【種牡馬辞典】サンデーサイレンス系
サンデーサイレンス
<プロフィール>
1986年生、米国産、14戦9勝
<主な勝ち鞍>
1989年サンタアニタダービー(D9F)
1989年ケンタッキーダービー(D10F)
1989年プリークネスS(D9.5F)
1989年スーパーダービー(D10F)
1989年BCクラシック(D10F)
1990年カリフォルニアンS(D9F)
<代表産駒>
スペシャルウィーク(1998年日本ダービー、1999年天皇賞春、天皇賞秋、ジャパンC)
マンハッタンカフェ(2001年菊花賞、有馬記念、2002年天皇賞春)
ゼンノロブロイ(2004年天皇賞秋、ジャパンC、有馬記念)
ダイワメジャー(2004年皐月賞、2006年天皇賞秋、2006、07年マイルCS、2007年安田記念)
ディープインパクト(2005年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、2006年天皇賞春、宝塚記念、ジャパンC、有馬記念)
<特徴>
1990年代以降の日本の血統地図をたった一頭で塗り替えた大種牡馬。父Haloの最大の特徴はSun Princess≒Mahmoudの4×3に由来するLady Josephine→Mumtaz Mahal牝系のスピードであり、Mahmoudを3代目に持つ母父Understandingが父の良さを継続している。ただ、母母Mountain Flowerはそれらに類するスピード血脈を持っておらず、反対にHyperionの3×4由来のスタミナに優れた配合形。この異系血脈がスパイスとなり、Royal Charger系をさらに昇華させることに成功した。爆発的な瞬発力が最大の持ち味であり、芝中距離での直線勝負には滅法強い。
-フジキセキ
<プロフィール>
1992年生、社台ファーム産、4戦4勝
<主な勝ち鞍>
1994年朝日杯3歳S(T1600m)
<代表産駒>
カネヒキリ(2005年ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、2005、08年ジャパンCダート、2006年フェブラリーS、2008年東京大賞典、2009年川崎記念)
Sun Classique(2008年ドバイシーマクラシック)
キンシャサノキセキ(2010、11年高松宮記念)
イスラボニータ(2014年皐月賞)
ストレイトガール(2015、16年ヴィクトリアマイル、2015年スプリンターズS)
<特徴>
大種牡馬サンデーサイレンスの初年度産駒であり、父に初めてのGⅠタイトルを献上した1994年最優秀2歳牡馬。翌1995年には弥生賞を圧勝してクラシックの最有力馬と目されたが、皐月賞目前に左前脚屈腱炎を発症し4戦4勝でターフを去った。引退後は父の代替種牡馬として人気を集め、芝・ダートを問わずスプリンターから中距離馬まで数多くの活躍馬を輩出。サンデーサイレンス×Le Fabuleux×In Realityの5代アウトブリードで、3代母Millicentは英ダービー馬Mill Reefの半妹。エイジアンウインズ(2008年ヴィクトリアマイル)やダイタクリーヴァ(2000年スプリングS)のようにクロスのうるさい母との相性が良く、Haloクロスのダノンシャンティ(2010年NHKマイルC)やストレイトガール(2015、16年ヴィクトリアマイル、2015年スプリンターズS)やグレイスティアラ(2005年全日本2歳優駿)、Worden≒Le Fabuleuxクロスのサダムパテック(2012年マイルCS)やドリームパスポート(2006年神戸新聞杯)、In Realityクロスのイスラボニータ(2014年皐月賞)、Mill Reef≒MillicentクロスのSun Classique(2008年ドバイシーマクラシック)やファイングレイン(2008年高松宮記念)など自身のクロスに対する反応も非常にいい。さらに、War Relic≒Eight Thirty≒Good Exampleが生じるDeputy Ministerとの組み合わせはダートの黄金配合として有名であり、カネヒキリ(2005年ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、2005、08年ジャパンCダート、2006年フェブラリーS、2008年東京大賞典、2009年川崎記念)を筆頭に数多くのダートチャンピオンが誕生している。
-ダンスインザダーク
<プロフィール>
1993年生、社台ファーム産、8戦5勝
<主な勝ち鞍>
1996年菊花賞(T3000m)
<代表産駒>
ツルマルボーイ(2004年安田記念)
ザッツザプレンティ(2003年菊花賞)
デルタブルース(2004年菊花賞、2006年メルボルンC)
スリーロールス(2009年菊花賞)
<特徴>
3代母Native PartnerはAmerican Flag≒Flaming Swordsを4×3でクロスした配合形で、繁殖牝馬としてFormidable(1977年ミドルパークS)、Flying Partner(1982年ファンタジーS)、Ajdal(1986年デューハーストS、1987年ジュライC、スプリントCS)などの活躍馬を多数輩出。その後も牝系を増幅する形で代を進めており、本馬もBlue Swords=Bluehazeを5×5でインブリードする配合形である。全姉ダンスパートナー(1995年オークス、1996年エリザベス女王杯)や全妹ダンスインザムード(2004年桜花賞、2006年ヴィクトリアマイル)などきょうだいにも活躍馬が多数出ており、近親からもスズカマンボ(2005年天皇賞春)やスマートロビン(2012年目黒記念)が出るなど日本を代表する名牝系のひとつといえるだろう。全8戦に跨った武豊騎手は、同じく主戦騎手であったスペシャルウィークに対してダンスインザダークに似ていると表現しており、サンデーサイレンス×Nijinsky系の長手の体形には共通する点が多かったようだ。本馬は母母父Key to the MintからRibot系の硬さも受け継いでいるが、ザッツザプレンティ、デルタブルース、スリーロールスと3頭の菊花賞馬を出すなどスペシャルウィーク同様に芝中長距離に強いサンデーサイレンス系種牡馬として活躍した。
-ステイゴールド
<プロフィール>
1994年生、社台コーポレーション白老ファーム産、50戦7勝
<主な勝ち鞍>
2001年香港ヴァーズ(T2400m)
<代表産駒>
ドリームジャーニー(2006年朝日杯FS、2009年宝塚記念、有馬記念)
オルフェーヴル(2011年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、2011、13年有馬記念、2012年宝塚記念)
ゴールドシップ(2012年皐月賞、菊花賞、有馬記念、2013、14年宝塚記念、2015年天皇賞春)
ウインブライト(2019年クイーンエリザベスⅡ世C、香港C)
インディチャンプ(2019年安田記念、マイルCS)
<特徴>
大種牡馬サンデーサイレンスの3世代目産駒で、母ゴールデンサッシュは名馬サッカーボーイの全妹という良血馬であったが、3歳クラシックは菊花賞に何とか出走できた程度。しかし、着実に力をつけて、4歳時の天皇賞春ではメジロブライトの2着に好走するまで成長した。その後も長期休養を一度も挟むことなく、香港ヴァーズを制したのは7歳時、キャリアにして50戦目のこと。晩成型で高齢になっても衰えない競走能力は母母父ノーザンテーストから受け継ぐものであり、これは産駒にもよく伝わっている。ドリームジャーニー(2006年朝日杯FS、2009年宝塚記念、有馬記念)は2歳チャンピオンに輝いたが、春秋グランプリ制覇を果たしたのは5歳時。ゴールドシップ(2012年皐月賞、菊花賞、有馬記念、2013、14年宝塚記念、2015年天皇賞春)やオジュウチョウサン(2016~20、2022年中山グランドジャンプ、2016、17、21年中山大障害)などの息の長い活躍もまさに父の成長曲線を表現している。 その他、Princely Giftの柔軟性、ノーザンテーストの成長力、デイクタスの激気性とスタミナ、サンデーサイレンスの瞬発力と血統表の字面通りの特徴をしっかりと受け継いでおり、特に父として天皇賞春4勝、菊花賞2勝を挙げた豊富なスタミナはサンデーサイレンス系種牡馬屈指といえるだろう。
--オルフェーヴル
<プロフィール>
2008年生、社台コーポレーション白老ファーム産、21戦12勝
<主な勝ち鞍>
2011年皐月賞(T2000m)
2011年日本ダービー(T2400m)
2011年菊花賞(T3000m)
2011年有馬記念(T2500m)
2012年宝塚記念(T2200m)
2013年有馬記念(T2500m)
<代表産駒>
ラッキーライラック(2017年阪神JF、2019、20年エリザベス女王杯、2020年大阪杯)
エポカドーロ(2018年皐月賞)
マルシュロレーヌ(2021年BCディスタフ)
<特徴>
史上7頭目のクラシック三冠馬。その他にも2011、13年有馬記念や2012年宝塚記念などグランプリレースには滅法強く、凱旋門賞でも2年連続2着と世界にもその強さを見せつけた歴史的名馬だ。ただ、その強さの裏では新馬戦や菊花賞のレース後に騎手を振り落としたり、阪神大賞典の2周目向正面で逸走したりと、父ステイゴールド譲りの気性の悪さもトレードマークであった。記録にも記憶にも残り、競馬ファンを虜にした競走馬といえるだろう。ノーザンテーストの4×3が特徴的な配合形で、全兄ドリームジャーニー(2006年朝日杯FS、2009年宝塚記念、有馬記念)と同様に高速ピッチ走法を武器に芝中長距離路線で活躍。種牡馬としては豊富なスタミナを主に産駒に伝え、芝とダートを問わずGⅠ馬を輩出している。
-スペシャルウィーク
<プロフィール>
1995年生、日高大洋牧場産、17戦10勝
<主な勝ち鞍>
1998年日本ダービー(T2400m)
1999年天皇賞春(T3200m)
1999年天皇賞秋(T2000m)
1999年ジャパンC(T2400m)
<代表産駒>
シーザリオ(2005年オークス、アメリカンオークス)
ブエナビスタ(2008年阪神JF、2009年桜花賞、オークス、2010年ヴィクトリアマイル、天皇賞秋、2011年ジャパンC)
ゴルトブリッツ(2012年帝王賞)
ローマンレジェンド(2012年東京大賞典)
トーホウジャッカル(2014年菊花賞)
<特徴>
1998年の日本ダービー馬であり、1999年ジャパンCでは凱旋門賞馬Montjeuなどの欧州の強豪を一蹴した「日本の総大将」。3代母ミスアシヤガワは無敗でクラシック2冠を制したコダマ(1960年皐月賞、日本ダービー)の半妹で、全兄にはシンツバメ(1961年皐月賞)などもいる。同馬はBlandfordの4×3、母母レデイーシラオキがHarina=プリメロの3×3などBlandford系のスタミナが強化されており、本馬はこの1/4の欧州血脈が牝系の土台となっている。母キャンペンガールはセントクレスピンの影響から気性の激しい馬で、その産駒も気の悪さが邪魔をしてなかなか出世ができず。ただ、本馬は母が出産後に命を落とし乳母に育てられたことも影響してか比較的落ち着いた馬であり、レースでも折り合いに苦労することはなかった。主戦の武豊騎手は、本馬に対して同じく主戦騎手として跨ったダンスインザダークに似ていると表現しており、サンデーサイレンス×Nijinsky系の長手の体形には共通する点が多かったようだ。ただ、本馬の方がよりクラシック的であり、ゴルトブリッツ(2012年帝王賞)やローマンレジェンド(2012年東京大賞典)などダートの大物を出した点も異なる。ダンスインザーダークと同じく父系は発展させられていないが、現在は繁殖牝馬の父として絶大な影響力を持っており、これはマルゼンスキー、さらにはBuckpasserと共通する点といえるだろう。
-アグネスタキオン
<プロフィール>
1998年生、社台ファーム産、4戦4勝
<主な勝ち鞍>
2001年皐月賞(T2000m)
<代表産駒>
ダイワスカーレット(2007年桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯、2008年有馬記念)
キャプテントゥーレ(2008年皐月賞)
ディープスカイ(2008年NHKマイルC、日本ダービー)
リトルアマポーラ(2008年エリザベス女王杯)
レーヴディソール(2010年阪神JF)
<特徴>
母母アグネスレデイーは1979年オークス馬、母アグネスフローラは1990年桜花賞馬という名牝系。4戦4勝で2001年皐月賞を制すも、日本ダービー前に左前浅屈腱炎を発症して引退。2009年に急性心不全で亡くなっており、競走馬としても種牡馬としても活躍期間は長くない。それでも、種牡馬入り後は初年度産駒からロジック(2006年NHKマイルC)を筆頭に多くの活躍馬を輩出し、2008年にはリーディングサイアーにも輝いた。内国産種牡馬の受賞は1951年のクモハタ以来51年ぶりの快挙であり、幅広いカテゴリーで活躍馬を輩出した点も高く評価できる。父サンデーサイレンスがSun Princess≒Mahmoudの5・4×5、母父ロイヤルスキーがNasrullahの3×4とMumtaz Mahal系のスピードを強く継承するのに対して、母母アグネスレディーが同血脈を持たずHyperionの5×5やLady Jurorの5×5で底力を補強している点が素晴らしい。配合に素直な種牡馬であり、Mumtaz Mahal系増幅型にはロジックやレーヴディソール(2010年阪神JF)などのスピード豊かな馬が多く、母母アグネスレティー増幅型にはダイワスカーレット(2007年桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯、2008年有馬記念)やリトルアマポーラ(2008年エリザベス女王杯)などスタミナも兼備した中距離馬が多く出ている。
-マンハッタンカフェ
<プロフィール>
1998年生、社台ファーム産、12戦6勝
<主な勝ち鞍>
2001年菊花賞(T3000m)
2001年有馬記念(T2500m)
2002年天皇賞春(T3200m)
<代表産駒>
ジョーカプチーノ(2009年NHKマイルC)
レッドディザイア(2009年秋華賞)
ヒルノダムール(2011年天皇賞春)
グレープブランデー(2011年ジャパンダートダービー、2013年フェブラリーS)
クイーンズリング(2016年エリザベス女王杯)
<特徴>
2001年菊花賞、有馬記念、2002年天皇賞春を制した名ステイヤー。3代母Suleikaに遡るスタミナ豊富なドイツ牝系で、Santa Lucianaを経由する系統からはビワハイジ→ブエナビスタを筆頭に日本で多くの活躍馬が出ている。本馬は胴が長く、穏やかな気性でもあり、JRAの芝2500m以上のGⅠを完全制覇。種牡馬としても牝系由来のスタミナを産駒に伝えており、ヒルノダムール(2011年天皇賞春)を筆頭に多くの長距離馬を輩出した。ただ、母父Law Society譲りの立ち肩、かつ頭の高い走りからパワーに優れた馬も多く、5代アウトブリードの配合形からも母馬を立てる種牡馬であったともいえるだろう。Northern Dancerを1本も持たない点も大きな特徴であり、ヒルノダムールやレッドディザイア(2009年秋華賞)などNorthern Dancer系の強いインブリードを持つ繁殖牝馬との間に生まれた活躍馬も多い。
-ゴールドアリュール
<プロフィール>
1999年生、追分ファーム産、16戦8勝
<主な勝ち鞍>
2002年ジャパンダートダービー(D2000m)
2002年ダービーグランプリ(D2000m)
2002年東京大賞典(D2000m)
2003年フェブラリーS(D1800m)
<代表産駒>
エスポワールシチー(2009年ジャパンCダート、2009、10、12年かしわ記念、2009、12、13年マイルCS南部杯、2010年フェブラリーS、2013年JBCスプリント)
スマートファルコン(2010、11年JBCクラシック、東京大賞典、2011年帝王賞、2012年川崎記念)
コパノリッキー(2014、15年フェブラリーS、JBCクラシック、2014、16、17年かしわ記念、2016年帝王賞、2016、17年マイルCS南部杯、2017年東京大賞典)
ゴールドドリーム(2017年フェブラリーS、チャンピオンズC、2018、19年かしわ記念、2018年帝王賞)
クリソベリル(2019年ジャパンダートダービー、チャンピオンズC、2020年帝王賞、JBCクラシック)
<特徴>
サンデーサイレンス産駒唯一のダートGⅠ馬。骨太で筋骨隆々といった典型的なダート馬体型ではなく、芝馬とも見えるスマートで伸びやかなつくりをしており、実際に2002年日本ダービーでは5着と芝GⅠでも入着した。とはいえ、ヨーロッパの重厚な血脈で構成された母の特徴を強く受け継いだ弊害か、四肢の回転が遅く、サンデーサイレンス系らしい素軽さが欠如。ただ、パワーとタフさが求められるダートではその特徴が最大の武器となり、2003年フェブラリーSなどGⅠ/JpnⅠ4勝、2002年には最優秀ダートホースにも輝いた。種牡馬としてもコパノリッキー(GⅠ/JpnⅠ11勝)、エスポワールシチー(GⅠ/JpnⅠ9勝)、スマートファルコン(GⅠ/JpnⅠ6勝)など数多くのダートチャンピオンを輩出。自身と同じような先行粘着型のダート中距離馬が多く、ストライド走法で、揉まれ弱いVaguely Nobleの血を引くことからもストレスの少ない競馬を好む傾向にもあった。自身のパワー源である母父Nureyevを増幅する配合がセオリーで、クリソベリル(2013年ジャパンダートダービー)=クリソライト(2019年ジャパンダートダービー、チャンピオンズC、2020年帝王賞、JBCクラシック)兄弟がその好例。RobertoやMr.ProspectorでNantallah≒Nashuaを刺激する形も悪くなく、コパノリッキーが代表的な成功例だ。
-ゼンノロブロイ
<プロフィール>
2000年生、白老ファーム産、20戦7勝
<主な勝ち鞍>
2004年天皇賞秋(T2000m)
2004年ジャパンC(T2400m)
2004年有馬記念(T2500m)
<代表産駒>
サンテミリオン(2010年オークス)
マグニフィカ(2010年ジャパンダートダービー)
<特徴>
2004年JRA年度代表馬。芝中長距離路線で活躍し、2004年には史上2頭目となる秋古馬三冠(天皇賞秋→ジャパンC→有馬記念)を達成した。母ローミンレイチェル(1994年バレリーナH)はアメリカのダートマイラー。本馬自身もほぼ北米血脈で組み上げられており、母父マイニング譲りの立ち肩からも産駒は芝・ダートを問わず活躍した。その反面、重厚な欧州血脈が少なく、底力に欠ける傾向にも。牝馬限定戦や世代限定戦特有の緩い流れを好み、唯一のJRAGⅠ馬サンテミリオンも3歳牝馬限定GⅠオークスを制している。
-ネオユニヴァース
<プロフィール>
2000年生、社台ファーム産、13戦7勝
<主な勝ち鞍>
2003年皐月賞(T2000m)
2003年日本ダービー(T2400m)
<代表産駒>
アンライバルド(2009年皐月賞)
ロジユニヴァース(2009年日本ダービー)
ヴィクトワールピサ(2010年皐月賞、有馬記念、2011年ドバイワールドC)
ネオリアリズム(2017年クイーンエリザベスⅡ世C)
<特徴>
2003年皐月賞、日本ダービーを制し、最優秀3歳牡馬に輝いたクラシック二冠馬。母母Silken WayはSt. Simon系の血筋を豊富に引き継ぎ、母ポインテッドパスはHyperionの5・7×4やFair Trialの7×5などを持つイギリス産馬。輸入前には仏2歳GⅢ馬Fairy Pathなどを出したが、日本ではサンデーサイレンスとの間にチョウカイリョウガやアグネスプラネットなどの芝中長距離馬を多く輩出している。母の9番仔である本馬は長い繋と曲飛節が大きな特徴で、瞬発力自慢が揃ったサンデーサイレンス産駒の代表馬では異質な存在。柔らかさと緩さが同居した馬体で基礎スピードや瞬発力に欠く反面、重馬場の日本ダービーを制した豊富なスタミナや底力が最大の持ち味であった。種牡馬としても機動力と底力に長けた産駒を多く出し、皐月賞を制したアンライバルド(2009年皐月賞)やヴィクトワールピサ(2010年皐月賞、有馬記念、2011年ドバイワールドC)、不良馬場の日本ダービーを制したロジユニヴァース(2009年日本ダービー)など代表産駒は父の特徴を強く継承している。さらに、ダート適性が高い点も特徴的。純粋なダート血統馬ではないためGⅠ級となると芝に限られるが、下級条件の好走率ではダートが芝を大幅に上回っている。
-ダイワメジャー
<プロフィール>
2001年生、社台ファーム産、28戦9勝
<主な勝ち鞍>
2004年皐月賞(T2000m)
2006年天皇賞秋(T2000m)
2006年マイルCS(T1600m)
2007年安田記念(T1600m)
2007年マイルCS(T1600m)
<代表産駒>
カレンブラックヒル(2012年NHKマイルC)
コパノリチャード(2014年高松宮記念)
メジャーエンブレム(2015年阪神JF、2016年NHKマイルC)
レーヌミノル(2017年桜花賞)
アドマイヤマーズ(2018年朝日杯FS、2019年NHKマイルC、香港マイル)
<特徴>
2006、07年と2年連続最優秀短距離馬に輝いた名マイラー。母母スカーレツトインクから繋がる名牝系で、母スカーレットブーケは重賞4勝、3/4同血の妹ダイワスカーレット(2007年桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯、2008年有馬記念)もGⅠ4勝という超良血馬だ。体高169cmと上背があり、そのスケールの大きい骨格をこれまた強靭な筋肉の鎧が覆っている。胸囲が大きく心肺機能も素晴らしい。それでいて、重苦しさや窮屈さを感じさせない均整の取れた好馬体。父サンデーサイレンス譲りのスピードで上がり3F33秒台の2004年皐月賞を制し、母スカーレットブーケから受け継いだ先行力と粘り強さで厳しい流れの古馬マイル路線を統一した。また、3代父Hail to Reasonと3代母Consentidaは血統構成が似ており、両ラインの良さが活きた配合形にも見どころあり。スカーレツトインク牝系の活躍馬のほとんどがサンデーサイレンスを併せ持っていることはここに起因すると考えられる。また、仕上がりも早く、2015年には大種牡馬ディープインパクトを下して2歳リーディングサイアーにも輝いた。ただ、決して早熟種牡馬ではなく、母父ノーザンテーストの成長力も兼備。カレンブラックヒル(2012年NHKマイルC)やダイワマッジョーレ(2013年京王杯SC、2015年阪急杯)の6歳時の復活は実にノーザンテースト的といえる走りであった。
-ハーツクライ
<プロフィール>
2001年生、社台ファーム産、19戦5勝
<主な勝ち鞍>
2005年有馬記念(T2500m)
2006年ドバイシーマクラシック(T2400m)
<代表産駒>
ジャスタウェイ(2013年天皇賞秋、2014年ドバイデューティフリー、安田記念)
Yoshida(2018年ターフクラシックS、ウッドワードS)
スワーヴリチャード(2018年大阪杯、2019年ジャパンC)
リスグラシュー(2018年エリザベス女王杯、2019年宝塚記念、コックスプレート、有馬記念)
ドウデュース(2021年朝日杯FS、2022年日本ダービー)
<特徴>
背が高く、胴長で、四肢や首がすらっと伸びて、小顔で男前。前から見るとガニ股に映る立ち姿はお世辞にも格好良いとは言えないが、均整の取れた好馬体にはモデルのような美しさを感じる。大きなフットワークで走り、母父トニービン譲りの息の長い末脚が最大の武器。ディープインパクトのような俊敏さはないが、スタミナと持続力はワールドクラスのモノを持っていた。また、母母父Lyphardの影響から先行粘り込みがベストの戦法だけに、先行策が板についてきた矢先の引退は実に惜しい。無事ならさらにGⅠタイトルを積み重ねたに違いない。種牡馬としても自身に似た芝中長距離馬を多数輩出。トモの緩い馬が多い反面、成長力に優れている点も自身によく似ている。Balladier≒Blue Larkspurの3・4×3など北米血脈で固められた3代母My Bupersを増幅することが出世のポイントだ。
-ブラックタイド
<プロフィール>
2001年生、ノーザンファーム産、22戦3勝
<主な勝ち鞍>
2004年スプリングS(T1800m)
<代表産駒>
キタサンブラック(2015年菊花賞、2016年ジャパンC、2016、17年天皇賞春、2017年大阪杯、天皇賞秋、有馬記念)
<特徴>
日本近代競馬の結晶ディープインパクトの全兄。450キロ前後の小柄な弟に対して、本馬は500キロ前後の恵まれた馬格を有し、セレクトセールでの落札額(ブラックタイド:当歳セレクトセール9600万円、ディープインパクト:同7000万円)は本馬が上であった。また、競走馬としてのタイプも異なり、非凡な瞬発力を武器に上がり3F33秒台を連発した弟に対して、本馬は先行して34~35秒台の末脚で渋太く粘るのが持ち味。代表産駒であるキタサンブラック(2015年菊花賞、2016年ジャパンC、2016、17年天皇賞春、2017年大阪杯、天皇賞秋、有馬記念)のバテないタフさはまさに父の特徴を受け継いだ証といえるだろう。
-ディープインパクト
<プロフィール>
2002年生、ノーザンファーム産、14戦12勝
<主な勝ち鞍>
2005年皐月賞(T2000m)
2005年日本ダービー(T2400m)
2005年菊花賞(T3000m)
2006年天皇賞春(T3000m)
2006年宝塚記念(T2200m)
2006年ジャパンC(T2400m)
2006年有馬記念(T2500m)
<代表産駒>
ジェンティルドンナ(2012年桜花賞、オークス、秋華賞、2012、13年ジャパンC、2014年ドバイシーマクラシック、有馬記念)
サトノダイヤモンド(2016年菊花賞、有馬記念)
フィエールマン(2018年菊花賞、2019、20年天皇賞春)
グランアレグリア(2019年桜花賞、2020年安田記念、スプリンターズS、2020、21年マイルCS、2021年ヴィクトリアマイル)
コントレイル(2019年ホープフルS、2020年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、2021年ジャパンC)
<特徴>
国内外で14戦12勝の競走成績を残した日本競馬を代表する歴史的名馬。入厩時に厩務員が本当に牡馬なのかと疑い股間を覗いたというエピソードがあるくらい華奢な体つきで、馬格に恵まれた全兄ブラックタイドと比較すると決して見栄えのする馬ではなかった(ブラックタイド:当歳セレクトセール9600万円、ディープインパクト:同7000万円)。ただ、ネコ科のような身体の柔軟性を持ち、小柄ながらも馬体のバランスは文句なし。バイオメカニズム的にも理にかなった走り方だったと言われている。母ウインドインハーヘアは現役時代に独GⅠアラルポカルを制した中長距離馬。その母Highclereは父がFair Trialの3×3、母がHyperionの3×2とそれぞれインブリードが強い。「Hyperion+Son-in-Law」は粘り強さや底力を増すニックスとして有名で、さらにその仔ウインドインハーヘアはFair Trialを2本、Hyperionを1本追加した配合。ディープインパクトといえば瞬発力というイメージが強いが、2006年天皇賞春でレコード勝ちを挙げられたのは母方のFair TrialやHyperionからスタミナや底力を受け継いだおかげというわけだ。また、代名詞である瞬発力は父サンデーサイレンスから受け継ぐものであり、さらにはHalo≒Sir Ivorの2×4も手助けとなっている。柔らかくバネのような体質はここに由来し、ディープインパクト産駒の切れるイメージはサンデーサイレンスやHalo≒Sir Ivorらしさといえるだろう。種牡馬としても2012年から11年連続でリーディングサイアーに輝いており、日本ダービー馬においては父である大種牡馬サンデーサイレンスを上回る7頭を産駒から輩出している。さらに、産駒の活躍は日本にとどまることはなく、ヨーロッパやオーストラリアなどでもGⅠ馬を量産。1200~1600mのGⅠ馬も一定数出ているが、本馬のミオスタチン遺伝子型がT:T型(中長距離型)であることからも、自身の戦績通り芝中長距離向きの資質を子孫に伝えている。
--キズナ
<プロフィール>
2010年生、ノースヒルズ産、14戦7勝
<主な勝ち鞍>
2013年日本ダービー(T2400m)
<代表産駒>
アカイイト(2021年エリザベス女王杯)
ソングライン(2022年安田記念)
<特徴>
2013年日本ダービー馬。3代母Fiji(1963年コロネーションS)、母母Pacific Princess(1976年デラウェアオークス)から繋がる名牝系で、母キャットクイルは本馬のほかにファレノプシス(1998年桜花賞、秋華賞、2000年エリザベス女王杯)やサンデーブレイク(2002年ピーターパンS)などを輩出。近親にはビワハヤヒデ・ナリタブライアン兄弟などもおり、日本競馬を代表する名牝系のひとつといえるだろう。本馬自身はディープインパクト×Storm Catの瞬発力、Burghclere≒Fijiのスタミナを武器に世代の頂点に立ち、種牡馬としてもファーストシーズンサイアーチャンピオンに輝くなど初年度から大活躍。芝もダートも、短距離から超長距離まで多彩な産駒を輩出しており、大物は少ないものの、非常にアベレージの高い種牡馬として今後も期待される。
≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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