2023年注目馬&注目騎手 特別版・俺はこの騎手を買いたい
12月17日。クリスマスも近づき、トイザらスの足音が聞こえる中、マスクに1通のお便りが届いた。
「マスクマンさんこんばんは」
こんばんは。
「突然なんですけど時間があるときに今年初G1を取った騎手……要するに丸田、和生、坂井、裕紀人なんですけど、この4人のエピソードや注目ポイントなどを簡単に紹介するnoteを書いていただけませんか?」
あー、なるほどね、そんな依頼か。
面倒だからやだと最初返信しようとしたが、
言われてみると、確かにここらへんにスポットライトを当てるnoteは見たことないなあ。
武さんや福永、川田を取り上げたnoteはマスクが見てないだけで、たぶんこの広いネットの海だしどこかに落ちてるんだと思う。でも『2023年は丸田が来る!』なんてnoteはたぶんないな。
まー、いうて丸田は2022年にGIジョッキーになっちゃったもんね。丸田だけじゃない、和生、荻野極に瑠星、裕紀人と、2022年は新たなGIジョッキーが多数生まれた1年だった。
ああ、ムルザバエフもそうだね。まー、海外で勝ってる人はノーカン。
GI勝って、より注目度が増しているジョッキーたちを取り上げる、そんなコーナーがあってもいいなって思ったんだ。面倒だったけど、年末年始は少し時間もあるから正月の読み物として書いていきたい。
坂井瑠星
●2022年 それぞれの勝ち星
8位 98勝 坂井瑠星
12位 73勝 横山和生
36位 35勝 石川裕紀人
70位 11勝 丸田恭介
瑠星凄いな、98勝。7年目でまもなく100勝、順調なら来年100勝ジョッキーの仲間入りだろう。
乗り馬の質が上がったのはもちろんある。98勝中、サンデーレーシング17勝。ノーザン関西の『オキニ』だから、質のいい馬が次々に回ってくるようになったんだよね。
秋華賞を勝ったスタニングローズもサンデーレーシング。オープンの大阪スポーツ杯を勝ったデュアリストや、3つ勝ってるマッドクールと走る馬がよく回ってきた。
●2022年 サンデーレーシングで勝った騎手
18勝 ルメール
17勝 坂井瑠星
7勝 横山武史
6勝 C.デムーロ
6勝 川田将雅
これ凄くない?確かにサンデーレーシングはいい馬が多いけど、あれだけ馬が回ってる武史で7勝。瑠星は17勝で、ルメールと1勝差に迫る2位の勝ち星を残しているんだよ。
たぶんルメールがノーザンからいい馬が回ってきて勝ちまくっているイメージを持っている人間は多いと思うけど、ほとんど同数の勝ち星を挙げているのはなかなかのものさ。
●2022年 坂井瑠星とサンデーレーシング
17.7.3.25 勝率32.7% 複勝率51.9%
※ルメール 18.11.10.30 勝率26.1% 複勝率56.5%
※川田将雅 6.2.3.2 勝率46.2% 複勝率84.6%(笑)
いや、川田の数字がおかしいだけで瑠星の複勝率51.9%っていうのも立派なもんだと思うよ。半分は好走させているってことだしね。川田の複勝率84.6%は何度見ても笑ってしまう。
サンデーレーシングからいい馬が回ってきたから瑠星の成績が伸びた、というわけではない。もちろん一因ではあるんだけど、そもそも結果残していなかったらそんな馬回ってこないからね。
●坂井瑠星の成績
・2020年 JRA640回騎乗
4角1番手56回 2番手92回 3番手44回 計192回
4角3番手以内30.0%
・2021年 JRA541回騎乗
4角1番手51回 2番手88回 3番手50回 計189回
4角3番手以内34.9%
・2022年 JRA778回騎乗
4角1番手129回 2番手127回 3番手82回 計338回
4角3番手以内43.4%
お分かりいただけたであろうか。年々前への意識が高まっているのだ。もちろん乗り馬のレベルも上がったんだけど、前への意識は高まったなと思う時は増えた。
例えば11月5日の土曜東京9R神奈川新聞杯。テン乗りでライラボンドに乗った瑠星の騎乗は素晴らしかった。
結果だけ見ると2番手に行ったライラボンドが逃げ馬を交わして勝っただけ、に思えるんだけど、ライラボンドという馬は春に1200mを使っていて、それまでの2勝が1400mという馬。折り合いが難しいんだよね。
マイルだと折り合い重視になるから、それまでの3戦は中団から後ろのポジションから差す競馬だった。それをさ、2番手に出していって流れに乗せて押し切っちゃったんだよ。
難しい馬を番手に出して残してしまうんだから、瑠星上手いなと思ったもんだよ。ヨーロッパなど海外に何度も遠征するたびに折り合いが上手くなっていると感じるが、現代競馬は前で流れに乗せる意味が以前より大きくなっている。
こんなライラボンドみたいな乗り方されちゃったら、今後折り合い難しい差し馬を突然先行させる可能性は頭に入れたいよね。
以前からちょっと怪しいなと感じているのはダートの内枠。最近だと境港特別のスーパーチーフで???という騎乗があったが、ダートの内枠を克服してくれば年間100勝どころか関西リーディング3位以内は堅いと思う。
余談だが、2022年馬主別勝ち星数で2位なのは9勝のスリーエイチレーシング。3位のシルク、キャロットの4勝の倍以上勝っている。
ドルチェモアがサウジアラビアRCを和生で勝ったのに、朝日杯はオーナーサイドがかわいがっている瑠星にチェンジして勝った。
普通重賞も勝ってるのにGIは若手に乗り変わりなんていうパターンはないからね。いかにかわいがられているかが分かる。当然これからも『勝てる馬』が回ってくるわけで、スリーエイチ×瑠星は2023年もマーク。
●2023年注目 瑠星が騎乗するであろう注目馬
マッドクール
1200mで3戦3勝、怒涛の勢いでオープン入りした注目株。これは強い。
●今年の中京芝1200m 勝ち時計ベスト5
1:06.2 セントウルS メイケイエール
1:07.1 鞍馬S(OP) シゲルピンクルビー
1:07.2 知立S(3勝クラス) マッドクール
1:07.5 豊明S(3勝クラス) ショウナンバニラ
1:07.7 知多特別(2勝クラス) マッドクール
メイケイエールのセントウルSがダントツ。これは普通に凄いタイムで改めてメイケイエールの能力の高さが分かる。
ただセントウルSと鞍馬Sはどちらも開幕週なんだよね。かなり速い馬場でもあった。改めて計算したんだが、セントウルSの日の馬場と、知立Sの日の馬場、馬場差は約1秒違う。
机上の計算ではあるが、仮にマッドクールがセントウルSの馬場で知立Sを走っていたら1:06.2換算。セントウルと同タイムなんだよね。
もちろんこれは机上の計算だし、実際そんなに上手いことはいかないが、知立S当日の馬場差を考えれば1:07.2は相当いいんだ。しかもゲートそんなに出てないのにこの数字。
阪神JFの裏開催で瑠星は乗れなかったが、たぶん次のシルクロードSでは瑠星が戻ってくる。以前より更に控えて競馬できるようになっているし、これは重賞で勝ち負け、GIでもチャンスがある馬。期待している。
●2023年注目 瑠星が騎乗するであろう注目馬
フラーレン
こちらもなかなかいい。4月の東北Sを使ってから9月のJRAアニバーサリーSまで5カ月くらい休んだんだけど、アニバーサリーで+12kgだったように一回り二回り大きくなって、馬体に幅が出てきた。
レディスプレリュードのパドックを見て驚いたもん。その成長度合いに。たぶん今本格化するところ。まー、レースでは2番手を追走するも、テリオスベルがまくって残り1000mから11.3と速いラップが入ってしまって最後止まってしまった。あれは展開が厳しい。
2走前の勝ち時計1:50.5は馬場がかなり速かったんだけど、それにしてもなかなか悪くない数字で、軌道に乗っていると思う。左回りならよりいい馬だが、右回りの次走TCK女王盃でもチャンスはあるのではないかな。外から先行できる形ならよりいい。
横山和生
全国リーディング12位、関東リーディング4位の73勝を挙げた和生も、2022年は飛躍の歳になった。
そうか、和生も12年目なのか。競馬学校時代から面識があると考えたら俺も結構長いキャリアになったな。
順調なジョッキーキャリアを歩んだかというと、決してそうではないだろう。ルーキーイヤーは4勝、2018年には年間9勝。完全に終わりかけたところからの急上昇さ。
研究してるし、上手いし、もったいないなと思っていた4、5年前から、まさか凱旋門賞の人気馬に乗るまでになるとは思わなかったよ。
やっぱりどうしても『ノリさんの息子』という目で見られていた時期はある。オヤジさんはよく分からん乗り方して勝っちゃうイメージが強いが、実は細かい思考の積み重ねを凝縮した騎乗なんだよな。和生も色々考えている感じは伝わってきたんだけど、馬質が追い付いていなかった。
それが今は関西の有力厩舎からの依頼も増えて、和生の思考についてこられる馬が増えた。
武史も思い切りのいい競馬が多いのだが、和生はもしかすると武史以上。オヤジさんにより近いのは和生なのでは?と思うことが多い。
特に目立つのは和生のまくり。夏の札幌でひたすらまくって好走していた。ただまくりを打つのではなく、JRA競馬場の中でもトップクラスにまくりやすい札幌で多くやっている点もポイント。
このディナースタをはじめ、カフジペンタゴン、ホウオウユニコーン、ゴールドギア…夏の札幌では向正面が向かい風だろうがまくっていたね。
まー、よく考えると理にかなっている気もする。同時期に新潟競馬が開催されていて、上がり特化型は新潟を使われる。札幌にいるということは、いい感じに言うと長い脚を使える、ちょっと悪く言うと切れない。そういう馬で早めに踏んでいくタイミング勘の良さは和生の武器。
今年の春、東京開幕週の2000m未勝利でオメガオリーブに乗ってまくったレースがある。
主要4場でもこういう競馬をしてくるのが和生。開幕週で前が残る馬場というのを頭に入れて、序盤スローだと感じた瞬間に踏んでいった。こういう感性は武史以上だと思うんだよね。
●横山和生 2022年の競馬場別複勝率(30回以上騎乗)
札幌 41.2%
小倉 39.5%
中山 31.1%
阪神 30.8%
東京 27.9%
函館 22.9%
札幌、小倉、この2場はコース形状的に早めに踏んでも持ちやすい競馬場ではある。対して直線が長くて地力勝負になりごまかしにくい東京、あとは小回り過ぎて動きにくい函館、この2場の成績はそこまで良くない。
面白いよね、同じ北海道なのに、札幌と函館で成績がダブルスコアで違うんだから。和生の乗り方が出ていると思うよ。
レース後のコメントも、調教後のコメントも、理論的だし、分かりやすい。偉大なオヤジを持って色々言われたこともあっただろうが、横山和生は横山和生。弟より上手いと思う時は多々ある。来年も期待しているジョッキーの1人さ。
●2023年 和生が騎乗するであろう注目馬
ウシュバテソーロ
東京大賞典を勝った馬をこんなところで改めて注目馬に挙げるとか、そんな恥ずかしいことはあまりしたくなかったんだけど、あえて、ここに書いておきたい。
なにせ東京大賞典の数字が思ったより低いのだ。もっとやれるという意味を込めて、だね。
●22年東京大賞典
12.4-12.1-12.8-13.4-12.8-11.9-11.7-12.7-12.4-12.8
序盤のスローを考えると、ラスト2F12.4-12.8はもっと出てほしかったのが正直なところ。ウシュバテソーロはかなり強いと思っているからこそ、数字が少し足りない。
その原因はやはり直線、手前が変わらなかったからだろう。馬場か、デキかと言うと原因は何とも言い難いが、逆に言ってしまえば手前が変わらないのにこの勝ち方。変わっていたら…
東京のダート2100mで上がり3F34.0を使える馬なんて本当に稀。今後使う条件は限られてくるだろうが、夏場、軽くなった大井2000でどんなレースを見せてくれるか今から楽しみなんだよね。
●2023年 和生が騎乗するであろう注目馬
ジュビリーヘッド
いい馬なんだが、ここ2走キーンランドC7着、京阪杯10着と崩れている。スプリンターなんだけど、この馬短距離でも前に壁がないと平気で掛かるんだよな。
京阪杯は16頭立ての13番。こういう枠だと乗りにくい。サイン枠に恵まれてないんだけど、時計は出せる馬。真ん中より内枠で見直したいし、オーシャンSで内枠に入ったらチャンスあると思うんだよね。
石川裕紀人
GIジョッキー石川裕紀人という表記は未だに慣れない(笑)
9年目のGI初勝利か。和製ムーアなんて呼ばれてもう8年くらい経つと考えたら時の流れの早さを感じるね。
正直裕紀人の何が今変わったのかというと、特になんにも思い浮かばないのが現状だ(笑)もう付き合いも長いから逆に気にならなくなってしまった。
ただ以前から変わらないのは、自厩舎相沢厩舎に乗った時がそんなに成績がいいわけではない、というところ。
●2022 石川裕紀人×相沢厩舎
9.1.3.63 勝率10.7% 複勝率16.0%
※通算55.43.50.554 勝率7.8% 複勝率21.1%
自厩舎の走らない馬にも乗らないといけないからね。どうしても数字は上がらない。走る馬はなんだかんだミルコさんだとか、そちらに行ってしまう。来年もまた微妙な成績が続きそう。
2022年、他に目立ったのは手塚厩舎騎乗時。
●2022 石川裕紀人×手塚厩舎
1.2.1.25 勝率3.4% 複勝率13.8%
※通算25.22.14.182 勝率10.3% 複勝率25.1%
今年は馬が回ってこなかったなあ。フジノタカネでもいいほうだなと思ってしまうくらいのメンバーだった。ベストマジックで春に勝っただけ。あの馬も硬くて結局伸びず。
手塚厩舎の調教にも乗っているのに、だいぶ序列が下がってしまっている。いい馬が多い厩舎だから、厩舎だけでそれなりに売れそうだが、それ以前に裕紀人に回ってきている意味を考えていきたいところだよ。
逆に優秀なのが、チャンピオンズCを勝ったジュンライトボルトを管理する友道厩舎。
●2022 石川裕紀人×友道厩舎
3.1.0.2 勝率50.0% 複勝率66.7%
※通算4.3.1.5 勝率30.8% 複勝率61.5%
通算の単勝回収率が200%、複勝回収率も180%あるという、とても裕紀人が乗っているとは思えない数字。もちろん母数は少ないし、今年の好走4回は全部ジュンライトボルトなんだけど(笑)、このコンビでGIを勝った、という事実が大きい。
今のところジュンの河合純二オーナーの馬が中心だが、結果を出していることで、ローカル開催で依頼が増える可能性はある。いい馬揃いの友道厩舎だけに、裕紀人というだけで売れないなら妙味がありそう。
厩舎以外で気にするとしたら、裕紀人の逃げ馬。頼まれる馬の質の低さを考えたら後ろからになってしまうことが多いんだけど、たまに頼まれる逃げ馬に乗ると成績が変わってくる。
●2022 石川裕紀人 4角先頭
14.11.4.27 勝率25.0% 複勝率51.8%
単勝回収率311% 複勝回収率220%
競馬において逃げ馬が有利になるのは当然っちゃ当然なんだけど、裕紀人の場合乗っている馬の質がトップジョッキーより当然低いわけで、あまり人気にならない。それもあってかマークも薄くなるのもあるんだろうな。
単複回収率はどちらも200%以上。そんなに逃げる機会もないんだけど(笑)、先行馬がいれば塗っておくというスタンスでもいいかもしれないね。
●2023年 裕紀人が騎乗するであろう注目馬
ジュンツバメガエシ
本当に今後も乗せてもらえるのかも分からないが(笑)、今後に期待したい馬だ。まだいい数字が出ているわけでもないし、正直本格化は2023年、いや4歳になる2024年のような気しかしないのだが、現状あの緩い体で2戦で未勝利を突破したあたりは能力の高さ。
アドマイヤラクティの半弟で、アドマイヤジャスタの全弟という血統。アドマイヤジャスタはホープフルS2着で、こちらはホープフルS14着だったものの、同時期のジャスタに比べて緩いんだよな。
まだまだこれからの馬。たぶん関西圏の自己条件を使ってくるから裕紀人は乗り変わりになるだろうが、夏の新潟の長いところとか、福島の2600に使ってきたら買いたいね。裕紀人よりもっと買いやすい騎手ならなおいい(笑)
ウインシャーロットもいるし、ジュンライトボルトもいるし、2023年も頑張ってほしいね。心の中では応援している。
丸田恭介
2022年、高松宮記念を勝って初GI制覇を果たしたのが丸田恭介、16年目の36歳だ。丸田が16年目とは…ルーキーの頃から付き合いがあるだけに、もう16年も経ったのか…というのが正直なところ。
乗っている馬の質が質だから11勝は正直仕方ない。やはり丸田を気にしておきたいのは内枠だよね。今年の11勝のうち、枠順別で見ると最多4勝を挙げているのが1枠。
思い返してみてくれ、今年の高松宮記念を勝った時もナランフレグは1枠2番だっただろう。
力のちょっと足りない馬に乗ることが多い丸田は、いわゆる『セコ乗り』をしてくることが多い。内目で距離ロスなく運んでなるべく上を目指すというやり方だ。
ちょっと足りなくともロスなく運んで掲示板なら、権利ももらえるし、賞金ももらえるしいいことしかない。イン狙いの穴というのは昔からの丸田の定番だよね。
丸田はとにかく研究熱心だし、理論派。元々競馬学校でも成績が悪く留年も経験したほどだが、その分研究して上位を狙ってくる。話も理論的で面白いんだよな。結果出てないやんと思われるかもしれないけど、馬の質を考えたら相当頑張っているんだよね。
しかも本当にイイヤツなんだよ。まさにイイヤツという表現がぴったりな男で、何度も笑わせてもらった。自然と人が集まる、それが丸田なんだ。
だからこそ高松宮記念を勝った時は泣いたよね。俺は当日中山にいたけど、モニター越しに泣いたのは久々。努力は裏切らないを体現してきた男だ。ナランフレグとのコンビでまた大きなところを勝ってほしいね。
●2023年 丸田が騎乗するであろう注目馬
テイエムアトム
え?ナランフレグとテイエムアトム以外に他にいる?(笑)
距離を詰めた秋からまったく崩れなくなったね。気性が前向きな馬だから、更なる短縮もいけると見ていたが、前走ダート1200mの舞浜特別は道中ちょっと抱えるところがなかった。
1200だとちょっと忙しそうだね。ただ以前は砂を被ると進んでいかなかったのに、置いていかれて砂を被ったのに耐えて最後伸びてきた。明らかに気性面で成長している。これなら次、東京の1300か1400使ってくれば楽しみ。
2023年 注目している若手
●角田大河
ルーキーイヤーの2022年はJRA36勝でリーディング33位。新人で36勝は立派なもんで、同期に51勝もした今村聖奈ちゃんがいなかったらもっと騒がれていたことだろう。
もうだいぶ昔のことのように感じるけど、デビュー当初、つまり2022年の春先まで、マスクは何度か角田大河くんの『戦績の偏り』を指摘していた。
春先まで好走していたレースのほとんどが逃げか、外枠だったんだよ。外枠から前に行って減量で残る形が中心だった。
上手いと思っていたから、それだけに求めるものも大きい。何度か租界などで触れているように、将来伸びる若手は内枠から内を捌く競馬ができる。
ちょっとずつ内でも競馬できるようになってきて、6月末の未勝利、インを突いて伸びてきたタイクーン3着あたりから競馬のやり方が変わってきた感じがあったんだけど、マスクがこれは!と思ったのは夏の小倉、7月9日、エイシンスポッターで勝った1勝クラスだ。
このレース、馬群の中ほどにいた青エイシンスポッターの角田大河は、前にいる緑エイシンピクセルの外に空いていたスペースを突こうとしたんだけど、ピクセルが外に寄ってしまって進路がなくなってしまったんだよね。
仕方なく内に進路を切りかえた青エイシンスポッターだったが、今度はまた前が壁になってしまう。
エイシンピクセルがフラフラしていたこともあって簡単に進路を選択できず、なかなか苦しい直線だったと推測される。
そこで青エイシンスポッター角田大河が選んだ進路はなんと最内だった。まさかそこまで内に行くとは思わなかった。
確かにこれはエイシンスポッターの能力が高いからできたことではある。脚があるからこそスペースが空いたら一気に伸びた部分もある。
ただこれだけ一気に内に行ったのに、ラチ沿いを走っていた馬に不利を与えることなく抜けてきたところに、マスクは唸った。それだけ馬をコントロールできているわけだから。
実際これ以降、真ん中から内の馬で内目を立ち回る競馬は増えてきた。内伸びもあったとはいえ内から捌いた9月半ばのスカーレットジンク2着や、9月末に頭数が少なかったとはいえ、外枠から内を捌いて抜けてきたプリモスペランツァとステップを踏んで、今や内枠でも下げられないジョッキーになってきた。
今週、2022年中央競馬最後のレースになったファイナルSのエイシンスポッターは、思わず「上手い!」と声が出た。
後方インで脚を溜めた青エイシンスポッター角田大河が、直線、黄アールラプチャーが内を締めきれないと見た瞬間、一気に動いてアールの内に入っていった。
流れるような外出し。完璧な進路取りだったね。これはたぶん本人の中でも会心の勝利だったのではないかな。
ちょっと遡って見てくれ、先に取り上げた夏の小倉のエイシンスポッターと、今回のファイナルSエイシンスポッターを見比べてみると、成長が段違い。馬が人を育てると言うが、何かを掴んだ感じがある。
スポッター自体もうオープンで通用する数字があるから、次、昇級していきなり楽しみなんだけど、角田大河くんも2023年以降かなり楽しみなジョッキーになってきそうだよ。楽しみにしているんだ。
●永島まなみ
今更このジョッキーを取り上げるのはもう遅いくらいかもしれないな。それくらい今年下半期のまなみちゃんは目立っていた。
セルレアで直線競馬の最内枠から内ラチ沿いを通って勝ち切るという離れ業で話題になったんだけど、他にもおおと思わせられる騎乗がどんどん増えてきているんだ。
デビュー年7勝、今年21勝。11月半ばに福島でボルタマドールで勝った際に、4コーナーで外に膨れていたように、まだ危ういところも多々ある。それは本人が一番分かっているのだろうし、ここで長々と書くことではない。
やっぱりここではいいレースを取り上げたいよな。
最近マスクが好感を持った騎乗が先々週、12月18日の中京8R、ムルザバエフが乗ったキミコソシャチョウと同着で1着だったレース。
まずこの4コーナー。赤スナークレジストが、前を走る桃ポルテーニャが4コーナーを回り切ってから、更に外に出していたんだよ。
これ、ノリさんがよくやるんだよね。ポツンから追い込んでくる時、大外の馬がコーナーを回りきってから、更に外に出して追い出してくる。
早めに動かしてポルテーニャの外について回ってくると、遠心力もかかるし、ただただ外を回すだけになる。対して先に行かせてコーナーを回り切らせ、その後ろで溜めて外に出せば余計に外を回さないし、余計に脚は使わない。遠心力の影響最小限で済む。
まなみちゃんが普段栗東でノリさんに何度もアドバイスを求めて、騎乗技術やレース振りを勉強しているのは有名な話。ノリさんにこのやり方を教えてもらったのか、本人が研究したのかは分からないが、コーナーの回り方がノリさんなんだよな(笑)
加えてこのレース、赤スナークレジストは内にモタれていたんだよね。そこでまなみちゃんは画像を見て分かるように、右の手綱を適度に引きながら、左ムチも使いつつロスを最小限に抑えている。
結果的にキミコソシャチョウとは同着。これ、左モタれの対処がうまくいってなかったらスナークレジスト負けてるからね。
下半身をトレーニングで鍛えたのか重心も下がってきているし、まなみちゃんはもっと伸びると思っている。
ちなみに今年、まなみちゃんは21勝したんだけど、そのうちの14勝はテン乗りなんだよな。女性騎手の分、減量がより利いたとも言えるんだけど、テン乗りだからそれまで乗ったジョッキーか、スタッフさんたちに馬の癖を聞かないといけない。
たぶん癖を聞くだけでなく、VTR見て研究してるんだろうな、乗ってない馬も。勝ち星の3分の2がテン乗りっていうのはなかなかのもので、2023年もテン乗りの永島まなみは要マーク。
2023年 注目している3歳馬(22年2歳)
思ったより長くなってしまった。最初は頼まれてた4騎手だけ書こうと思っていたら、興が乗ってつい…この時点でもう1万字を超えてしまっている。
最後にオマケで、マスクが2023年注目している3歳馬を3頭ほど書いておこうと思う。まー、わざわざ書くのにドルチェモアとかリバティアイランドを書いてもつまらないし、まだ1勝しかしていない馬限定で書いていこう。
☆タスティエーラ
現在1戦1勝。新馬前から陣営の感触が非常に良かった馬だが、新馬の数字が素晴らしい。
●東京芝1800m 新馬 勝ち時計ベスト5
1:47.0
タイセイクラージュ
1:47.2
タスティエーラ
サリエラ
1:47.6
カイザーバローズ
1:48.2
ジオグリフ
いやタイセイクラージュのほうが上やんと思われるかもしれないんだけど、タイセイクラージュの新馬は秋の東京開幕週。タスティエーラの新馬はその8週後、秋の東京の最終週。それで0.2秒しか遅くない点に着目したい。
同じ1:47.2だったサリエラも秋の東京最終週新馬でのタイム。サリエラは今年のローズSで休み明けながら2着。順調ならどこかで重賞は勝つ馬だろう。
この時点ですでにタスティエーラは重賞級。なおカイザーバローズも新潟大賞典2着。
更に注目したいのは、この新馬5Rの後半1000mのレースタイム。
●それぞれのレース後半1000m
タイセイクラージュ 58.5
タスティエーラ 58.3
サリエラ 57.6
カイザーバローズ 59.4
ジオグリフ 57.3
後半1000mでカウントすると、ジオグリフ、サリエラ、タスティエーラの順になる。
●ジオグリフ戦 1:48.2 62.9-57.3
13.2-12.2-12.7-12.8-12.0-11.8-11.2-11.0-11.3
●サリエラ戦 1:47.2 61.7-57.6
13.5-11.6-12.2-12.3-12.1-11.6-10.7-11.3-11.9
●タスティエーラ戦 1:47.2 61.3-58.3
12.8-11.8-12.2-12.1-12.4-12.4-11.2-11.1-11.2
サリエラはルメールがだいぶ早めに踏んでいたからラスト1F11.9とちょっと掛かっているんだけど、ジオグリフ戦とタスティエーラ戦はラスト1000mが速いだけでなく、最後の1Fも失速していない。
●ジオグリフ新馬戦
1着ジオグリフ 皐月賞1着
2着アサヒ 東京スポーツ杯2歳S2着
3着アスクビクターモア 菊花賞1着
いい数字の新馬は結果も伴う。後半1000mはジオグリフ戦ほどではないが、前半1000mはタスティエーラ戦がジオグリフ戦より1.6秒も速い。それでいてこのラスト1000m。
これは順調に行けばサトノクラウンの最高傑作になる…かもしれないね。
☆エンペラーワケア
デビュー2戦目、初ダートだった前走阪神ダート1400mの未勝利を10馬身差で圧勝している。
着差なんて相手が弱かったらつくものだからそんなに重視していないんだけれど、勝ち時計1:24.5は馬場を考えれば超優秀。
阪神ダート1400mの2歳新馬、未勝利で1:24.9以内のタイムだったレースは、86年以降計14R存在するんだ。意外と多いと思ったかもしれないが、これは馬場状態不問の場合。
良馬場に限れば、過去にエンペラーワケア戦、ゼンノサーベイヤー戦、シルクメビウス戦の3Rしか存在しないんだよね。1:24.5、これは良馬場1400としては最速のタイムだ。
ゼンノサーベイヤーはオープン馬に、シルクメビウスは重賞3勝、ジャパンカップダート2着。エンペラーワケアはシルクメビウスの数字より速い。
数字だけならもうオープン馬で、この世代のダート馬としてはトップクラスのものが出ているから、あとは帰ってくるのを待つのみ。無事にいけば結果は勝手についてくる馬。
☆セレンディピティ
ホープフルSは8着。未勝利勝ちも完勝とはいえ、数字は標準。まだ数字面で強調するだけのものは出ていない。
ではなんでこんな最後に取り上げるかって、馬体がいい。
もちろんまだまだ体は緩くて、よくこんな緩い状態で勝ってホープフルSにいるなと思う状況なんだけど、パドック映像を見ると分かる。この馬は背中を大きく使える馬だ。
見て分かるレベルで背中の可動域が広い。その分前脚はより前に行く。フットワークも大きい。まだ体が緩くてグニャっとしているからどうしてもフットワークは緩慢になってしまうが、これ、緩さがとれて芯が入れば一気にいい馬になりそうなんだよ。
父はドゥラメンテ。言わずとしれたエアグルーヴの孫だが、エアグルーヴの系統はこのような、背中を大きく使う一流馬が多い。ドゥラメンテもそうだった。ルーラーシップなんてまさにそう。緩さが取れるごとにフットワークが大きくなって、超一流と言っていいレベルの馬になったんだ。
ルーラーはGIこそ1つしか勝てなかったが、ゲートさえまともだったらもっと勝っていた馬。ドゥラメンテは今更説明不要。これはもうエアグルーヴの血の特徴で、ルーラー産駒のキセキなんかも背中の可動域が大きく、毎回素晴らしいパドックを見せてくれていた。
正直セレンディピティはまだまだ緩いし、この緩さが本当に解消されるのかは分からん。ただこの背中の使い方は間違いなく父似。大きな可動域なのに大きくブレないから体幹も良さそう。
新馬の時と未勝利の時のフットワークを比べるだけで違うほど、馬は着実に成長している。パンとしたら相当いいところにいけるのではないかと睨んでいるんだよね。
母系は名馬を何頭も出してきたバレークイーン。名牝系からまた1頭大物が生まれたと思っている。
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