小説│駆動 [#夜行バスに乗って]
23時半の高速バス乗り場は、漆黒の中で切れかかった街路灯が瞬きを繰り返しており、錆びれた舞台上を想起させるようだった。ガード下で一列に並ぶ人々の他に歩く人はなく、時折目の前の道路を、大型のトラックが低い振動音と共に走り去っていくのだけが、唯一の動きらしい動きだけだった。
私はバスを待つ列の中ほどに立ちながら、ダウンジャケットに顔を埋めた。北国の春は遅い。3月も末というのに気温は1桁を叩き出していてた。一方で、本日の目的地では桜が開花したらしい。しまったなと、僅かな後悔が芽