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病気が奪うのは健康「だけ」なのか?(潰瘍性大腸炎の自分の場合)

こんにちは。

いきなりですが、僕は潰瘍性大腸炎という病気を罹患しています。

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。(指定難病情報センターより引用 https://www.nanbyou.or.jp/entry/62)

平たく言えば、めっちゃ腹痛くて常に血便出てるよ(進行度による)っていう病気です。

これが結構大変で、軽症の時であってもいつ便意をもよおすかわからない上に我慢が難しい(常人の3倍ぐらい早く限界が来ます)し、中等症~重症になってくると常に激痛耐えがたい便意などの症状に襲われることになります。


以下具体例

・腹痛のせいで夜中何度も起きるハメになる

・食事が喉を通らない

・食べれても気持ち悪くなって吐いてしまう

・高熱が出る

・トイレに引きこもらざるを得なくなる

・様々な行動の制約(バスに乗れない、腹痛で物事に集中できない、トイレの無い空間には居られない、旅行に行けないetc…) 

普通に、うんこを漏らしてしまう

これは僕の例ですが、潰瘍性大腸炎に罹患した患者はほとんどがこういう症状になるのではないかと思います。

汚い話で恐縮ですが、一番下は結構深刻な悩みの種です。とにかく我慢がきかないので近くにトイレが無かったらまあ漏らしてしまうことも多いです。救い(?)は漏らしたとしても血と腸液が混ざったブツが少量出てくる(常に下痢してるので一回の量は少ない)だけなので見た目やニオイはあまり無いことです(漏らしたという事実は当然重くのしかかってきますが)。成人用紙オムツを本気で検討していた時期もありました。

この病気、厄介な事に発症する原因がわかっていません。僕の場合は部活などでストレスが溜まりに溜まった時に血便が出始めて、そこで病院に行ったことで潰瘍性大腸炎とわかったのですが、ストレスは病気の発症と関係ないそうです。

ついでに、一生治りません。  

正確には、症状が現れなくなる寛解という状態はあるのですが、寛解後も普通に発症します。僕は現在潰瘍性大腸炎の活動期ですが、1年半ほどの寛解期を経て通算二度目の活動期となっています。

ちなみに患者は若者に多く、男性なら20代前半、女性は20代後半が発症のピークとなっています。さらに昔よりも今の方が患者数は増えています。なのでこれを見ている画面の前の若者の皆さんも全然罹患する可能性はあります。とはいえ、発症する原因がわかっていない病気ですから今やれる対策などはありません。食生活に気を付けるぐらいなら神に祈っといた方がマシでしょう。

こんな感じで中々厄介な病気なので、潰瘍性大腸炎は国指定の難病となっています(難病情報センターに載っているので当然ですが)。ですが患者数はかなり多く平成25年度時点の患者数は166,060人です。難病の中でもかなりポピュラーな難病といえるでしょう。

通常、難病に罹患した患者に対しては特定医療費受給者証という物が与えられ、月の医療費自己負担額は最大でも○万円まで、などといった補償を受けられます。

しかし、潰瘍性大腸炎に関してはあまりにも患者数が多いため寛解期が続いていたり症状が軽度であるといった場合には上の補償が受けられなくなってしまうことがあります。

とまあ、ここまで潰瘍性大腸炎の子細を説明してきましたが、いよいよ本題です。

僕は大学2年の時に潰瘍性大腸炎を発症しました。そこから2年経って思うことは

「病気」というものの本質を全く知らなかった

ということです。

潰瘍性大腸炎になり、まず健康を失いました。当然ですが。

そこで健康を取り戻すために病院に通い出します。症状が酷いときは週1回、寛解期でも経過観察のために2ヶ月に1回は病院に通うことになります。

僕の通っている大学病院はいつも患者でごった返しています。朝9時の問診を予約していても実際に呼ばれるのは11時頃、会計など全て終えた頃には12時頃になっていることはザラで、一日の半分を病院で過ごしてしまうことになります。

また、トイレにいる時間が冗談抜きで一日の3分の1ぐらいだった時期もありました。今は症状がやや落ち着いてるのでそこまででもないですが。酷いときは腹痛のせいで夜中に3回ほど起きていました。このように、あくまで僕の場合ですが、病気によってかなりの時間を奪われています。

それ以上に病気が僕から奪っていったもの。それは自尊心です。

病気になるとできないことが増えます。冒頭でも説明しましたが、バス主体の旅行は諦めざるを得なくなりました。電車とかなら途中下車すれば良いのでまだマシですが、長時間のバス移動なんか絶対にできません。トイレがついてるバスなんてこの世にそうあるものではないし、例えついてても気持ちとしてあまり使いたくないですよね。海外旅行なんて尚更ダメです。僕はオーストラリアぐらいしか海外は行ったことがないのですが、シドニーでさえもトイレは綺麗ではありませんでした。オーストラリアほどの先進国であってもそのレベルです。若者に人気の東南アジアなんて論外でしょう。トイレ事情で言えば日本が一番充実してるのは間違いないです。

また、潰瘍性大腸炎の患者特有の「できないこと」としてモノが食べられなくなるというのがあります。僕は今でこそ症状が落ち着いたおかげで(?)油断して食べまくっていますが、一番酷い時期は

朝:おかゆorゼリー
昼:何も食べないorうどん
夜:おかゆとサラダチキンほんの少し

みたいな食生活を毎日送っていました。腸に負担をかけてはいけないので、脂肪分の多い食べ物や野菜類は消化しにくく基本的に食べられません。そうでなくても腹痛が酷いと食べる気持ちが失せるし、なんとか食べてもその後吐いてしまうこともありました。栄養が足りないから常にダルいしガンガン痩せます。上記以外にも食べられないものは多く、美味しいものを食べることが生き甲斐でもあった自分の生活からどんどん光が消えていくようでした。

今上げた二つ以外にもできないことは沢山あります。僕は公務員志望でしたが、予定していた試験が受けられなくなったことがありました。

このように、病気になるとできないことが積み重なります。すると人間はすっかり自尊心を失ってしまうのです。例えそれが病気によるもので、快方に向かえば再びできるようになる、そう頭では思っていても、病気であるという事実がのしかかっている内は「どうせ自分なんて…」と思い詰めてしまうのです。

僕はそれと就活の時期が重なったのが最悪でした。面接で落とされていく内に「病人だから、社会は受け入れてくれない」などと考えるようになってしまいます。もちろんそれは言い訳です。面接の時は病気である事を必死で隠していますし(病気もちを積極的に雇いたい会社はないですよね)、それならば落とされたのは自分の実力に他なりません。でも、病気持ちの自分が社会にとって本当に必要とされているのかということを考えるようになってしまった。死のうかなとまでは行きませんが、すべてを投げ出してしまいたくなることは多々ありました(今も、少し)。

今でこそ病状は軽くなっていますが、以前は本当に毎日が憂鬱でした。何もできないほどお腹が痛い。そのために病院へ行かなければならない。でも世界は自分のペースに合わせてくれない…

もちろん、病人なんてこの世に星の数ほど存在します。自分より辛い思いをしている人はゴマンといるし、このnoteを読んだ人は「こいつは病気という事実に甘えているだけだ」という感情を抱く方もいらっしゃると思います。

ただ、これが自分が体験したリアルであることは間違いないのです。このnoteで「病気になったら実際どんなことが待ち受けているのか?」ということを健康な人々に伝えたい。そして、自分を気にかけてほしい訳ではなく、潰瘍性大腸炎の患者、ひいてはこの世に星の数ほどいる病人を少しだけ気にかけてみてほしい。そう思ってくれたら、少しはこのnoteを書いた甲斐があるというものです。

おわり

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