一冊の本は、世界につながる新しい扉
あなたの「人生を変えたこの一冊」と言えば?
思い浮かぶ本はいくつかある。
でも、思い浮かばなくても、私の人生を変えた本は、たくさんあると思う。
思い起こせば、いつでも本はそばにあって、たくさんの本に囲まれると血が騒いだ。
まだ手に取ったことのない、読んだことのない本がいっぱいある!という事実に、わくわくして、どきどきして、胸がいっぱいになった。
大人になって、その興奮度合いは、さすがに低下したけれど。
今でも、本がたくさんあるところ(本屋さんや図書館など)は、わくわくそわそわして、テンションが上がる。
今思い出せる、記憶の中で一番古い「私の人生を変えた一冊」といえば、やはりこの本になるだろうか。
『ぼくらはズッコケ探偵団』那須正幹(作) 前川かずお(絵)
1979年4月1日出版 ポプラ社
第45回日本児童文学者協会賞特別賞受賞
「ズッコケ三人組シリーズ」の中の1冊で、ポプラ社ホームページによると「ハチベエ、ハカセ、モーちゃんのズッコケ三人組が、次々にまきおこす奇想天外な事件と冒険の数々を描きます。」とある。
また、Wikipedia情報によると、刊行期間は1978~2004年、全50巻。
テレビドラマやアニメにもなった、人気シリーズである。
ちなみに、『ぼくらはズッコケ探偵団』はシリーズ2作目となる。
なぜ、この本が「私の人生を変えた一冊」なのかというと、自分にとって初めての「大人の本」だったから。
誕生日でも、クリスマスでもない、普通の日に、父が買ってきてくれた。
当時たぶん小学5年生だった私は、パラパラとページをめくって、「こんなに字がいっぱいの本、読んだことない。お父さんは何を考えているのか。」と思ったことを覚えている。
絵本や漫画や「漫画で読む学習本」などは、それまでもよく読んだし(偉人シリーズはとりわけお気に入り)、本は好きだった。
しかし、ほぼ絵のない、文字ばかり(と当時は思った)の本は、「大人の本」で自分には、縁のないものだと思っていたので、「読めないんじゃないかな~」としばらく放置していた。
でもある時、意を決して読み始めたら、すごく面白くて、すいすい読めた。
びっくりした。そして、嬉しかった。
「大人の本」を読めた!もう大人だ!
一冊の本を読めたことで、大人への扉が開いたのだ。
この本を手始めに、文字がいっぱいの「大人の本」に手を出し始めた。
扉の向こう側には、自分の知らない新たな世界が広がっていた。
どこまでも果てしなく広がる世界に、わくわくどきどきした。
少し背伸びして、知らない世界を知る楽しさを知った。
それから、幾歳。今もなお、一冊の本は、私にとって知らない世界につながる新しい扉だ。
少しだけ開けて、扉の外の世界をのぞいてみる。
本を読むことで、知らなかった世界を、少しだけ見ることができる。
時に一歩、扉の外に踏み出してみる。
急いで戻ってくることもあれば、扉の向こうに、また次の扉を見つけることもある。
扉の向こう側に広がる世界は、私を魅了する。
本を読むことで、新しい世界を知る。
その無限の楽しさを教えてくれたこの本は、きっとずっと私の大切な一冊だろう。