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絵を描くこと

自分にとって、昔から絵を描くことは「ご飯を食べる」「歯磨きをする」のと同じくらいの行為でした。

絵を描かない日があると、『今日何もしてないじゃん』と感じてしまうくらい。

物心ついた時から絵を描くことが好きで、幼いときは、恐竜や動物、電車ばかり描いていました。その反面、人間を描くのが苦手でした。(人間にあまり興味がなかったのかもしれません。)

恐竜や動物だと毛並みや鱗状の皮膚、電車だと車輪の細かいギミックの部分。とにかく質感や細かいパーツを描くのが好きで、ここは今でも変わっていない部分かもしれません。

何がきっかけで絵を描き始めたかは覚えていませんが、『真っ白な画面から作品が生まれてくる』感覚が好きで、気づいたら絵を描くことに夢中になっていました。

学生のときには、遠足のしおりや卒業文集の扉絵、文化祭の劇のアピールボード(宣伝ポスター)とかも描かせてもらいました。

色んな人に褒めてもらったり、感謝されたり、いつしか『自分の役割は絵を描くことなんだ』という気持ちが芽生えてきました。

小学生の時からずっとサッカーをやっていましたが、高校2年生の時に『サッカー選手はさすがに無理だし、サッカー選手になりたい訳でもない』ということに気づき、サッカーと同じくらい好きだった『美術』を学べる美大を目指すことを決めました。

高校3年生になって美大予備校の『藝大コース』に通い始めました。

結論から言うと、僕は2浪して多摩美術大学のグラフィックデザイン科に入学しました。やはり藝大の壁は高かったです…。

でも僕にとって美大予備校に通った3年間は、毎日が新鮮で、学びの連続で、本当に貴重な時間だったなと感じています。自分の凝り固まった考えや先入観を沢山壊してもらいました。予備校時代のことは、長くなりそうなので、また別の機会に書こうと思います。

多摩美術大学に入ってからは、『伝わるデザイン』とは何なのかを学びました。絵画、イラストレーション、タイポグラフィー、アニメーション、アートディレクション、エディトリアル、写真…。1・2年生では、とにかく身の回りにあるデザイン表現を一通り学び、3・4年生は自分の好きな科目を選択して、学んでいくという流れでした。

僕は『イラストレーション』と『アートディレクション』を選び、"そもそもの表現力"と、"その表現力をどのようなコンセプトに合わせて、見せていけばいいのか"ということを軸に課題に取り組んでいました。

この『コンセプト』に対しての考えが、自分には足りないということが、大学に入って一番感じたことでした。

当たり前のことですが、世の中のデザインには必ず、何かしらの目的やコンセプトがあります。こんな人に届けたい、こんな人に興味を持って欲しい、こんな価値観を変えたい、こんな問題を解決したいなど。

僕は大学に入るまでは、『何となく』とか『自分が好きだから』くらいの解像度で絵を描いていました。それでも周りの人に喜んでもらえたり、褒めてもらえたりしたのは、あくまで『趣味』の範囲だったからかもしれません。

お仕事になると、大小はあれど、必ず解決しなければいけない『問題』があり、それを解決するための『イラストレーション』を提供しなければいけません。そして、そこには『お金』が発生します。

こう考えると『何となく』『自分が好きだから』がダメなのは当たり前なのですが、当時は、『イラストレーションの役割』を本当の意味で理解していなかったんだと思います。

『ただ上手い絵には何の価値もない』

教授に言われた言葉、今では身を持って痛感しています。

それから絵を描くときは、『なぜこのモチーフを選ぶのか』『なぜこの色を使うのか』『なぜこの構図なのか』を意識するようになりました。

描くモチーフは可能な限り、歴史から調べる。時間はかかりますが、このステップを踏まないと、誰にも刺さらない、深く味わうことができない、刹那的な絵を量産することになると思います。

そういった知識やコンセプトにこだわることは大前提の中で、何より1番大事なのは、『自分自身が自分の絵の1番のファンであること、そして毎回、絵の完成をワクワクしながら、楽しく描くことができるか』ということなのかなと思っています。

いくら知識があって、コンセプトが素晴らしくても、楽しく描けなければ、続けることは難しいですし、作品を観る側も苦しい気持ちになってしまうと思います。

どんなお仕事・ご依頼が来ても、『クライアントが求めているポイント』と『自分が楽しめるポイント』がちょうど重なる部分を毎回探しています。

また、尊敬しているイラストレーターさん、画家さん、作家さんは数え切れないほどいらっしゃいますが、僕は自分の絵が1番好きです。それくらい自信を持って、描き続けています。

ただ自分の絵に満足したことはありません。全力で描いた達成感は毎回あって、これ以上良い絵は描けない!とその時は思っていても、不思議なもので、しばらく時間を置いて見ると、反省点が沢山出てきます。

自分の絵に満足する日は一生来ないのだろうと思いますが、1mmでも昨日の自分よりも良い線、良い色、良い雰囲気が描けるように成長したいですし、そして、『なるべく長く愛される作品を丁寧に残していきたい』と思っています。

昨今、生成AIなどのテクノロジーの急激な発達により、みんなが上手な絵を生成できるようになったことで、『自分たちが提供できる価値って何だろう』と考える機会が増えてきました。ただ漠然と絵を描いているだけでは淘汰されるだけなので、そういった時代の変化にも目を向けて、上手く使っていく柔軟性が、より必要になってきたんだなと感じています。

よく分からないからといって、遠ざけるのではなくて、1回取り入れてみると、意外と自分にとってプラスに働く、ということも少なくありません。

今は20代ですが、30代、40代、50代と年を重ねていくにつれて、自分の絵がどのように風に変わっていくのか、自分自身も楽しみです。

皆さんお忙しいとは思いますが、ほんの少しでもお時間があった際は、自分の絵を見て頂けたら嬉しく思います。

これからも成長していきます!という決意表明の記事でございました。

kei saito


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