中央勢がなぜ苦戦気味なのか、中央と地方の砂厚やコース形態について [考察] +チャンピオンズカップ有力馬診断

今年、地方勢の勢いがすごい。

川崎記念→カジノフォンテン 1着
かしわ記念→カジノフォンテン 1着
帝王賞→ノンコノユメ 2着
JBCクラシック→ミューチャリー 1着

 地方G 1に限らず、G 2やG 3でも地方馬が勝利するというなんとも珍しい年になっている。そこには何らかの要因があるのではないかと思い、今回は個人的な考えを2点挙げさせてもらいたい。
「地方馬は本当に強いのか?」ここにフォーカスして考えていく。

コース形態について

基本的に地方馬に負けている競馬場は、川崎・船橋・金沢である。

①川崎競馬場について 
 川崎競馬は、南関東4競馬場の中で最もコーナーが短く急カーブ。スピードを維持したままコーナーを回ると大きく外に膨らみ大幅なロスになる。基本的に前有利。

 川崎記念では、カジノフォンテンがオメガパフュームに勝利し、ここから地方馬の反撃が始まった。


2コーナー出口からスタートし、左回りの小回りコースを一周半強する。最初の3コーナーまでの距離は約400m。非常に狭いコーナーを6回通るため、外々を回らされると不利が大きい。最後の直線は300m。道中ペースが緩みやすく基本的に逃げ・先行馬有利。

※netkeibaから引用

 中央勢オメガパフュームやダノンファラオは初の川崎競馬場ということもあり、ややカジノフォンテンに楽な競馬をさせすぎたというレース内容。オメガパフュームの敗因は、そもそも左回りが得意ではないという点。そして、コーナーを6回通る川崎競馬場の2100で、終始大外を追走し、かなりのロスがあったという点にある。力負けではなく、展開負けだ。

②船橋競馬場
 スパイラルカーブが特徴で、インでためていた馬が差してくるケースもある。

 ここでもカジノフォンテンがかしわ記念で、インティ、ソリストサンダーを破り1着となった。

スタンド前直線左からスタートし、左回りの外回りコースを一周する。最初の1コーナーまでは約250m。コーナーはスパイラルカーブだが、コーナーを4回通るため外々を回されると不利になる。最後の直線は約300m。基本的に先行馬有利も、持続力のある馬が差してくるケースも多い。

※netkeibaから引用

 ソリストサンダーは向正面でカフェファラオとサンライズノヴァの直後で狭くなって手綱を引く場面が痛手だった。インティは出遅れて後方からになったが、メンバー中最速の上がり(3F=38秒2)で直線前との差を詰めた(インティに関しては武豊騎手が最後まで追っていれば、もう少し着差は縮まった)。レースはハイペースで、持続力戦・消耗戦であった。向正面半ばからみずから動いていって先行押し切りのカジノフォンテンは、強いの一言。ただ、勝ちタイムは平凡で、スパイラルカーブの船橋競馬場で外外を回した2、3着馬は展開負けが否めない。ただ、カジノフォンテンも強い競馬をしているのは間違いない。

③金沢競馬場
 高低差はなく、直線が236mとかなり短いコース。基本的に前有利。

 今年はJBCクラシックが金沢競馬場で行われ、同舞台白山大賞典2着だったミューチャリーがまさかの勝利。

金沢競馬場の最長距離。2コーナー出口付近がスタート地点で、コースを一周半強する。最初の3コーナーまでの距離は約350m。コーナーは小回りで、道中平坦。最後の直線は236m。ここもやはり逃げ・先行馬が有利。

※netkeibaから引用

 ミューチャリーは強敵相手に勝てないなか、昨年のJBCクラシック(大井)では地方馬最先着の4着。東京大賞典では着順こそ5着だが、勝ったオメガパフュームに0.2差と着実に力をつけてきた。今回の勝利はこの馬にとって大きい。ただ中央馬も骨折明けであったり、小回りコース・平坦で大外を回したり、出遅れたりなどはっきりとした敗因があるため力負けではない。

[結論]
 中央馬が地方馬に先着を許しているのは、地方特有のコース形態によるロスや展開負けであり、単純な力負けではないと言える。ただ、それでも先着されているのは地方馬が力をつけてきている証拠であり、中央馬には勢いがない。中央馬を引っ張っていく存在がダート界にはいない。展開次第ではこれからもこの状況が続くに違いない。

砂厚について

 競馬場によって砂の厚さは違う。ダートコースは固い路盤の上にクッション砂を敷き詰めており、この厚みを砂厚という。砂厚が厚ければ厚いほど、パワーが必要である。
 中央より地方の方が「砂が深くタフだ」という印象を持っている人がほとんどではないか?ただ、実際にはそうではないことが分かった。

JRA→9㎝
金沢→10㎝
船橋→10㎝
川崎→8.5〜9㎝
大井→8㎝

 意外にも大井競馬場や川崎競馬場の方が砂は浅く、足抜きのいいコースで時計は出やすい。 
 では、今回チャンピオンズカップ出走予定馬の各競馬における成績を出していきたい。そこから各馬の砂厚による影響があるのか考えていく。


金沢競馬場
・カジノフォンテン 0-0-0-1
・サンライズノヴァ 0-1-0-0
・テーオーケインズ 0-0-0-1
・スワーヴアラミス 0-0-1-0
・ケイティブレイブ 1-0-0-1
・チュウワウィザード 0-0-1-0
・ダノンファラオ 0-0-0-1
船橋競馬場
・カジノフォンテン 7-0-0-1
・サンライズノヴァ 0-0-1-1
・インティ 0-1-1-0
・ケイティブレイブ 2-1-1-0
・アナザートゥルース 1-0-1-1
・チュウワウィザード 1-0-0-0
・ダノンファラオ 1-1-0-1
・カフェファラオ 0-0-0-1
大井競馬場
・カジノフォンテン 1-1-1-6
・サンライズノヴァ 0-0-0-1
・インティ 0-0-0-1
・テーオーケインズ 1-0-0-1
・オーヴェルニュ 0-0-0-1
・ケイティブレイブ 1-3-2--2
・クリンチャー 0-0-1-0
・チュウワウィザード 0-1-2-1
・ダノンファラオ 1-0-0-3
・カフェファラオ 0-0-0-1
川崎競馬場
・カジノフォンテン 4-0-0-1
・ケイティブレイブ 1-1-0-2
・アナザートゥルース 0-0-0-1
・チュウワウィザード 1-0-0-0
・ダノンファラオ 0-0-1-0

 金沢競馬場や船橋競馬場の比較的タフな競馬場を得意としている(苦にしない)馬をパワー型、大井競馬場や川崎競馬場の足抜きの良い競馬場を得意としている馬をスピード型とする。また、両方で好走している馬をバランス型とする。

パワー型
→スワーヴアラミス、ダノンファラオ、アナザートゥルース、サンライズノヴァ、インティ、クリンチャー(佐賀の内側は10㎝あり、内を通ったのにも関わらずあれだけ圧勝したのでパワー型とする)

スピード型
→チュウワウィザード、テーオーケインズ

バランス型
→カジノフォンテン、ケイティブレイブ

[結論]
 今回パワー型に挙げた馬は地方の砂厚を苦にしないタイプであると分かった。そのため、パワー型で地方馬に先着されている馬は現状レベルは高くないと言える。逆にスピード型の馬は地方より中央のコースの方が活きると分かった。
 今回地方からカジノフォンテンがチャンピオンズカップに出走するが、中央と近い砂厚の競馬場でも好走しているところを見ると、後は力関係だけ考える必要がある。

有力馬診断

ソダシ

 ソダシについては別のnoteで見解を述べている。そちらを是非参考にしてほしい。

カジノフォンテン

 数多くの中央勢を主戦場で蹴散らして、地方から参戦してきたダークホース的存在のカジノフォンテン。今回はデムロー騎手が手綱を取る。
 カジノフォンテンはG 1大井2000で2着と10着と、大きな差がある点について考えていきたい。
'20 東京大賞典 2着
12秒後半〜13秒台のラップが続き、レースはスローペス。当馬はまだ人気もなく、少し離れた2番手で楽なポジションを取り競馬ができた。自分の競馬に持ち込めば、力はある事を証明した一戦となった。

'21 帝王賞 10着
12秒台のラップが淡々と続く、総合力が問われたレース。カジノフォンテンは少しスタートで後手を踏み、押して押して先頭に立った。無理して先頭に立ったせいで、息の入らない展開を生み出してしまいそれをダノンファラオにピッタリマークされたのだから、終始厳しい展開だったといえる。また使って使って良くなるタイプの馬とはいえ、3戦目という点も影響したと考える。

・カジノフォンテンの好走パターンは以下の通り
1 ペースが楽な時
2 自分の競馬ができた時
3 左回り

地方G 1 2000以上で勝利している時は大体スローペス。今回中央のG 1でソダシもいる事からもペースもある程度流れる。ダノンファラオがいるという点も嫌な存在だ。そうなればこの馬はもろさが出てしまう。力があるのは重々承知の上で今回は軽視。

インティ

 前走の盛岡マイルCSはインティを除く1〜7着馬が1200.1400の実績があったことから、そちらの適性が求められ、インティにとっては適性外だったと言える。2走前のかしわ記念もスパイラルカーブのコースで大外を回し上がり最速を出すも脚を余してしまう結果となった。前で競馬していたら勝ててた内容だった。
 中京1800の持ち時計もこのメンバーでは一歩抜けており、近走は度外視できる。衰えは感じないが、ただ近走差しの競馬をしているため、内で展開が向かなかった場合惨敗も考えられる。重賞では最近イマイチな武豊騎手の手腕が問われる。現状は対抗評価。

テーオーケインズ

 前走のJBCは出遅れから位置をとりに行き脚を使った事で最後伸びを欠いた。ただ、スムーズに競馬ができたチュウワウィザードと差のない競馬をしている事から悲観する内容ではない。
 テーオーケインズは足抜きの良い馬場がとにかく得意で、特に帝王賞はかなり強い内容。内で揉まれてもしっかり脚を使えるので、今回の枠は絶好。ただ、良馬場では一段階能力が下がるのは血統背景から分かる。

上の表はシニスターミニスター×母父の成績一覧だが、サンデーサイレンス系の成績がガクンと下がるのが見てとれる。やはりサンデーサイレンス系を母父に持つ場合、足抜きのいいスピード決着になる方が力を発揮するのだ。
 テーオーケインズは母父マンハッタンカフェでサンデーサイレンス系である。成績を見ても馬場が渋った時に馬券を外したことがない。つまり、今回良馬場想定の中京競馬場はプラスではないと言える。抑えまで。

オーベルニュ

 スマートファルコン産駒は馬場が渋った時に力を発揮するタイプ。またオーベルニュはワンターンの競馬場が苦手で、コーナー4つの競馬を得意とする。この様な理由からワンターンのフェブラリーS惨敗後に平安Sでは本命を打った。テーオーケインズと同じで良馬場はプラスではない。帝王賞を見る限りテーオーケインズの方が力関係は上と考えているので、抑えまで。

クリンチャー

 川田騎手に戻ったのはプラスだが、今回そこ以外に買い理由がない。前走は休み明けとは言え、得意舞台で負けすぎ。帝王賞もノンコノユメに差されている辺、現ダート界の一線級かと言われればNOと言いたい。7歳で衰えも感じる。左回りという理由だけで消してもいいくらいの馬。

チュウワウィザード

 前走は骨折明けかつ右回り・初の金沢競馬場で、3着にこれたのは素直に評価していい。今回がメイチで得意舞台となれば、このメンバーでは本命候補にせざるを得ない。外枠に入ったのでロスなく運べれば圏内の確率は高い。現状本命候補。

カフェファラオ

 前走芝を使ってのローテーションは納得いかない。また成績を見れば、ワンターンの東京1600がベスト舞台で、今回の舞台は合わないと言える。ただ、昨年のチャンピオンズカップは能力の高さを示した内容だった。終始1番大外を回して最後6着まで来るのは弱い馬にはできない。タイムも1:50.2で、ここ2年が異常に速いだけで例年なら馬券内のタイム。内枠に入ったら狙おうと思っていたが、大外枠に入ったのでここは消し。

総括

 今回のチャンピオンズカップは現ダート界の一線級が集まったと言っても過言ではない。勢いがあるカジノフォンテンと初ダートのソダシ、主戦場では負けられない馬達と、見どころ満載のレースだ。どの馬にもチャンスがあると思うので、全頭しっかりチェックする必要がある。

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