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リピート④

梅雨入りの早さに驚いてはいるのだが、それよりも梅雨らしくちゃんと雨ばかりなことにもっと驚いている。
梅雨入り宣言をするとだいたい晴れが続き、このまま梅雨を飛ばすのか?という頃からやっと雲行きが怪しくなり、そして七夕くらいまではぐずぐずと悪天が続く。それが私の知っている梅雨だ。

こんなに早く、そして律義に雨ばかり。早くきた分早く明けるのだろうか。そうだとしたら今年の夏は長いのだろうか。
夏は短いからいいというのに。

長い間かけて読んでいた本を一冊読み終え、なんだか取り残されたような気持ちになる。

私は、例えばミステリや推理などの続きが気になって仕方がなく一気に読破していしまいたくなるような本をあまり読まない。為になるような知識の本も久しく読んでいない。その時期の気分というのは大いに関係しているのだろうが、捉えどころの曖昧な、淡々としていて読了後には爽快な気分にも幸せな気分にもならない。ただ放り出されたような、取り残されたような後味が残る、そんな本が好きだ。

個展の準備から駆け抜けてきた。
私はもう人形を作らなくてもいい。

休みの日は気が済むまで寝ることができるし、積みあがった本を読むことも支払いだけ続けているサブスクでの映画鑑賞も、し放題だ。

しなくてはいけないことが何一つない。なんて自由なんだろう。
自由というのは行き止まりに似ている。

私の家は、まだ5月だというのに冷房が必要になるくらいに熱がこもる。纏う空気の重さにうんざりする。飲み終えた酒の空き缶が溜まる。
私は翌日、その空き缶と後ろめたさを纏めて捨てる。

雨が止む気配はないが、きっとあっという間に夏は来てしまう。

湿度を孕んだシーツを見下ろすと、放り出され、取り残された私が寝ていた。






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