小泉花音は自重しない 前日譚 『将来の夢』
冬期休暇課題作文『将来の夢』 二年一組 卯月 澪
私は特異体です。幼い頃に能力測定で超能力系精神型精神観測と判断されました。いわゆる精神観測能力者(サイコメトラー)です。
精神観測は対象に接触することで物や人の記憶や心を視ることができます。その能力の応用力は多方面に活かすことができ、特殊能力(ユニークスキル)より貴重な能力とも言われています。
小学生の頃に、精神観測(サイコメトリー)を活かして医療に貢献している特異体の医師の方にお会いする機会がありました。内科医になればどんな病気も早期発見する事ができ、外科医になっても、精神観測(サイコメトリー)で患者の状態を確認しながら施術することで、難しい手術を成功させる名医を目指せるんだそうです。
中学に入って、行政の特異体職業適性相談に申し込み、相談員の方からお話を聞きました。精神観測は警察の捜査課や研究職など能力適正も広く、特異体の異能の中でも特に歓迎される能力だと知りました。
私は、昔はこの能力を疎ましく思っていましたが、今では発現した能力が精神観測(サイコメトリー)で、本当に良かったと思っています。
小学生の頃の私は、友人がいませんでした。
特異体の子もそうでない子も、私の能力で心の内を見られることを怖がり、私に触れるどころか、近寄ることさえ嫌がりました。
いくら反応晶が光っていなければ能力は発動していない、制御しているから心配はないと説明しても、わかってもらえませんでした。
今では、そういう気持ちもわかります。逆の立場だったら、私も精神観測能力者(サイコメトラー)とは親しくできなかったかもしれません。
当時の私は、それが嫌で、悲しくて、とても辛かったことを覚えています。
そんな私が変わったのは、両親とのけんかがきっかけでした。
ある日、父と母に叱られた時に反抗して、こんな能力はいらなかった、この力のせいでろくに友人もできないと責めました。どうせ父と母も、私を疎ましく思っているのだろうとなじりました。
父と母は、二人とも自分を精神観測(サイコメトリー)してみろと言いました。
私は言われるままに両親に触れ、二人の心の内を視ました。
そして、父も母も、心の底から私のことを大事に想ってくれていることを知りました。
父と母は、精神観測(サイコメトリー)は、人の想いをたくさん受け取れる能力だと教えてくれました。私は身をもってそれを知りました。
精神観測(サイコメトリー)は、そんな能力です。
私はそれからずっと、この素敵な能力をどう活かすべきなのか考えていますが、まだ良くわかりません。
なので、先生もご存知のように、私は夏休みから非常勤バスターとしてハウンドドッグで活動しています。
将来、進路を選ぶ上で参考になると思ったからです。
夏休みは予備訓練をしました。バスターとして活動するために本物の銃で射撃訓練をしたり、体力づくりのために山中訓練も行いました。
そうした経験を経て、今はハウンドドッグの現場班のお手伝いをしています。今後は他の部署でお手伝いをする事もあるでしょう。それらの活動が、私の進路を決める何かのきっかけになればいいなと考えています。
あと数ヶ月で私たちは三年生になります。三年生になれば、高校受験の準備が始まります。より自分と向き合い、将来について考える必要があるでしょう。
将来、私はどんな職業に就きたいのか、今はまだ分かりません。
ですが、将来の夢はあります。
医師になり、医学に貢献する。
警察官になり、難事件の捜査に貢献する。
ハウンドドッグで特異犯罪と向き合う。
なんでもいいです。
私の精神観測(サイコメトリー)を一番有効に活かせる職業。それを見極めて、この素敵な力を誰かのために使う。そんな生き方をしたいと思います。
それが、私の将来の夢です。
小泉花音は自重しない 美少女助手の甘デレ事情と現代異能事件録に続く
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