シェルター

きみはマンガの山田に似てる
クリクリ潤んだ大きな目
合うと怯えてすぐそらす
教室の隅で突っ伏して
サラサラマッシュがひを受けて
イヤホンで世界を
シャットアウトする
何も入って来ないように
シャットアウトする

二〇〇二年の七月
校内でたった一人
ジーザスアンドメリーチェインの
My Little Undergroundを
口ずさんだきみ

誰にも聞こえない

中学の時はあんなじゃなかった
教室の真ん中で机に座って
よく笑ってた
「ありがとう」
と僕に言わせて
言えなくて
何度も
「あ」
と
繰り返すのを
笑ってた
みんなも笑う
とても楽しそう
「あ」
「あ」
「あ」

しばらくしてあいつの親は離婚して
母親と二人で狭いアパートに引っ越して
数学で九十八点取ったことを
何度も自慢するからって
みんな口を聞かなくなって
あいつは怯えた目をするようになった
みんな、みんなの濁流に飲まれて
息ができない

そんな話をクラスメイトから聞いた
狭いアパートの場所も聞いた
体育の前、きみはゆっくり着替えをする
YMCって書かれたＴシャツを
捲りあげたときに見えた
あばら骨と二つのホクロ
寝る前に
思い浮かべる