短歌って何?というあなたへ贈る現代短歌ことはじめ ~初心者の一首目の作り方~
「短歌」って言われたときに百人一首のイメージで止まっている人って多いと思うんです。
あるいは、書店でなんか面白そうな短歌を見つけたけどその後どうすればいいのか分からない人とか。これから新しい趣味を始めようとしている人もいるかもしれない。
そういう、「短歌のイメージはフワッとしてるけど、漠然と興味がある」人が、実際に一首を作るまでを応援する記事のつもりでこのnoteを書きました。
Wikipediaやコトバンクよりも知識ゼロの人に優しく、かつ”今”の短歌シーンが分かるようにしたい!!という野望のもと作りました!
読み終われば自作の短歌が手元に一首できあがっているはずです。
一刻も早く本編が読みたいよ! という方は目次の「あなたの短歌はどこから?」まで飛ばしてご覧ください!
かなり細分化したら目次が激長になってしまいました、、それぞれの章は短めなのでお好きなところからどうぞ!
余裕がある方は次の章へお進みください。
最後まで読むと自然と短歌が一首できるワークショップを(たぶん)追体験できます。
(この記事の元になったイベントについて)
この記事は2024年4月28日に文芸サークルPen Clubで開催した超初心者向けワークショップ『現代短歌ことはじめ』を下敷きにしています。
👇実際のポスター。大学の新歓イベントでした。
👇当日のワークショップ進行予定はこんな感じ。タイトルだけしっかりしていますが、くだけた話を多くしていますのでご安心ください。
主に小説を書くサークルでのイベントだったので、短歌は一首も作ったことがない人が半分超でした。
教科書的な紹介なら教科書や市販の素晴らしき入門書たちがあるので、実際のワークショップと同じような流れでざっくり書いてみようかなと思います。
はじめに
ちょっとだけ自己紹介とか、どんなことをこのnoteで書こうとしてるか? とかの話をします。
まず自己紹介から。
ワークショップ主催者、かつ、この記事の執筆者の錦木圭です。
色々話すより拙歌をご覧いただいたほうが早いかなと思うので、以下のスライドをどうぞ!
ポスターにも書いたんですが三日坊主です。
苦手なもの三銃士として「毎日一話解放されるWeb漫画」「美容室の予約」「育成系ソシャゲ」があります。
見ての通り、その辺にいる大学生です。お洒落な国内バンドとハードロックが好きです。深夜にいいボカロをディグったりもしてる。旅行とかカフェ探しとかも好き。最近の楽しみは友達とレンタルスペースで騒ぐことです。
そんな人間がTwitterで朝晩、ほぼ毎日短歌を投稿して一年になります。
勿論なんらかの点で短歌が好きだな~と思えたからこうなっているわけで。その「なんらか」を話すための記事になれば嬉しいなと思います。
そして当日、同じく登壇いただいたサークルの先輩の鞘路直崇さんです。後ほど短歌のメイキングでも登場してくださいます。
3か月おきに発行される弊サークルの部誌に毎回短歌を寄せていらっしゃる方です。
ちなみに一首目の歌は元々ロシア語で詠んだ短歌の和訳とのこと。(歌人が全員こんな芸当をできるわけでは勿論ないのでご安心ください)
短歌、超入門知識
ここから本編に入ります。
短歌、って言葉だけはどこかで知っているのではないでしょうか?
中学だか高校だかで一回くらい勉強しているかもしれません。でも正直言って俳句と短歌の違いってよく知らないし……という人も多いのでは?
俳句は575、短歌は57577です!
このnoteではちょっと長いほうの解説をするわけですね。
とか知っている人がいるかもしれません。
ちょっと詳しい人なら穂村弘さんや水原紫苑さんというお名前をご存じかもしれない。
ツイッタラー各位におかれましては木下龍也さんの短歌がバズっているのを見たことがあるかもしれませんね。
それから、和歌と短歌の違いが分からない! という人もいると思うのでざっっっくりとした説明をすると、
与謝野鉄幹(与謝野晶子の夫)、正岡子規から先がいわゆる「短歌」
です。
深入りはしません。
近代以降の57577の形式を主に短歌ということだけ覚えていれば最初は問題ないと思います。
そもそも和歌のなかに長歌や短歌があるとか、現代短歌に口語と文語があるとか色々な話があります。気になった人はぜひ調べてみてください。歌人たちの理念をかけた熱い議論をたくさん見られます。
実際にちょっと歌を見てみる
資料集の歌人たち
まず短歌というものの紹介がてら、高校の時の資料集を探してみました。短歌というとこのあたりを想像する人がいるかもしれない。
短歌を真剣にやっている今読み返すともう良すぎるんですが、とっつきにくいと感じる人もいるんじゃないでしょうか?
筆者も最初はそうでした。
ので、今回はさらっと触れる程度にとどめます。
短歌は逃げないのでいつか迎えに行ってもらえたらと思います。
最近の歌人たちの人気タイトル
お堅い感じから急に現代になりました。
ちなみに両方話し言葉で書いてあります。短歌を全然知らない人に実際に貸したことがある二冊なので、この文章を読めるあなたなら難なく読みきれるはずです。
「歌集」っていう単語からタイトルが遠い二冊をセレクトしてはみましたが、この本にとどまらず書店にあるのはラフな感じのものも多いです。
短歌で何ができるの?
一首詠むのがゴールなので、ここで個人的に始める前に疑問だったことを話そうかなと。
始めて短歌を読んだときの感想って「はぁ、そうですか」みたいな感じだと思うんですよ。もしくは「分かる~!」とか。
どちらにせよ「よし私も詠むか!」ってなりにくくないですか??
私たちが教科書で見る短歌ってもうできあがっていて、ずっと変わらないものに見えるのが原因だと思うんですよね。
日常からどんな過程を辿ったら「短歌を詠もう」というモチベに行きつくのかよく分からないというか。
何をできるのが楽しくて短歌をしようと思うのか、分からなかったんです。
ですが、実際にその過程を辿った身として、「だいたいなんでもできる」とお伝えしたいです。
言い回しに若干の違法っぽさがあるので、大まかに2つの「なんでも」に分けてみます。
まだ頭に疑問符がついている人が大多数だと思います。
ここでスライドを。
こんな感じです。
まだ疑問符が見えます。それぞれ説明しますね。
感情の最小単位
インスタやYoutubeで見かけるVlogみたいな使い方もできます。
自分の感情をどんどん細分化して足跡に残すこともできます。
例えば筆者が短歌を詠み始めたのは高校の時だったんですが、「受験ってうまく言えないけど大変」と思っていたときの歌が結構あります。
その「うまく言えないけど大変」をいくつも短歌にしていったとき、
「自分のやりたいことが本当にこれなのかという不安さ」
「努力が思うように成績に結びつかないもどかしさ」
「体力的限界への苛立ち」
みたいな感じで細分化されていったんです。
これ以上分解しきれない単位みたいな存在として短歌があった。
もちろん別の意図で詠むこともできます。
社会に対する自分の意見を話すための言葉にすることもできると思いますし、単純に31文字という枠内の言葉を考え続けて芸術として昇華することもできます。
つながる形式
短歌を介したイベントで、自分が考えた/感じたことを誰かに手渡すこともできます。
最たるものは歌会。短歌創作と人狼の掛け合わせと思ってください。「歌会 やり方」とかで検索すると楽しいです。
最近はネット歌会もあります。Discordなどを使ったものからオープンなものまで色々です。
短歌ユニットやネプリは中級者向けかもしれない。
Twitterのコミュニティでよく共有されている概念です。あんまりWikiで解説されていないと思うので少し説明してみると、ユニットは複数人での短歌創作をするグループ。四捨五入するとバンドを結成するようなものです。
ネプリはネットワークプリントの略です。イラスト好きな人は知っているかもしれません。
作者がプリントのコードをネットで共有すると、読者が地元のコンビニで特定のコンテンツを印刷できる仕組みです。
中身は印刷してからのお楽しみ。
いろいろ挙げてみましたが、想像できるものは本当になんでもできます。
現時点でできなかったらあなたが実践すればいいのです。もし企画ができたら何が何でも私に見せてください。
そして最も言いたいのは、秘密にするのも話しかけるもすべて肯定されているということです。自由があるよ、と。
いかがでしょう、案外身近なものに思えてきませんか?
あなたのアイデアを広げる一首
とはいえ、いきなり作るのも難しいかもしれません。
そんなあなたのために、「こんな歌もありなんだ!」と思える短歌をまとめてみました。ぜひ過去の筆者と一緒に驚いてください。ぜひ。
また、下のスライドに挙げたのはすべてインターネットから拝借した短歌です。
驚くことに全部無料です。ググったら元の投稿を見ることができます。
幅広く選んだつもりではあるのですが、ワークショップにて既に「趣味全開になっている」との指摘を受けているので恐らく趣味全開のセレクトです。
一首作るってどういう思考回路?
──「弦」の短歌メイキング
で、アイデアは広がったけど実際どう作るんだよ、という疑問を解消したいと思います。
突然ですが、
と言われたらどうしますか?
もしお時間があれば少し考えてみてください。
多くの方は「どこから始めればいいの???」と感じるはずです。
「歌題って何?」という疑問もありそうです。
まず題のほうから考えてみます。たとえば「弦」なら、この一文字が入っていたらなんでもありです。余弦定理でもいいし、カジュアルな歌会なら弦を使った地名もありです。弦という文字が入っていたらいいよ! という意味です。
逆に「テーマ」と指定されていたら、それ自体を短歌に入れなくても大丈夫です。例えば春をテーマに一首、だったら短歌の中に「春」という単語をいれなくてもいいけれど、入学式や苺のように春を連想させる一首になっていればいいのです。
では、少し分かってきたところでメイキングをご覧ください!
いかがでしょうか? 感動のポイントが見つかったらそれを軸に色々単語を出してみて、伝えたい欠片を盛り込んでいく過程が少しでも分かりやすくなればいいなと思います。
実際に一首詠んでみよう
満を持して実践編です。
よろしければお手元に紙とペンを用意していただいて、一首詠んでみてください。
もしくはWordやGoogleドキュメント、スマホのメモ帳やLINEのkeepメモもよいでしょう。ちょっと試すうちにしっくりくるものが見つかると思います。
当日は30分ほど時間を取りました。
ちなみに、短歌は一行書きをおすすめしています。
○○○○○
○○○○○○○
○○○○○
○○○○○○○
○○○○○○○
↑ こんな感じの書き方よりも、
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
↑ こんな感じで一気に書いてしまう方が言葉のつながりが自然と滑らかになるので書きやすい&言いたいことを伝えやすいです。
詠み終わったら
全員にお願いしたいことがあります。
まず保存してください。
紙の場合はクリアファイルへ。パソコンなら保存ボタン。携帯のメモ帳なら自動保存だから大丈夫かな。
最初の一首が散逸せずに済む方法があるのなら防ぐべき。出発点が分かるし。
何を隠そう、私が最初の一首を覚えていなくてちょっと後悔しているのです。個人的なアドバイスですみません。
保存しましたか?
確認したら次に行きましょう。
「一首あればできること」を下に色々列挙してみました。
作歌のモチベが自己顕示欲である自覚がある人は発表の機会を作りましょう。
コンセプトを決めて何首か作れる気がする! という人はここから「連作」を組むことをおすすめします。最初は2,3首連作を作ってみると良いかもしれません。音楽でいうところのEPみたいな感じです。
とはいえこれもいきなり作るのは難しいと思うので、私が昔作った連作のリンクを貼ってみますね。目次で「自選」まで飛ぶと初期の頃の連作が載っているはずです👇
それからまた出てきました、歌会。やはり歌会すると短歌やってるな~という気分になるのでおすすめです。一首あればできます。
ググりましょう。そして歌会をしよう。
最後に、SNSに投稿してみましょう。
#短歌 や、#tanka のタグをつけて短歌を投稿するだけ。ラフな雰囲気の歌は #tanka のタグに多い気がします。
Twitterが活発なように見受けられますが、インスタもある程度反応が来ますのでお好きな方でアカウントを作ってみると楽しいです。
余談ですが、検索してみるのもいいですね。
言い方が悪いかもしれませんが、有料級の歌がごろごろ転がっています。
ちなみに時間帯によってみられる歌が違うので何度か調べてみるといいでしょう。筆者は夜の24∼25時ごろに流れてくる歌が好きなのでよく検索しています。
もっと詠んでみたいあなたへ
一首詠んでみて、二首目・三首目を作ってみたい! と思った方のファーストステップを色々提案してみます。
極論、書くものがあればいいです。
ノートにまとめている人をよく見かけます。お気に入りのB5ノートを探してみるのも楽しい。
ネット派のあなたには"suiu"というサイトを紹介します。
なにせ写真がいい。フォントもお洒落。このサイトに自分の短歌が載るというだけでわくわくします。もちろん見るだけでも楽しい。
投稿する方は、運営の方が出していらっしゃるYouTubeで詳しい解説を見られるのでそちらもどうぞ。
スライドにある創作アカウントの創設は「詠み終わったら」の章と被るので省略します。
それから「うたの日」。短歌好きには欠かせないサイトです。
ポップでかわいらしいサイト。お題に合わせて歌を詠む→一日以内に好きな歌を選ぶ→結果発表という流れで歌会を毎日開催しています。最近10周年だった模様。
あるこじ様による分かりやすい解説サイトもあるので是非。私も最初お世話になりました。
また、学生の方は学生短歌会に所属してみるのも手です。筆者が所属している早稲田短歌会では、参加自由の歌会を毎週しています。
もっと読んでみたいあなたへ
もっと色々な人の本を読んでみたい! と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなあなたのために、「日常度」「爽やか度」という二軸でおすすめの短歌を募集し、マップにしてみました。
こちらに入りきらなかった歌集が山ほどあるので、ぜひ私がかつて募集した元ツイートも合わせてご覧ください。
この画像にはタイトルしか載っていませんが、元のツイートでは多くの方が作者・タイトル・推しポイントを挙げてくださっています。
(ご参加くださった皆様、その節はありがとうございました!)
さいごに
すごく気障な言い方になってしまうのですが、あなたの文章はあなただけのものです。
どんなに優秀な歌人がそばにいようと、上手さにぶちのめされようと、あなたの言葉を代弁できる人間はあなた以外いません!!!
木下龍也さんが『天才による凡人のための短歌教室』で書いていらっしゃいますが、短歌を辞める最大の理由は「別の歌人」です。
繰り返しになりますが、あなたの人生の主人公であるあなたが言葉を紡ぐことは、あなたにとって代替不可能なんです。もはやこれを言いたいがためにワークショップを企画したと言っても過言ではない。
ともかく、あなた自身の生活の選択肢として短歌を始めてくれたら主催者冥利に尽きます。
長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
ご質問があれば筆者(@kei_nishikigi)のアカウントまでどうぞ!
いるか分かりませんが、「一首できたけどSNSに公開する勇気がない」という方がいらっしゃったら私宛に送ってくださっても大丈夫です。
短歌に興味を持ってくださったあなたがよい短歌ライフを送れますように!
※リンクを貼る際は特に許可は必要ありませんので、お近くに短歌を始めようとしている方がいらっしゃればお気軽にシェアしていただけたら嬉しいです。
(筆者名(錦木圭)を追記していただけると検索しやすいため助かります!)
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