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今頃気付いて…

 何も知らなかった自分が恥ずかしいし、悔しい。今は、物凄く。もっと早く知りたかった。もっと早く出会えていれば… ある大切な方から教えてもらった本、アレックス・カー著『美しき日本の残像』

 脇目も振らず、狭い世界の中で精一杯目の前の事に取り組んで来たから…気付かなった。その事がいけなかったとは思わないまでも、もっと早く出会えていれば、もう少しもう少し進化した自分がここにいたのでは無いだろうか…また、捨てなくて良いものを捨ててしまわなくて済んだのでは無いだろうか…そう思うと、過去の自分に申し訳なくて…残念なため息が出る。 

 以前私が住んでいた家。私が生まれた頃にはこの茅葺きの屋根にトタンが被せられていたと思う。家の中は大きな黒光りのする梁と柱で支えられ、内壁は薄暗い土壁でザラザラとしていた。お縁の障子から低く差し込む外のひかりは、薄っすらと畳の部屋を明りで優しく照らした。部屋は静かな落ち着きに包まれていた。そのままで優しさが溢れ、そんな家であったことは確かで、本当に今思えばあの夏のひんやりした家の中の感覚は、今でも肌に残っていて忘れられない。


 冬は物凄く寒く、布団の中から吐く息が白かったのを覚えている。いうなれば、息をしている家とでも言おうか、一緒に生きている建物だったように思う。
 台風の風でトタン屋根が飛ばされて、近代的な家に建て替えることとなってしまったことは実は今思えば残念でならない。

 なんで気付かなかったのだろう… 良いものだという認識はあったし、尊いものだとも思ってはいたものの、そこで暮らしていたから普通のことと思っていたから、こんなにもとは思ってなくて、もっと早く出会いたかった。そしたらその後の10年はどれほどに豊かになっていただろうか?そう思うとこれからを大切に豊かにしたいと願う…この先も同じ様なことを思い返すのはもうイヤだから。気付いたこと、失いたくない。
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