ソダシはチャンピオンズカップを好走できるのか[考察]
白毛馬として史上初めて芝の重賞勝利、GI勝利、牝馬クラシック初出走、初勝利を達成したソダシ。2020年度のJRA賞最優秀2歳牝馬である。アイドルホースとして多くの競馬ファンに愛されている。秋華賞では1番人気に推されながら、10着と敗れてしまった。しかし今回初ダートでチャンピオンズカップに出走する。
ソダシ第二章の幕開けとして今回の舞台に適性があるのか、様々な視点から考察していきたい。
血統について
父クロフネは芝ダートの二刀流として、まず初めに浮かぶ一頭だろう。伝説の武蔵野Sは、競馬ファンのみならず、関係者、武豊騎手すべてを驚愕させたレースとして名高い。初ダートにも関わらず1:33.3と、芝のレースと変わらないタイムで圧勝したのだ。1600のレースで、3歳時後続を9馬身突き放したのは後にも先にもこの馬だけではないだろうか。
その白い怪物"クロフネ"と白毛の馬体に細かく鹿毛の駁が入った特徴的な毛色の"ブチコ"の間に産まれたのが白毛のアイドルホース"ソダシ"である。
今回初ダートで、「血統的には問題ない」と多くの記事で目にするが、果たしてそうなのか?父クロフネも母ブチコもダートで成績を残しており、問題ないと考えるのは真理であろう。ただ、「クロフネだからダートは走る、今回は問題ない」とは私は思わない。正確には、「ダートは走るが、舞台設定に問題がある」と考えている。
注目したのは、母父キングカメハメハの牝馬である点だ。クロフネ×母父キングカメハメハの牝馬は、JRAとNARで全15頭いる。その中で、ダート勝利実績があったのは、7頭(その内の3頭はNARでの勝利実績のみ)。重賞勝利数は、0頭であった。ひいき目に見ても良績とは言えず、この時点でソダシがG1のダートで活躍できるか不安になってくる。
クロフネ産駒の牝馬は1200〜1600で活躍する事が多い。例えば、カレンチャンやスリープレスナイト(スプリンターズS勝馬)、スプリングサンダー(阪神牝馬S)、ジューヌエコール(函館スプリントS・デイリー杯2歳S)など…数多くのクロフネ産駒の牝馬がこの距離の芝で活躍している。こういう馬達の母父を見ると芝中長距離で実績のある馬が多い事が分かる。
では、クロフネ産駒でダートに良績がある馬は何頭いるのだろうか。例えば、チャンピオンズカップ2着の実績がある、テイエムジンソク。この馬の母父は言わずもがなダートでは有名なフォーティナイナーで、ダートで好走できるのも納得いく。ホワイトフーガなんかはどうだろうか。母父はブジキセキで一見芝中距離で実績のある馬だがフジキセキがそうだったように、ある程度タフな馬場を得意とする産駒が多い。スタミナを要するダートを走っても不思議ではない。
つまり何が言いたいかと言うと、クロフネ産駒はダート血統と呼ばれがちだが、実際は違うと考えており、正しくは「ダート適性の高い血統」で母父が芝実績のある場合ダートは怪しいということである。クロフネ産駒は母型の血に影響されやすいと私は推測する。ソダシは先ほどから例に挙げているように、母父がキングカメハメハでダート色は薄い。さらに母母父もサンデーサイレンスとなれば、さらにダートでの期待は低くくなる。以上の点を踏まえると、血統的にはダートを走ってもおかしくないが、基本的には芝1600がベスト条件で今回の舞台はベスト条件とは思わない。
ソダシの好走パターン
彼女が特に高いパフォーマンスを披露したレースは、阪神JF・桜花賞・札幌記念であると私は考える。
阪神JF
とにかく負かした馬が強い。ここで負けた馬は後に重賞で勝利したり、素質の高さを見せつけたり…ここで勝ったソダシは言うまでもなく強い。スピードの持続力戦で時計の出る馬場であった。
桜花賞
このレースが個人的にはNo. 1。
上から
シュネルマイスターのNHKマイル
ソダシの桜花賞
1000m通過が共に56秒代で、このハイレベルなスピードの持続ラップを踏んだ場合、前の馬はかなりきつい。しかしながら、ソダシは3番手追走で勝利してしまう。普通なら差し有利で前の馬は壊滅。ソダシも負けて当たり前のレースだったはず。それをこのメンバーレベルでも勝ってしまうのだから、スピードの持続力はかなりのモノ。このレースだけ見ればあのシュネルマイスターに勝てたかもしれないと思わせる程の内容。
札幌記念
52キロだったとはいえ、あのラヴズオンリーユーに勝った事実は素晴らしい。ラスト4Fからは持続力戦。雨の影響は少なく、開幕2週目ということもあり馬場状態は良かった。
ここで洋芝適性について言及したい。洋芝を好走できたからタフな馬場でも大丈夫という理論には反対である。洋芝は開催が進むにつれて、タフな馬場になるのであり、開催がまだあまり進んでない場合高速馬場になることもある。つまり、ソダシが勝った札幌記念の週はまだ時計のかかる馬場ではなかったということである。
・以上3レースの共通点
→時計の出る馬場かつスピードの持続力戦
彼女は時計のかかる馬場や1800以上で瞬発力が求められる場合、凡走している。
→オークスは瞬発力勝負になり8着。
→ 秋華賞は直線向かい風の影響や雨の影響で時計がかかる馬場になっていた。そのためかなりの消耗戦となった。さらに歯の影響もあってか、10着と大敗。2000も長い彼女にとってさらにそれ以上の距離適性が求められたため、厳しい展開となった。
札幌2歳Sは消耗戦だったが、レコード更新など時計の出る馬場であった。
[結論]
時計の出る馬場というのが1番の好走条件。スピードの持続力戦になったらなお良い。1600がベストだが、2000でも求められる適性によっては好走可能。
総括
今回求められる適性を考えた時に、中京ダート1800はアップダウンが激しく消耗戦になりやすい舞台で、2000以上のダート実績が必要である。昨年や一昨年のようにある程度流れて、1:48.5〜1:49.5くらいの決着になれば好走する余地はあるかもしれないが、ダート界の一線級が集まる今回、時計はある程度出るにしろ彼女にとってはかなりのタフな展開が予想される。勝ちまでは厳しく、枠によっては消したい。もし狙うのならば東京ダート1600だろう。
父クロフネが二刀流として競馬界に激震を与えたように、ソダシもバケモノだったとなればコントレイルやグランアレグリアがいなくなった今、競馬界がさらに盛り上がるだろう。しかし、どう考えてもダートよりは芝向きであり、二刀流としは活躍できないというのが私の見解である。
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