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結婚は、人生で一番難しい契約だと思う。

会社の同僚から、2年前に退職した後輩が、結婚して、結婚相談所を立ち上げたという話を聞く。
そして、同僚同士の話をぼんやり聞きながら、思い浮かんだ言葉。
「結婚は、人生で一番難しい契約かもしれないなぁ。」

婚姻届が契約書だとしても、仕様書はないし、契約更新もない。
『部屋とワイシャツと私』の歌詞ではないけれど。
「飲み過ぎて帰っても、三日酔いまでは許す」とか。
「浮気をしたら家での食事に気をつけて(毒入りスープを出すつもりだから)」とか(よく考えるとコワイ)。
「冒険の人生を突然選びたくなったら、私に最初に相談してね」とか。
無言の言葉にならない「仕様書項目」が、きっとそれぞれの夫婦の間にたくさんあるのだろう。
そして、そんな無言の「仕様書項目」は、きっと、あまり書面にはならない。

結婚というものに求めるものや、家族の形、大切なものや人、大切にしたい何かは、長い年月のうちに変わってゆくものだろうから。
夫婦という年月を重ねる中で、少しずつ少しずつ、言葉にして、あるいは言葉にしないで。
どちらかが譲ったり、譲られたり。譲ったつもりで譲られてたりしながら。

書面にならない仕様書は、書き込まれ、書き直され、書き足されて。
更新に更新を重ねながら、完成してゆくのだろう。
繊細で、根気のいる、やわらかく優しい共同作業だな、と思う。

結婚をしている人は立派だ。
そんな繊細な、根気のいる共同作業を、何年も何十年も積み重ねているのだから。
書き起こしたら、膨大な量になるはずの仕様書を、誰かとともに更新し続けているのだから。

2年前に退職した後輩は、退職前に結婚が破談になって、本当にとても辛そうだった。
何もできなかったけれど。何もできなかったから。
幸せな結婚ができたようだと聴けて、とても嬉しかった。
あなたの過去の悲しみや辛さが、あなたやあなたの周りの人を幸せを届けてくれますように。
そして、繊細で、根気のいる、やわらかく優しい共同作業を、ともに生きる人と、仲良く続けていけますように。
そんな風に、誰かのしあわせを念じる夏。