンタアニタダービー(D9F)
1989年ケンタッキーダービー(D10F)
1989年プリークネスS(D9.5F)
1989年スーパーダービー(D10F)
1989年BCクラシック(D10F)
1990年カリフォルニアンS(D9F)
<代表産駒>
スペシャルウィーク(1998年日本ダービー、1999年天皇賞春、天皇賞秋、ジャパンC)
マンハッタンカフェ(2001年菊花賞、有馬記念、2002年天皇賞春)
ゼンノロブロイ(2004年天皇賞秋、ジャパンC、有馬記念)
ダイワメジャー(2004年皐月賞、2006年天皇賞秋、2006、07年マイルCS、2007年安田記念)
ディープインパクト(2005年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、2006年天皇賞春、宝塚記念、ジャパンC、有馬記念)
<特徴>
1990年代以降の日本の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬。父Haloの最大の特徴はSun Princess≒Mahmoudの4×3に由来するLady Josephine→Mumtaz Mahal牝系のスピードであり、Mahmoudを3代目に持つ母父Understandingが父の良さを継続している。ただ、母母Mountain Flowerはそれらに類するスピード血脈を持っておらず、反対にHyperionの3×4由来のスタミナに優れた配合形。この異系血脈がスパイスとなり、Royal Charger系をさらに昇華させることに成功した。爆発的な瞬発力が最大の持ち味であり、芝中距離での直線勝負には滅法強い。

-Saint Ballado

<プロフィール>
1989年生、加国産、9戦4勝
<主な勝ち鞍>
1992年アーリントンクラシックS(D9F)
<代表産駒>
Captain Bodgit(1997年フロリダダービー)
Ashado(2004年ケンタッキーオークス、CCAオークス、BCディスタフ)
Saint Liam(2005年ドンH、スティーヴンフォスターH、ウッドワードS、BCクラシック)
<特徴>
名繁殖牝馬Balladeの9番仔であり、全姉に1980年米古馬牝馬チャンピオンGlorious Song(1980年ラカナダS、サンタマルガリータH、トップフライトH、1981年スピンスターS)、全兄に1983年米2歳牡馬チャンピオンDevil's Bag(1983年米シャンペンS、ローレルフューチュリティS)がいる超良血。競走馬としてはGⅠタイトルを獲得できなかったが、種牡馬としては初年度産駒からCaptain Bodgit(1997年フロリダダービー)を出し、その後もAshado(2004年ケンタッキーオークス、CCAオークス、BCディスタフ)やSaint Liam(2005年ドンH、スティーヴンフォスターH、ウッドワードS、BCクラシック)など多くのGⅠ馬を輩出。2005年には北米リーディングサイアーにも輝いた。母母Miss SwapscoがMahmoud≒Mirzaの2×3という強い相似クロスを持ち、本馬は母父Herbagerを緩衝材に、Sun Princess≒Mahmoudの4×3を持つHaloを父に配した形。Lady Josephine→Mumtaz Mahal血脈のスピードが持ち味であり、父Haloの良さを継続した正統後継種牡馬といえるだろう。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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