第63回グラミー賞、結果についての雑感

note更新は久しく行っていませんでした。申し訳ありません。実はこの間に、ブログを【face it】から【イマオト】という名に変えました。

毎日更新7年目に突入したブログが縁で、チャートを絡めた『NHK紅白歌合戦』の記事をNumberWebに掲載することができました。

ブログは日々更新しながらnoteは久しぶりなのですが、ブログを書いた後、”この内容はどうしても今日のうちにアップしたい!”というものをnoteに書いていけたらと思っています。


日本時間の今日、第63回グラミー賞が開催されました。

記事により着眼点、言い換えれば”どの部分を最重要とみなすか”が異なります。昨年史上初の主要4部門を制したビリー・アイリッシュが2年連続で主要部門を制したことを踏まえ、モデルプレスは前面に押し出しています。

今回の主要部門受賞作品を確認します。

最優秀レコード賞 (Record Of The Year)
 ビリー・アイリッシュ「Everything I Wanted」
最優秀アルバム賞 (Album Of The Year)
 テイラー・スウィフト『Folklore』
最優秀楽曲賞 (Song Of The Year)
 H.E.R.「I Can’t Breathe」
最優秀新人賞 (Best New Artist)
 メーガン・ザ・スタリオン (ミーガン・ジー・スタリオンと表記する場合も)

今年は綺麗に分かれた結果に。この結果を踏まえ、私見主体ながら今年のグラミー賞を振り返ります。


女性のエンパワーメントが強く出た形に

今年も主要部門が全員女性という結果に。しかもメーガン・ザ・スタリオンのパフォーマンス時にはカーディ・Bが登場し「WAP」を披露。

女性があけっぴろげにセックスを謳うこの曲は一部から反感を買ってきたものの、蓋を開けると米ビルボードソングスチャートを通算4週制する大ヒットに。男性によるセックスソングは数多あるのに女性だと言うことすらできない…それを踏まえた上で作られた曲に代表される、女性が主張することの大切さが今回の受賞ラインアップからみえてくるようです。一方の日本では下記記事が出たばかりなのですが、この記事になぞらえるならばグラミー賞を制した歌手に代表されるような”わきまえない女性”が見事に存在感を示したと言えます。

今回は主要部門を逃したとはいえメーガン・ザ・スタリオンに客演参加した「Savage」等でグラミー賞を受賞したビヨンセは、受賞数が女性では単独最多となる28に。またテイラー・スウィフトは女性では単独最多となる3つ目の最優秀アルバム賞を獲得しています。

人種差別への対抗姿勢が強く出た形に

H.E.R.「I Can’t Breathe」は昨年またもムーブメントになった“Black Lives Matter”を象徴する曲であり、タイトルは白人警察官に殺害された黒人男性の言葉。

この曲をはじめ、ダベイビーとロディ・リッチが「Rockstar」をアンソニー・ハミルトンを迎えて、またリル・ベイビーが「The Bigger Picture」をパフォーマンスする等、黒人の地位向上を訴える動きを示す曲がセレクトされていたのが特徴です。

今回の賞で目立ったBlack Lives Matterに対しては“持ち上げすぎ”だとか、”白人が受賞したら差別される”などという声が一部でみられましたが、賞の直前には現地に住むアジア人が差別されているという報道があり、人種に限らず差別が蔓延っている以上、そんなことは軽々しく言ってはならないと強く思うのです。

(下記映像は暴力表現が含まれます。視聴の際はご注意ください。)

差別増加の背景には前大統領ドナルド・トランプ氏の姿勢、すなわち嫌いという感情を社会的な正しさとみなす自身の愚かさを是としてしまったことで同様の考えを持つ人が態度を表に出し始めたことがあるでしょう。これは大統領が変わったところですぐに収まるわけではないため、差別の根絶は今後も訴えていかなければなりません。昨年の大統領選挙の結果等が、「I Can’t Breathe」等を押し上げる力になったことでしょう。


影の主役はDマイル?

今回のグラミー賞に出演を懇願し見事にその座を射止めた、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるユニット、シルク・ソニック。そのデビュー曲で3月5日にリリースされた「Leave The Door Open」はブルーノ共々、Dマイルがプロデュースを担当。このふたりは嵐「Whenever You Call」でもタッグを組んでいるのです。

音楽評論家の林剛さんは今回のグラミー賞の結果を受けてこうコメント。最優秀楽曲賞を受賞したH.E.R.「I Can't Breathe」も、となると注目しないわけにはいきません(「I Can't Breathe」はDマイル単独プロデュース)。Dマイルは律儀に、自身が手掛けた作品をプレイリストにまとめていますので気になった方は是非。


BTSは元来受賞の可能性が高くなかった?

テレビ中継がはじまる前にはテレビOAされない部門が発表されますが、日本時間の今朝までに最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)部門が発表され、レディー・ガガ & アリアナ・グランデ「Rain On Me」が受賞。BTS「Dynamite」は初のグラミーを手に入れることができませんでした。

この結果に対し、ファンの中にはグラミー賞のシステムに不正がある等揶揄する声が複数みられ、目の当たりにした自分は愕然としています。このような態度を採る方は少数派であることを信じたいですが、以前米ビルボードに対しても不服の声があがっていたため、どうしても気になってしまうのです。

たしかにBTS「Dynamite」は米ビルボードソングスチャートを制しK-Popアクト初の快挙を成し遂げていますが、チャートを構成する指標の動向をみると、果たして世間一般に広く認知されたのかが気になっていました。この点は昨年末の米ビルボード年間ソングスチャート分析記事で触れています。

米ビルボードソングスチャートの構成内容等については【イマオト】で紹介したばかりです。

無論チャートが選出のすべてではありませんし、だとしたらザ・ウィークエンドが完全無視されたことはどう説明するのかという指摘もあるでしょう。しかしノミネート曲でチャートの動向をみると、「Rain On Me」やジャスティン・ビーバー feat. クエイヴォ「Intentions」に比べてあきらかに所有指標が高く、それも大量のリミックス投入策が影響を及ぼしたことが解ります。最終的にラジオ指標でトップ10入りを果たしてはいますが、ラジオやストリーミングといった接触指標こそ押し上げる必要があると思うのです。個人的には、BTSのメンバーの人柄の良さに救われた気がします。

なお韓国といえば、シルク・ソニックのメンバーでもあるアンダーソン・パークが「Lockdown」で最優秀メロディック・ラップ・パフォーマンス部門を受賞。韓国人の母を持つダブルであるアンダーソン・パークについてはもっと取り上げられるべきだと思っています。



というわけで、今年のグラミー賞について思いつく点を挙げてみました。ザ・ウィークエンドが「Blinding Lights」でノミネートされていたならば主要2部門はかっさらったのではないかと思いつつ、とはいえ今年の結果は実に興味深いと感じています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?