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10秒の世界観

制限を考えてから、自分自身の生産性をとても深く考えるようになった。そんな中で生まれた概念が10秒の世界観だ。

10秒で思考を組み立てる瞬発力を高める努力を繰り返してみた。っというか、そもそも「何故10秒?」っという話から。先日の記事の中で、病気から自分自身の働く時間に制限を設けたことは伝えた。その時間は最も生産性が高い時間=Value Time(VT)という名称を付けてみた。僕が最も集中する時間は総時間で2.5時間程度である。元々、一日16時間程度は最低でも働いた僕は、ざっくり6分1の時間で今まで以上の生産性を生み出したことになる。そんな中、総労働時間を2.5時間に集約した時に、この2.5時間の生産性をより高くすることはできないかと考え始めたのが、コトの発端。

最初は、よくある2:8のルールで考えてみた。2:8のルールとは、例えばコスト削減などの場合、削減対象項目の上位20%でコストの全体の80%を占めているという、統計的なルールのことを言う。数多くある削減項目の全てに手を出さなくとも、削減インパクトの大きい項目を瞬間的に見つけ出すことにも使える効率的なテクニックの一つだ。

こんな風に考えた。思考の瞬発力は多分指数関数的(精度×費やした時間)に高まるのではなく、瞬間的に高まりそこから横ばいを描くのではないかと思った。僕自身自分の思考の使い方も常にそうであるという実感がある。常にある程度の思考は早期に高まり、そこからはその仮説が正しいか、否かをロジカルにファクトベースで見極める時間に費やすことが多い。

思考の高まりをどれくらい短時間で生み出すことができるのか。この思考の瞬発力強化を狙ったのだ。瞬間的に高負荷なトレーニングを自分で作り出そうと考えた。生産時間帯の2.5時間の20%の36分間をトレーニング時間に充ててみた。正直生ぬるかった。元々、仕事を20分刻みで考えるようにコントロールをしていた。20分を超えると集中力がもたないからだ。もう少し、いけるんじゃないか?と思い36分の20%である約7分をトレーニング時間に充てることとしてみた。これも時間が余るな〜っと思ったのが正直な感想だ。結局、これくらいならちょうど良いトレーニングと思ったのが、10秒だったという結果だ。

よく考えてみると、当たり前だ。

コンサルタントはインタビューで始まって、インタビューで終わるとも言われるくらい、インタビューは高度なコンサルスキルの腕の見せ所になる場面だ。理由は単純で、クライアントの一言を瞬時に論理的に分解し、更に深ぼる質問を繰り出す。その先に、クライアントも気づかないインサイトを見つけ出すことを、限られた時間の中でのライブで実施するわけだ。クライアントと議論しながら、10秒もないレベルで瞬間的に議論するわけだから、10秒くらいがちょうど良いと思うのは当たり前だと、結局色々分析してみた結果わかったのだ。(遠回りしすぎだろ!)

結果、面白いくらい思考の瞬発力は今まで以上に成長した。もちろん、プロジェクトの設計を考える場合にイシューアナリシスを作るが、イシューアナリシスを10秒で作るのは不可能である。ただし、ある程度の仮説視点のセット(かなり重要)を10秒でするトレーニングは、とても価値があった。自分でもテストを繰り返してみた。10秒で自分なりにセットした仮説の方向性と、本来解き明かされた仮説の差分がどれくらい調整が効くものかを見ていた。差があることが悪いことではなく(仮説とは壊して組み立てを繰り返すもの)、その仮説を生み出したロジックのどこがずれていたのかを明確に理解できるかと言う点だ。これができないと言うことは「仮説」と言うかっこいい言葉を使った、ただの「当てずっぽ」ということになる。そのような状態に陥らないように、10秒間の中で思考を出し切ることも意識した。これをしなければ、ただ10秒を過ごすことになり、意味がない。このトレーニングは延べ100回くらい実施した。結局、当てずっぽ的になることは皆無だった。正確には、そうならないように意識していたのだと思う。

たった10秒されど10秒。10秒の破壊力の大きさを今では細胞レベルで感じている。

イチローが智辯和歌山高校に野球を教えに行ったYoutubeを見た。イチローが高校男児に教えたことがとても勉強になった。智辯和歌山高校は甲子園の名門校。一日のトレーニング時間もかなり長い。そうすると生徒たちは、自然と「最後まで体力が保つように」という思考に陥り、キャッチボールなど一つ一つのトレーニングを全力でやらないように制御する思考になってしまうとのことをイチローは危惧していた。要するに、「保つ力」を育てることは出来るが「瞬発力」や「出し尽くす力(追い込む力)」が付かなくなるのだと。結果的に、練習よりも時間の短い試合、練習よりもチャンスが少ない試合では、パフォーマンスを最大化しきれない可能性が生まれてしまう。

これと一緒だと思った。

長い時間働いていると、それに耐えようして、体力と思考力を温存しようとする。結果的には体は疲れてて、思考力は、その時の最大限の力で活動しているに過ぎず、本来持つ最高の力に到達できずに終わる時間が多くなる。なんとも勿体無いし、プロフェッショナルとしては、間違った時間と思考力の使い方であることに気付かされる。

人それぞれの目標時間をセットしてみればいいと思う。少し負荷が高いなぁーと感じた時間が1時間なら1時間でいい、30分なら30分でいい。それを調整して行けばいいのだ。

「出し切る」ことを大人になると忘れがちで、そんな状態から逃げがちだ。やらない理由も探しがちだ。ゲーム感覚でやってみるといい。何気に色々な発見があるものだ。年齢を経ると、体力では戦えなくなる。しかし、思考生産力はどこまでも成長し、この差は何百倍にもなる。

自分の思考生産性を科学するのは、実に面白い。


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