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エプソムCを振り返る~勝負を分けた『1頭分のズレ』~

武豊という天才はどうしてもディープインパクトなど、サンデー産駒とのコンビの印象が強く、外からの差し、追い込みというイメージを持っている人間も多いのではないかな。

外からの差し、追い込みでも上手いのだけれど、やはりこの人の真骨頂は逃げた時。精密機械のごとく一定のペースを刻み、後続の脚を削る逃げを打ってくる。キタサンブラックの天皇賞春などはその典型例と言っていいだろう。

そしてもう一つ、馬場を読んだイン差しもめちゃくちゃ上手い。よく京都でイン差しをやっているのだが、1頭ちょっと開いたスペースだったら技術で通してきてしまうのだ。

今日の東京6R3歳未勝利は武豊の真骨頂を見たレースだった。

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武さんは7枠14番だった橙トーセンメラニーを内に誘導して、インから捌く手に出たんだ。

これまでのメラニーの詰め切れないレースを見て、ただ外を回すだけだと勝てないと踏んだのだろう。内をいかに使えるか、そう考えたのだと思う。

今日はCコース3週目、開催でいえば6日目。東京開催自体2ヶ月近くやっていることで、ここ2週は外差しが圧倒的に来ていたのが東京。多くの読者の皆さんも、『東京は外差し』という印象を持っていたはずだ。

ただ馬場をよく見ると、3コーナー、そして4コーナー手前までは内がまだ走れるのだ。本当に内が走れないのは4コーナー出口から直線にかけて。

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これは先週の日曜東京8R、桃バルトリのルメールが4コーナーまで、1頭ちょっと開けながらインを使って、直線で外に出して逃げ切ったレースだ。

このように4コーナー出口から内を使わなければいいわけで、4コーナーまで『1頭分開けて回れば、インは通れる』。

視覚的には外差しが嵌まっているものだから、やっぱりみんな外に持ち出しに行く

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このように、内の馬たちが外に寄りながら回っていくから、内の馬群が緩くなる。

ただ前述したように、『4コーナーまでは、内ラチ1頭分以外の内は使える』。武さんはそれを知っているから、他馬が外目を目指す中で、インを使ってワープする形ができる。

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極力コースロスをなくした橙トーセンメラニーは内を捌いて突き抜け、11戦目にしてついに勝ち上がった。もし外枠から外を回っていたら、着差を考えると届いていない。

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先週の安田記念でも、武さんは緑カデナで直線内から5頭目を使っていた。内目の馬場は荒れているが、コーナーは本当に悪いのが1頭分だけ。それ以外は馬次第で通れるという判断もあったんだろうね。

とにもかくにも、武さんのこの誘導で、エプソムCに騎乗するトップジョッキーたちは『内は使える』という確証を得たのだと思う。

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エプソムCの一つ前の芝のレース、東京8Rも1着青グランオフィシエ、2着黒ガンダルフが内目を使って、直線で外目に出している。

エプソムCともなるとフルゲートの18頭立て。内の馬たちがこれまでのレースのように内を開けながら回ると、外の馬たちは更に外を回されてしまう。予想にも書いたがエプソムCは毎年そういうレースになりやすい。

開催終盤、一見外差し馬場に見えて、今年のエプソムCは『ロスなく回れるかどうか』がテーマのレースだったのだ。


●エプソムC 出走馬
白 ②マイラプソディ
黒 ③ヴェロックス
赤 ⑤エアアルマス
青 ⑦ファルコニア
黄 ⑧アルジャンナ
灰 ⑨ヤシャマル
薄 ⑪ニシノデイジー
緑 ⑫ミラアイトーン
紫 ⑬サトノフラッグ
橙 ⑤ザダル
桃 ⑯シュリ
水 ⑰アドマイヤビルゴ
茶 ⑱アトミックフォース

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まずスタート。青ファルコニアと緑ミラアイトーンなどが出遅れた。

ミラアイトーンはこのレースでハナを切る候補の1頭だった。行きたいアトミックフォースが大外にいただけに、ミラアイトーンが押していけばハナに立っていた可能性はある。

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正面から見るとこんな感じ。緑ミラアイトーンが落馬寸前になっている。よく落ちなかったね。

今日の菊沢は先行して2発大穴を開けているから、ミラアイトーンが上手くゲートを出て先行したらどうなったか、見たかった気持ちもある。

青ファルコニアはトモが落ちている。昔はゲートが悪く、入念なゲート練習によってようやく出られるようになった馬。久々にやらかしてくれたね。ゲート練習の辛い日々を忘れてしまったのかな。

川田のプランとしては、前走のように先行するプランだったはず。以前出遅れていたことを川田は知っているから、出遅れる可能性自体は頭に入れていたとは思うけどね。

よく見ると桃シュリは躓いているし、水アドマイヤビルゴは外に飛んでいってしまっている。そのおかげで茶アトミックフォースが更に1頭分、外に飛ばされてしまったんだ。

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ただでさえ東京の芝1800mはスタートしてすぐにちょっとしたカーブがある。

ハナに行ければ行きたかった茶アトミックフォースは、スタート後アドマイヤビルゴに飛ばされたこともあって、2コーナーで赤エアアルマスにハナを奪われてしまった。

●21年エプソムC
12.6-11.3-11.4-11.7-11.8-11.4-11.1-11.4-12.4
前半3F 35.3(2位タイ)
後半3F 34.9

2コーナー。予想ではもっとゆったり流れるかと思ったんだけどね。エアアルマスは1400mと短い距離からの臨戦。その分かハミも噛み気味で、前半3F35.3というペースで入ってしまった。ここ10年で2番目タイに速い

東京競馬場は午後雨が降ったことで少し馬場が緩みかけたこと、元々2ヶ月近く使ったことで馬場が荒れていた。そこにハイペース。エアアルマスがハナに立ったことで、今年のエプソムCは一気にスタミナレースに変貌してしまった

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こうなるともう外外を回る馬は厳しい。内が悪いならまだしも、前述したように内目は走れるわけだから、ハイペースで外外を回されては、外の馬たちは展開的にかなり厳しい。

●黒丸の部分を走った馬
7着アドマイヤビルゴ
12着ガロアクリーク
13着プレシャスブルー
14着シュリ
15着ミラアイトーン
16着ニシノデイジー

外のラインが全滅してしまった。直前の雨がなければもう少し状況が変わったかもしれないが、まー、それも運。

枠順って大事だよな。仮にファルコニアとかが外枠を引いていたら、外のラインに入っていたかもしれないし、仮にそうだとしたら来ていなかっただろう。

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ハイペース、インが使えるとなると、当然ポジションとして有利になってくるのは、内目の中団で脚を溜めている馬だ。

今回、このポジションに入っていたのが2番枠でスタートしたマイラプソディだったんだよ。そう、武さんの騎乗馬だ。

よく見ると、白丸で囲んだように、内ラチ1頭分だけスペースを開けながら、武さんが回っていることが分かる。

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これは東京6Rの橙トーセンメラニーだが、武さんは『内目』を使ったのであって、内を1頭分開けて回っている。

改めて上のマイラプソディの位置を見ると、絶妙に1頭分内を開けていることが分かるだろうか。武さんは通れるギリギリのラインを回っているんだ。

そしてその後ろに青ファルコニアの川田がいる。この2人は本当によく馬場を読む。向正面でのベストポジションは、武さんか川田だったんだよ。

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ところが600m通過地点手前で青ファルコニア川田に誤算が生じてしまうんだ。

この時点までは白マイラプソディ武さんの真後ろを確保しているんだけど、

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お分かりだろうか。黒ヴェロックス浜中が外から、内の青ファルコニアを内ラチ側に押し込んでいるのが。

浜中が意識して武さんの後ろを確保したかったのかはちょっと何とも言えないが、内にプッシュされてしまった川田は、これで1頭分、空いているラチ沿いに弾かれる。

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すると、こうなる。白マイラプソディ武さんの真後ろに黒ヴェロックス浜中が入って、青ファルコニア川田がラチ沿いを走ることになってしまった

トーセンメラニーの時といい、このマイラプソディといい、武さんはラチ沿い1頭分は開けている。さすがにラチ沿い1頭分は走れない状態なのだろう。

本来であれば川田もこの1頭分は走りたくなかったと思うよ。みんな開けているラチ沿い1頭分に不運にも押し込まれてしまって、ここで川田はマズイと思ったはずだ。

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ところが黒ヴェロックスの浜中は、青ファルコニアの川田を内に押し込んだと思ったら、白マイラプソディ武さんの後ろを外れて1頭分外に出しに行くんだ。

マイラプソディが全然進んで行かないんだよね。武さんは「4コーナーで気が抜けてしまった。なにかきっかけがほしいところ。マイルぐらいがいいのかも」とレース後話しているのだが、そもそも3コーナーの時点で進んでいっていない。まだ本調子を欠いている影響なのだろう。

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3コーナーを後ろから見るとこんな感じ。白マイラプソディの走っているコースが、さっきのトーセンメラニーとほぼ一緒であることが分かるだろうか

武さんはとにかくギリギリのラインをキープしているものだから、青ファルコニア川田の選択肢が『内ラチ沿いを走る』という一択しかない。内ラチ沿い1頭分は決して良くはないから、川田は困ったと思う。

この時点で川田のミッションは『勝負所でいかに素早く外目に出すか』というものだったんだよ。

対してその隣を見ると、前半3F35.2とペースが流れたことから、向正面で馬群がある程度縦長になったことで、外枠だった橙ザダルと、紫サトノフラッグが大外を回さずに済んでいる

それどころか内から4、5頭目。外過ぎないラインを通ることができているのだ。これがもう1つ外、序盤に黒丸で囲んだシュリやアドマイヤビルゴが走った大外のラインを走ってしまっていたら、最後の伸びはもっと甘くなっていたと思うよ、物理的にね。

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青ファルコニアの川田としては、赤エアアルマスが速い流れの影響で垂れてくる可能性もあるし、直線でうまく外に持ち出すには、4コーナーである程度前目のポジションにいないといけない

パトロールビデオを見ると分かるが、川田が4コーナー入口から少し促しているんだよね。ファルコニアを4コーナーである程度のポジションに持って行こうとしたんだ。

非常に妥当な戦法だったと思う。不利な最内に入れられてしまったのはもう仕方ない。直線の内は終わっているわけだから、早めにポジションを取りに行かないと、内に閉じ込められて終わる可能性がある

当然、動かすのは他馬より若干早い。川田としてはなるべく直線まで脚を溜めたかったはず。結論から言うと、ハイペースで、しかも動き出しが予定より早くなったことで、ファルコニアはゴール前で甘くなってしまったと言っていい。

3着の直接的な原因はこれだ。ロスなくは運べたんだが、ヴェロックスに押されてラチ沿いに押し込まれたのが最後まで響いてしまった

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4着ヴェロックスは、3コーナーでマイラプソディを交わす時に青ファルコニアとは逆、外側に行ったことは前述した通りだ。

ところが青ファルコニアが早めに動かしてポジションを取りにいったことで、ファルコニアがヴェロックスより前に来てしまった

直線入口では黒ヴェロックスの前に赤エアアルマスと青ファルコニア。これでヴェロックスの進路がなくなっている。ファルコニアは青丸の、直線内の伸びない部分をギリギリ開けて回っているから、青丸部分は通りたくない。

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まー、結局進路は開かなかった。黒ヴェロックス浜中は青ファルコニアのインに行くしかなくなったんだよな。青丸の部分は、先ほど説明したように悪い部分。

これがヴェロックスがもっと切れる脚を使えたら、それこそ赤エアアルマスの外に出せる。一瞬のキレがなく、ジワジワと伸びていくタイプだから内しか進路がなかった。ヴェロックスの弱点が悪いほうに出てしまった

こうして、前述した、ハイペースの分いいポジションにいたはずのファルコニア、ヴェロックス、マイラプソディは、それぞれラチ沿いを通らされる、進路が内しかなくなる、全然進んで行かないという状況から、3頭とも、ポジション利をうまく生かせなかったんだ。

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話を少し巻き戻す。内目は利を生かせなかった。では外目はどうか。

4コーナーの真ん中から外を見ると、薄緑ニシノデイジー、灰ヤシャマルの後ろに橙ザダル、その後ろに紫サトノフラッグがいる。

つまり、ザダルは抜け出すにはニシノデイジー、ヤシャマルを交わさないといけない

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灰ヤシャマルの木幡巧也が内を締めるように回っていて、薄緑ニシノデイジーとの間のスペースがまるで開かない。本来橙ザダルはこのスペースを突きたいが、この間隔では突けるわけがない。

ザダルの後ろにいる紫サトノフラッグは、ザダルが進路を開けないと詰まる。サトノフラッグの戸崎はザダルのポジションが邪魔になっていたはずだ

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橙ザダルにとって、灰ヤシャマルがしっかり内を締めながら回ってくれたのは大きかったと思う。ヤシャマルが外に膨れなかったことで、ザダルはその外のポジションにスムーズに入れたわけだ。

ザダルの後ろにいた紫サトノフラッグは、通常だったらザダルの後ろをついていく…のが通常なのだが、サトノ戸崎はついていかなかったんだよね。

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橙ザダルは休み明けも走るとはいえ、8カ月ぶりだ。結果勝っているが、4コーナーでザダルが勝つかどうかなんてわからない。紫サトノフラッグの前にいる馬は『8カ月の休み明けの馬』だ。ザダルが息切れすれば、その後ろにいたサトノフラッグは詰まる

灰ヤシャマルの木幡巧也が右ムチを打って、薄緑ニシノデイジーとの間のスペースが開いていない。ここも突けない。

だからサトノフラッグ戸崎は、更に内、黄アルジャンナをターゲットにしたんだよ。アルジャンナは最後10着だったとはいえ、1番人気。かたや1番人気で、かたや8カ月ぶりだったら、1番人気の後ろのほうが空く可能性は高い

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たぶん戸崎の思っている以上に黄アルジャンナは伸びなかったんだけど、紫サトノフラッグはアルジャンナが伸びきれない前にスペースを確保できたから、うまいこと、アルジャンナを内から交わすことができたんだ。

進路ができた、手応えもいいとなれば、あとはもう伸びるだけなんだが、今日のサトノフラッグはツイてなかったな。

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橙ザダルが、内に寄ってきたんだよ。紫サトノフラッグ側にね。

これは別によくあること。内や外にヨレる馬なんてそこら中にいる。矯正するためにザダルの石橋脩ちゃんは、矢印を見ると分かるだろうが左からムチを叩いている

馬は左からムチを叩けば右に行く。これ以上内に行ってしまうと、サトノフラッグの進路をカットしてしまうから、左ムチ自体は妥当なものだ。

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橙ザダル脩ちゃんの左ムチが、紫サトノフラッグの進路と被っちゃってるんだよな。とはいえ、アトミックフォースがいる以上、サトノフラッグは更に内に行けない。目の前でムチビュンビュン飛んでたら進みは甘くなる

もちろんこれがなければサトノフラッグが勝ったかというと、それは分からない。ただ差が差だけに、もう少し詰められた可能性はある。競馬の流れの出来事とはいえ少々もったいないシーンだった。


勝ったザダルは大竹師が微妙なトーンだったものの、調教に乗った脩ちゃんはかなり好感触を得ていた馬。中間に弱かった球節を手術したことで、調教で攻められた分も良かったのだろう。5歳夏とはいえこれが通算10戦目。まだキャリアも浅く伸びしろはある。

現状右回りと左回りでは断然左回りのほうが数字がいい。毎日王冠あたりなら継続して好走できるんじゃないかな。ハイペースの体力勝負をこなしたあたり、天皇賞秋の穴として、条件次第ではワンチャンあるかもしれない。

2着サトノフラッグは直線抜け出すまで少し待たされたこと、ザダルの左ムチの影響を受けたことを考えれば上々の2着。まだ緩い状況でこの内容だから悪くない。

今回に関してはエアアルマスがハイペースを作ったことで、体力勝負になったのも良かった。これまでの好走が2000m以上に寄っているように、高速決着、上がり勝負の1800mだと今後も分が悪そう。

まだ緩いだけに伸びしろはあるのだが、いつまでも緩さが取れない現状だから、元々そういう馬なのかもしれないね。良馬場の2000~2200で買っていきたい。

3着ファルコニアは前述通り。早めに動かした分最後は甘くなった。この内容からすると2200mも長いかもしれないね。1800m~2000mくらいがちょうどいいんじゃないかな。

次は北海道という話を聞いている。札幌のビッグレースは器用さも問われるだけに、今日のようにラチ沿いをスルスル上がっていった器用さは武器になるかもしれない。ゲート練習をやり直してまた頑張れ。

4着ヴェロックスは進路取りさえなんとかなれば3着はあった。相変わらず一瞬で伸びない点が弱点ではあるが、徐々に復調している。まだ坂路オンリーの調整であるように、脚元は万全ではない

その状況で重賞4着に来れるのだから、能力は高いのだ。コースで追えるようになって、なおかつある程度ペースが流れるレースという条件が揃えば、重賞は勝てる

5着アトミックフォースはハイペースをよく粘り込んでいる。ただこの先、関屋記念は上がり勝負になること、新潟記念は開催後半で外差しになること、京成杯AHは右回りになることなど、なかなか適条件が登場しない点は厄介だ。

7着アドマイヤビルゴが今回+12kgで出てきたのは意外だった。長距離輸送で体重が減ると思っていたから、陣営もある程度大きく作ってきたのだろう。そうしたら思ったより減らず、若干太め残りになった可能性がある。

小柄でエサをそこまで食べないというネックはあるが、キレイな馬場での高速勝負ならもっと走っていい。今日は8枠17番が痛かった。馬場も展開も合わずの7着だから悲観することはない。良馬場の上がり勝負を待とう。

14着シュリも今回はノーカン。躓いて、ハイペースで外を回ることになってしまった。15-5-12という不自然な通過順から分かるように、今日は競馬が雑過ぎる。

体力勝負の1800は長いようだね。1800だったら上がり勝負になってほしいし、結局ベストはマイルなのだと思う。いい馬。関屋記念、富士Sあたりでマークしたいよ。

さて、最後に10着アルジャンナ。1番人気ながらここまでほとんど触れてこなかった。

触れてこなかったのはつまり、ほとんどスムーズに運べているから。特に何か大きな不利があったわけではなく、大外を回ったわけではなく、ルメールも運び方としては特に問題はなかったと思う

ただ、それで見せ場なく下がってしまった。「良いポジションを進めたのですが、馬場が緩いのは良くないようです。今日は伸びがありませんでした」とルメールが話しているように、緩い馬場も敗因の一つだとは思う。

2走前の洛陽Sで上がり3F32.8を使い5着、前走のマイラーズCで上がり33.7を使って2着。しかも1:31.6という高速決着。スピードが問われるマイルで好走してきた馬が、ザダルやサトノフラッグといった2200mの重賞でも好走している馬相手に、ハイペースの体力勝負になってしまっては、10着も仕方ない気はする

●21年マイラーズC上位馬の次走
1着ケイデンスコール→安田記念1600m 10着
2着アルジャンナ→エプソムC1800m 10着
3着カイザーミノル→京王杯SC1400m 3着
4着ダイワキャグニー→安田記念1600m 11着
5着エアロロノア→未出走

もちろん安田記念の力関係はあるが、それ以上にマイラーズCのレース適性が1400m寄りだったのかなという思いもある。

桜花賞の上位組は次走のオークスで距離もあったから仕方ないとはいえ、阪神牝馬Sの上位組の次走がマジックキャッスル以外芳しくないように、4月の阪神の超高速馬場で行われた重賞は少々特殊な競技だったのかもなと、アルジャンナの大敗を見て思った。

持っている能力は非常に高いものの、右ひざに爆弾を抱えていた馬。手術して改善傾向にあるとはいえ、違和感がトラウマとなり、アルジャンナ自身がコーナーで右脚が外に流れる左回りを嫌っている可能性は残されている。右回りで見直してみたいところだ。

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