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現在の気温と今後のシナリオ

はじめに

こんにちは。今回は、実際に地球の気温がどう変化しているのかに焦点を当ていこうと思います。「地球温暖化」という言葉が聞かれるようになってから久しいですが、実際に気温は上昇しているのでしょうか?また、仮に上昇しているとして、どの程度上昇しているのでしょうか?また、今後どのように気温が変化していくと予測されているのでしょうか?この記事では、この辺りの問いに答えていきたいと思います。

IPCCの報告書

今年の8月に、IPCC AR6(IPCC第6次評価報告書)が発行されました(IPCC(気候変動に関する政府間パネル)については他の記事で解説する予定です)。この報告書では、気候変動に関する最新の研究データが報告されています。これによると、

・2010~2019年の地球の平均気温は、産業革命前(1850~1900年)と比較して約1.09℃高かった
・過去5年間の気温は、1850年以降で最も高かった

ということがわかっています。1.09℃と聞くと大した変化ではないように感じる人もいるかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか?

パリ協定と今後のシナリオ

2015年に採択されたパリ協定(詳しくは他の記事で解説する予定です)では、平均気温の上昇を「産業革命前と比較して2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力をする」という目標が掲げられています。先程の1.09℃から考えると、パリ協定の目標を達成するためには、2℃の方だとしても、あと約0.9℃の上昇しか許されないということがわかります。1.5℃に至っては、約0.4℃になります。果たしてこの目標の達成は可能なのでしょうか?

ここで、IPCCによる今後の気温の予測を見てみましょう。

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出典:IPCC AR6

ここでSSPとは、将来の社会経済の発展の傾向を考慮した共有社会経済経路のことです。今回の報告書では、このSSPを用いたシナリオが予測に使用されています。以下の表がわかりやすいかと思います。

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出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

さて、先程の気温予測の折れ線グラフに話を戻します。SSP1-1.9とSSP1-2.6では気温上昇を2℃未満に抑えることができています(むしろ、そうなるようにシナリオが作られています)が、それ以外のシナリオでは2℃を大きく上回る気温上昇が起こります。ここで、上の表のSSP2-4.5を見てみましょう。ここから分かるのは、「2030年までの各国の国別削減目標を集計した排出量上限」をほぼ達成したとしても、2℃未満の気温上昇を達成できないということです。つまり、現在の各国の削減目標では不十分で、更なる努力が必要ということになります。

COP26と今後の焦点

では、2℃未満の目標を達成するのに必要な温室効果ガスの更なる削減を推進するためにはどうしたらいいのでしょうか?

イギリスのグラスゴーで行われ、つい先日閉幕したCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)では、「グラスゴー気候合意」が採択されました。この中では、「世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求する」と明記された一方で、石炭火力発電を「段階的に廃止」するという文言は、最後の全体会議でインドや中国から反対意見が出たため、「段階的に削減」へと変更されました。「廃止」と「削減」はそんなに変わらないという意見もあるかもしれませんが、個人的にはかなり大きな違いかなと思います。CO2のメジャーな排出源である石炭火力発電が否定されなかったことで、しばらくは石炭火力の使用が続くと見られるからです。それでも、世界各国が現状と今後の方針を確認し、一つの合意が得られたというのは一定の成果なのだろうとも思います。各国は来年また集まり、より厳しい削減目標を設定する予定です。最終的な目標は気候変動を抑えて危機を脱することなので、まだまだ道のりは長いですが、今後も世界が協調して取り組んでいく必要がありますし、個人としても世界の動きに注視していきたいところです。

今回は以上になります。以下参考にした文献やWebサイトをまとめておきますので、ぜひチェックしてみてください。この記事に間違いや不自然な点などなどありましたら、コメントにて教えていただけると幸いです。ここまで読んでくださりありがとうございました。

参考文献


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