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「いっけなーい!遅刻遅刻選手権」にエントリーしました☆第3話

第三話
〇カラオケボックス(夕)
京香、瑞稀、渚、香織、菜緒。
菜緒「私が言いたいのは…この大会は私の勝ちが約束されてるってこと」
瑞稀「どういうこと?」
菜緒の眼がキラリと光る。
京香「出来レース ?」
菜緒「そう、出来レース。私、こう見えても有名なインフルエンサーじゃんか…私がシュウチンのYouTubeに出たことあるの覚えてる?」
渚「知ってるー」
香織「知ってるも何もうちの学校の子は全員見たんじゃない?」
菜緒「私とシュウチン、結構いい感じじゃなかった?」
香織「(首を捻る)いやあ…それは…」
菜緒「彼、あの時に私のこと気に入ったと思うのね。彼、私と付き合いたいのよ。だけど、本当は恥ずかしがりやで…だから、こんなに回りくどいことして私とコンタクトを取ろうとしてる…そういうことよ。そうとしか思えない」
渚「はあ」
香織「恥ずかしがり屋がYouTuberするかな」
瑞稀「そんな面倒なこと…連絡とる方法なんていくらでも…」
菜緒「連絡先交換しなかったのよね~。当時は私も彼氏がいたし、シュウチンも彼女いたはず。時間がたって私の良さに気付いたというか…」
渚「もう半年ぐらい前でしょ。ずいぶん経ったよね?」
菜緒「じゃ、なんでこの高校指定な訳?おばあちゃんの出身校?どうだか…この学校に私がいるのを知ってて指定したに違いないでしょ。絶対そうじゃん。だから…」
瑞稀「この大会は出来レースだと」
渚「ハイハイ」
香織「解散解散」
渚、香織、瑞稀、京香立ち上がる。
菜緒「え?!なんで?!ちょっと!」
渚「菜緒、TIKTOKで儲かってるんでしょ。カラオケ代払っておいて。じゃあね」
渚、香織、瑞稀、京香、部屋から出ていく。
京香「(独り言で)出来レース、ね…」
菜緒「ちょっと!あんたたち…(時計見て)まだ時間余ってるし。ちょっと!曲まだ入ってるんだけど」

〇道(夕)
歩いている渚、香織、瑞稀、京香。
渚「何なのあの女」
香織「だいたいさあ〜…」
歩きながら菜緒の悪口で盛り上がっている渚、香織。
横で黙って聞いている瑞稀。
彼女らの後ろを考え込みながら歩いている京香。
京香「…」
菜緒の声「そう、出来レース」

◯フラッシュバック
菜緒「この学校に私がいるのを知ってて指定したに違いないでしょ」

◯道(夕)
瑞稀、京香を見て、
瑞稀「京香、どうしたの?」
京香「うん…何でもない」
何事もなかったかのように笑顔を見せる京香。
×××
キャッキャとはしゃぐ渚、瑞稀、香織、京香。

T.5日後・202×年5月下旬(土)

◯京香の家・二階・京香の部屋(午前)
希子、京香に大きめの分厚い封筒を手渡す。
希子「はい、お姉ちゃん宛」
京香、受け取り、
京香「ん?…希子サンキュー」
京香、封筒の差し出し人を見て、
京香「ICCC事務局…?」
封筒を開け、書類を開く京香。
京香「(読み上げる)いっけなーい!遅刻遅刻選手権、略してICCC…」
横から手が伸びてきて京香の手から封筒をかっさらう。
京香「?!」
いつのまにかいる和樹。
和樹、京香からかっさらった封筒と書類を見て、
和樹「シュウチンからだ!」
京香「(驚く)カズちゃん、いつの間に?!」
希子「あ…さっきチャイムがなって忘れ物を取りに来たって…入れたらまずかった?」
京香、希子に耳打ち。
希子「別れた?一週間前に?!嘘?!」
京香「(和樹に)何しにきたの?突然来るなんてマナー違反でしょ。何、忘れ物って」
和樹「貸してた漫画。『SPY×FAMILY』最新巻まで…そっか書類が事務局から封筒で来るのか。メールじゃなくて」
京香「ちょっと、人に来た手紙を勝手に…」
和樹から封筒と書類を奪い返そうとする京香。
その手をうまく払いのける和樹。
和樹「(書類を読む)ICCC…Iは『いっけなーい』、CCは『遅刻遅刻』。もう一つのCは『選手権』…?」
希子「Cは…『チャンピオンシップ』のCかな」
和樹「馬鹿馬鹿しい」
和樹、京香、封筒と書類を返す。
和樹「そもそも選手権って何だよ。上から目線で腹立つー。偉そうに…」
京香「あのさあ…漫画渡したらさっさと帰ってよね」
希子「(京香に)それなあに?」
封筒からビニール袋に入った食パンのようなものが飛び出ている。
京香「ん?」
京香、ビニールから食パンのようなものと説明書を取り出す。
希子「何これ?!パン?!」
京香、説明書を見て、
京香「食パン型参加証…」
食パン型の物体を京香から受け取る希子。
希子「ぱっと見、普通の食パンだよね。(匂い嗅ぐ)無臭。でも美味しそう…」
説明書を広げ、文章を読み上げる京香。
京香「『この〈食パン型参加証〉をスタート時に口に咥えて頂くとあなたの唾液に反応してセンサーにスイッチが入ります。勿論本物そっくりの偽物の食パンです。抗菌機能があるので口に咥えても安心。でも食べないでください。僕とぶつかる時には必ずこの〈食パン型参加証〉を口に咥えてからぶつかってきてください』」
和樹「どういう仕組み?マジか?!」
希子「ずっと咥えてたら口疲れちゃうじゃん。涎が出ちゃう」
京香「『この〈食パン型参加証〉を口に咥えたまま僕がいる方角に向くと電子音が鳴り、僕の居場所に近付くにつれて音が大きくなります。とはいえ、ずっと口に咥えていると口が疲れてしまうので、僕から遠くにいる時は口から離して頂いて結構です』」
和樹「どんなメカニズムだよ…」
京香「『口から離してる間はビニール袋に入れて肌身離さず持ち歩いてください。〈食パン型参加証〉を失くしたり、長時間放置したり、所有権を放棄した場合は失格となります』」
和樹「くだらな過ぎる…最先端技術の無駄遣いだろ。どこに金かけてんだよ」
京香「…」
京香、希子から〈食パン型参加証〉を受け取り、書類と共に封筒にしまい込む。
京香「続きはあとでゆっくり読むわ」
封筒を机に置き、本棚から漫画を抜き出し紙袋に入れ、和樹に渡す京香。
京香「ハイ、『SPY×FAMILY』全巻。面白かったよ」
和樹「あ、うん…あの…」
京香「ありがとね。それじゃ」
和樹、部屋から閉め出される。

◯同・外観(午前中)
紙袋を持ったまま二階を見上げている和樹。
和樹「なんでだよ京香。なんで…」
めちゃくちゃ落ち込んだ表情の和樹。

◯同・二階・京香の部屋(午前中)
京香、希子。
希子「お姉ちゃん、本当に良かったの?和樹さんなんか可哀想」
京香「…優しいね、希子は」
希子「でもさあ、せっかく出るんなら…絶対シュウチンとゴッチンコしてね!絶対!絶対!絶対に!!」
京香「希子?」
希子、窓の外のお日様に向かって、
希子「大富豪夫人の妹に、俺はなる!!」
拳を振り上げる希子。
希子の目がメラメラと燃えている。
京香「はあ…」

◯同・二階・京香の部屋(午後)
涼しげな部屋着に着替え、京香がベッドに横になり、ICCCから届いた書類に目を通している。
文字の多い書類に目を通してるうちにウトウトと微睡む京香。

◯京香の見ている夢・公園
幼稚園時代の京香とみのり。
鼻の横に絆創膏のみのり。
京香「引っ越し?」
みのり「…(元気なさそうに俯いている)」
みのりの母親(31)が現れ、
みのりの母親「今までみのりと仲良くしてくれてありがとうね。京香ちゃん」
みのり「きょうちゃん、バイバイ」
京香「バイバイ…」
去っていくみのりの母親とみのり。
みのりとみのりの母親が光の中に包まれ…

◯京香の家・京香の部屋(午後)
目を覚ます京香。
京香「夢…」
京香、机の上を見る。
幼稚園時代の京香とみのりの写真。
京香「…」

◯京香の家・二階・希子の部屋(朝)
T・202×年5月下旬(日)・翌日
ジャージ姿の京香が入ってきて、布団の中の希子を叩き起こす。
京香「希子、起きろ」
希子「え〜、(壁時計見て)早いよ〜。今日日曜日だよ」
京香「うるさい!あんた付き合うって言ったでしょ?大富豪夫人の妹になるんでしょ?」
希子「ふぇ〜ん、マジか」

◯公園・朝
ジャージ姿の京香と希子、準備体操をしている。
希子「ねえねえ」
京香「ん?」
希子「本当にマジで、何でICCCに出ようと思ったの?」
京香「…大富豪夫人?」
希子「んー、お姉ちゃんってそういうタイプじゃないよね」
黙々と柔軟体操する京香。
希子「シュウチンとなんかあった?」
京香「はい?」
希子「会ったことあるんでしょ?子供の時に」
京香、立ち上がり、
京香「…知らない。はい、そろそろ行くよ」
ランニングを始める京香。
希子「もう〜、待ってよ〜」
着いていく希子。
(第4話へ続く)
#創作大賞2023


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