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「いっけなーい!遅刻遅刻選手権」にエントリーしました☆第10話

◯回想・曲がり角(朝)
京香がシュウチンに頭突きをかました直後の場面。
菜緒、驚きで膝から崩れる。
菜緒「えぇ〜っ…嘘でしょ?」
菜緒の持つ自撮り棒のスマホは、完全に地面にカメラが向いている。
×××
意識を取り戻し、辺りを見渡す修哉。
修哉を見ている京香。
爽太が修哉に、
爽太「大丈夫か、修哉」
修哉「あ、ああ、平気…」
少し朦朧としている修哉。
爽太が京香に近づき、小さくホイッスルを吹く。
爽太「(淡々と)エントリーナンバー5番、失格」
爽太、京香の肩に手を置き、
爽太「(優しく)なにか事情がありそうだね。話を聞かせて貰っていいかな」
京香「…(頷く)」
女性の声「あの…」
京香「?(振り向く)」
頭を抱えながら立ち上がる修哉に話しかける一人の京香と同い年くらいのスウェット姿の女性。
修哉「え、あ、はい…?!」
京香「(女性の顔を見て)…あっ」
女性は…眼鏡をかけていない宣子だった。
京香に近づいてくる菜緒。
菜緒「誰?」
京香「茂手木さん」
菜緒「誰?」
京香「茂手木宣子さん。略してモブちゃん」
菜緒「モブちゃん?あの?!」

〇フラッシュバック・回想・教室
京香を見ていた眼鏡ありの宣子。
宣子「(我に返り)はっ!ごめんなさい!すいません」
宣子、慌てて去っていく。

◯回想・曲がり角(朝)
宣子、ふらふらと修哉に近づいていく。
修哉「ふらついてるけど大丈夫?」
宣子「はあ。今朝うっかり眼鏡を壊してしまって、ひさしぶりにコンタクトで来たので慣れなくて…」
×××
修哉と宣子を見ている京香と菜緒。
菜緒「逆だろ普通。普段からコンタクトにしとけよ」
京香「そうだね」
×××
宣子、修哉に、
宣子「あ、あの…この辺にいるって聞いて…ファンなんです。握手してください。茂手木って言います」
修哉「え、あ、はい…えーっと…」
宣子「あー、この学校の生徒なんですけどエントリーはしてませんので…」
修哉「え、ああ、そうなんだ…あ、はい、こんな汚れた手でよければ…」
修哉、右手を差し出す。
宣子「すいません、変なタイミングで」
宣子、修哉の手を握り、
宣子「ポッドキャストの頃からのファンなんです。嬉しい…」
修哉「えっ?YouTube始める前のあの?」
宣子「はい!」
修哉「『修哉の…』」
修哉・宣子「(笑って)『ポッドポッドステーション』!!」
修哉、宣子、楽しそうに笑ってる。
×××
京香と菜緒、修哉と宣子を見ながら、
菜緒「ポッドキャスト?何それ?知ってた?」
京香「知らない」
×××
修哉と宣子。
修哉「嘘でしょ。リスナー確か40人くらいしかいなかったやつ」
菜緒「その40人の中の一人です」
修哉「うっそでしょ!?マジで?!」
宣子「授業中にこっそり何回も聴いてました」
修哉「うっそでしょ。まさかこんなところにリスナーが」
×××
爽太、宣子と修哉を見ながら首を捻っている。
爽太「ポッドキャスト?…」
×××
京香と菜緒。
菜緒「めちゃ盛り上がってる」
京香「茂手木さん、あんな風に笑うんだ」
×××
修哉と宣子。
宣子「あの…『モテモテハッピー』」
修哉「ハイハイ『モテモテハッピー』」
宣子「私です」
修哉「嘘でしょ?!ポッドキャストネーム『モテモテハッピー』本当に?本人?!」
宣子「本人です」
修哉「マジか!伝説のネタ職人『モテモテハッピー』、君だったの?」
宣子「めちゃめちゃ読んでくれましたよね」
修哉「だって面白かったもん。ネタ投稿の天才だと思ってたから」
宣子「いやいや…」
修哉「YouTubeとかは観てくれてるの?」
宣子「観てますよもちろん」
修哉「ネタ書いてくれたらいいのに」
宣子「ネタのコーナーないじゃないですか」
修哉「あ、そっか」
×××
京香と菜緒。
菜緒「ラジオのネタ職人ってこと?」
京香「そうみたい」
×××
修哉と宣子。
宣子「会えて嬉しかったです…これからも頑張ってください」
修哉「あ、うん…あ…ちょっと待って」
修哉、爽太に合図する。
爽太、バッグをゴソゴソ探り、食パン型参加証を取り出し修哉に渡す。
宣子「(それ見て)?」
修哉「ちょっと咥えてみてくれる?」
宣子「え?」
修哉「いや、あのちょっと…形式上というか」
宣子、辺りを見渡し、
宣子「はい」
食パン型参加証を咥える宣子。
修哉「ありがとう、で、軽く俺にぶつかってきてくれない?」
×××
京香と菜緒。
菜緒「シュウチン何やってんの?」
京香「?(首を傾げる)」
×××
宣子、食パン型参加証を咥えながら修哉にポンッとぶつかる。
宣子の口から食パン型参加証が落ちる。
宣子「ごめんなさい」
拾おうとする信子を修哉が制する。
食パン型参加証を拾う修哉。
修哉「あの…」
宣子「はい」
修哉と宣子見つめ合う。
修哉「…突然だけど」
宣子「はい」
修哉「…今度YouTubeでまた『修哉のポッドポッドステーション』みたいな番組、立ち上げようと思っててさ」
宣子「え?!マジですか?嬉しい!」
修哉「それでなんだけど実は…」
宣子「はい」
修哉「番組の作家になってくれないかな。放送作家ってやつ…興味ないかな」
宣子「え…?!はい。あの…興味…あります」
×××
京香と菜緒
菜緒「あるんかい!いや、まあ、あるだろうけど」
京香「ありありでしょ」
京香、笑顔。
×××
修哉と宣子。
修哉「本当に?よかった。じゃあ、今度打ち合わせしたいので連絡先を…」
宣子「あ、はい」
スマホを取り出し、LINE交換する修哉と宣子。
×××
京香と菜緒。
菜緒「おいおい、なんだあれ。ずっこくね?ていうか、なんだこの展開」
京香「二人、合ってるかも」
× × ×
修哉と宣子を見ながら、首を捻っている爽太。
京香(N)「という感じでなし崩しに大会がおわりーー」
(回想終わり)

◯合陣高校・保健室(朝)
ベッドに座っている京香。
椅子に座ってる爽太と菜緒。
京香「で、私は爽太さんに連れられてここにいると」
爽太「事情はだいたい分かりました。幼い頃とはいえ、うちの息子がご迷惑をおかけしました」
爽太、京香に頭を下げる。
京香「ちょ…こちらこそ、修哉さんの顔面に打撃を与えてすいませんでした」
京香、爽太に頭を下げる。
菜緒「頭突きって言えし」
爽太「いえいえ、軽症でしたし、男の子なので。大丈夫です」
菜緒「男の子」
京香「本当に反省してます」
爽太「いいんですよ」
爽太、椅子から立ち上がる。
爽太「それでは…事情が分かったのでお二人ともお帰り頂いて結構です。ありがとうございました」
京香、菜緒、椅子から立ち上がり、
京香「(頭を下げ)本当に申し訳ございませんでした。ありがとうございます」
爽太「菜緒さんも長い時間お付き合い頂いてすいません」
菜緒「はーい!…いえーい!お開きだ!お開きお開き~帰ろ帰ろ」
京香と菜緒、保健室の入り口に向かう。
爽太「京香さん」
京香「(振り向き)はい」
爽太「修哉に会っていきますか?」
京香「え?あ、はい…え~っと…」
修哉の声「会わないで帰るのはちょっと野暮じゃないかな」
保健室の入り口から修哉が入ってくる。
修哉「話はだいたい聞いた。子供の頃とはいえ、僕も悪…ぐぅっ!」
すれ違いざま京香のボディブローが修哉に炸裂。
京香「菜緒、帰ろ」
菜緒「バイオレンスが過ぎるだろ。反省したんちゃうんか」
菜緒、修哉に、
菜緒「おつかれさまでした!失礼しまーす!バイバーイ!」
修哉「…(苦しそう)」
京香と菜緒を見送る修哉。
爽太「フラれたな」
修哉「木っ端微塵です」
苦笑する修哉。
修哉、いつまでも京香と菜緒を目で追っている。
修哉「全部ちゃんと覚えてる。みのりに京香を取られたと思って僕はヤキモチをやいた。まさかあんなことになるとは思ってなかったんだ」
(第11話に続く)

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